• 組織開発(OD)の実践って、どうするの?⑬ ~プロセスを見る眼②~

組織開発(OD)の実践って、どうするの?⑬ ~プロセスを見る眼②~

プロセスにおける集団の無意識行動

前回、組織開発(OD)を実践する人たちは、「当事者間の関係性の中で起こる問題を見る眼」を持ち、それに対して適切に介入する術を学習していく必要があります、と言いましたが、これがなかなかに難しい。

なぜかというと、組織を何とかしたいと思う人たちも、そのプロセスの中に巻き込まれて客観的に自分や人々の関係を見ることができないからです。

ビオン理論という理論があります。なかなかに難しい理論なのですがかいつまんで言うと次のようなことです。

l  ビオン理論は集団の無意識層に焦点をあてた理論。

l  集団は常に、課題を意識的にうまくやろうとする「意識的に仕事をしていく側面:A」と、周囲との関係性を気にして、ときに「幻想に怯えたり不安を感じたりして仕事をしている側面:B」がある。

l  ABが分かれている場合、集団は生産的な行動を取ることができるが、ABが重なると集団は「不安や恐れを解消しようとする行動」に忙しく、生産性を落としてしまう。そしてこの「不安や恐れを解消しようとする行動(集団としての防衛行動)」は、無意識的に出てくるので当事者が意識的に是正しようとしても難しい。

l  「不安や恐れを解消しようとする行動」は、これが強くなると典型的に以下の3つの行動に現れる。

      集団のリーダーに対する「依存または反依存」

      依存派と反依存派の分派行動

      結果として「闘争または逃避」

リーダー自身もこの渦の中にいて、自分で自分の行動を統制できない。そして、集団はリーダーを亡き者にし、新しいリーダーを求める。

ビオン理論でいえば、プロセスを見るとは、集団に「依存または反依存は起こっていないか」、「分派行動はないか」、「闘争や逃避はないか」ということを観察し診断することです。どこかでよく見る風景ですか?

プロセスは理論ベースで演繹的に見ることもできますが、観察者が自分の先入観やバイアスを捨てて(難しいですけど)、あるがままにみることがとても大切です。

プロセス・コンサルテーションの提唱者であるエドガー・シャインは、プロセス改善を支援し何らかの介入を実施しようとする人は、自分の内面のプロセスに対する気づきを高めていく必要があるといっています。

内面のプロセスというバイアス

シャインは、気を付けるべき内面のプロセスについて「ORJI」というモデルを使って説明しています。。

l  ORJI」モデル外側の太字は、私たちが気をつけなくてはならない「陥る罠」です。つまり、関係する当事者みずからの「感情や偏見、認知の歪みや情動」です。

       締め出し、誤認

ü  自分の期待に合わない情報は、見ていないし聴いてもいない。既存の概念の中で理解する(考えたり、話したりできるものを見ている)。

       防衛、無自覚

ü  自分の情緒的反応に気づかないか無視する。そして、内面を深く吟味することもなく「情動に突き動かされた行動」に移ってしまう。

       歪曲、偏見

ü  依拠しているデータが誤っていれば、どんなに論理的であろうとしても、私がする分析や判断は歪められる。だから、データの入手の仕方や、そこにどのような偏見が存在するかに注意を払わなくてはならない。

       脊髄反射的介入

ü  内面のプロセスをよく吟味せず、感情的な反応で介入すること。

 

組織開発(OD)の実践で難しいのは、組織開発をしてみようと動き出す人たちに、「プロセスを見る眼」の訓練がなされていないことです。

言っては何ですが、出版されている文献の「知的理解」をベースに組織開発を実施しようとして、「適応を要する課題」に「技術的問題解決アプローチ」で臨もうとしちゃってます。これではうまくいかないのです。

組織開発(OD)をやってみようとする人たちは、少なくとも人間と人間との関係の中で起こる問題の渦の中に当事者として参加し、そこで自分が何を感じ、どのような振る舞いをするのかを体験しておくことがとても大切です。

※この記事の書き手はJoyBizコンサルティング()波多江嘉之です。