• 組織文化とOD③:組織文化はなぜ重要なのか~ 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-201~

組織文化とOD③:組織文化はなぜ重要なのか~ 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-201~

組織文化について、経営や組織運営にとっての重要性とはどのようなことなのでしょうか。それは、2つの異なる理由からです。第一に、社会的統制システムとして戦略の遂行を支える、あるいは妨害するという点で重要です。すなわち組織文化は、環境の中での生き残りと適応を左右します。第二に、従業員の間における動機づけやコミットメントを促進するという点で重要です。すなわち組織文化は、適応し続ける能力を確保するための内部プロセス(活動)の統合を左右します。このようなことから、私たちは組織文化をより良く理解しなければなりません。シェーンによれば、文化のインパクトは強力でありかつパターン化されるといいます。多くの人が同意すると思いますが、文化は人に「強要する性格~それに合わせなければならない」を持ち、その文化のデータが不明瞭(私にはよく分からない)ならば、自分自身の経験からくる仮定を投影してしまいます。以下、そのことを詳細に見ていきましょう。

【強力さ】

異なる地域に旅をしたことがある人なら誰でも経験していることですが、異なった文化のインパクトがいかに強力であるかを知っています。筆者も中国バスツアーで、朝の出発の時に運転手が怒鳴り合っている(と私が感じた)場面に遭遇したことがあります。ガイドに「喧嘩しているのか」と尋ねたところ、あれは喧嘩ではなく単なる意見の相違だといっていました。要するに、気にする程のことはないということなのです。とはいえ、日本から来ている我々全員がびっくりして「いつ殴り合いが始まってもおかしくない」と感じていたのです。新しい文化に入ると、私たちの感覚や感性は、直ぐに混乱してしまうのが常です。これは組織でも同じです。ある企業から他の企業に移ったり、部門を異動したり、地域間の転勤を経験する場合でも、多かれ少なかれ同じような感覚を持ちます。それはまた、生活者としてレストランやスーパー、さまざまな店舗を利用する場合も同じです。

ところでそのような場合、良くも悪くも、私たちは「ある特定の体験」をしているに過ぎないのですが、「あの会社は〇〇だな」と一般化した受け止め方をしてしまいます。彼や彼女がそうだと個人的な問題にせず、さまざまな差異を「文化的」と見なすことを正当化してしまいます。なぜ私たちは、このような差異を「全体に対する印象」としてしまうのでしょうか。それがパターン化という捉え方です。

【パターン化】

パターン化とは、「みんな同じじゃないか」と感じる心理的経験のことです。それは、組織内の多くの人が同じような行動をとっていることが見て取れ、その状況にある他の人がそれを当たり前の、予期されたものとして受け止めている、というようなものです。パターン化は従業員の服装や態度、物理的レイアウト、調度品、などに現れて、ある種の調和の印象を与えます。それは、過去の経験から創り出されたある種の期待に基づいています。そして、その期待に合わないパターンに出くわすと、私たちは何となく不安を抱きます。それは、次に起こることを予測できないからです。加えて、私たちは他人の集団行動の中に無意識にパターンを求めています。それは、私たちが自身の行動がある種のパターンを持っていることを承知しているからです。例えば挨拶をする場合、こちらがお辞儀をしたら、相手もお辞儀返してくれることを期待しています。その時、いきなりハグされたらびっくりするでしょう。ですから逆説的に言えば、パターン化された行動を変えていく試みは不安を呼び起こすものであり、私たちは安定を求めるために従来のパターン通りの行動を選択してしまうのです。私たちは、自分が理解しているパターンとは異なるパターンを示している集団を見ると、そのパターンを理解するために自分自身が持っているパターンを投影して理解しようとします。しかし、それでは異なるパターンを理解できません。新しいパターンを理解するためには、自分が持っているパターン認識が実は普遍的なものではないということを理解して初めて、他のパターンに対する理解が進むのです。

【要求特性】

要求特性とは、私たちが新しい文化に出会うとき、その文化に合わせることを要求されるということです。新しい文化に出会うと、その意味を理解する前に、とにかく順応しなくてはならないという圧力を感じてしまいます。そうしなければ、うまくコミュニケーションが取れないし、不安を取り除くことができません。そして、うまく対応できれば、なんとなくうれしく感じたりします。新人が「これでお前も一人前だな」という評価を受ける時、それは単にスキル的な側面だけではなく、「我々の文化を理解してきた」という先輩からの歓迎の表れなのです。このようなことができない場合、つまり文化の不正確な理解は、他人を不愉快にさせ、自分自身を当惑させてしまいます。このもっとも端的な例は、飲食とか人間関係における服装のルールや儀式などに関連したところで起こります。ジェネレーションギャップといわれるものは、ほとんどが文化的ギャップを示しています。

【過剰投影】

私たちは、自分が持っている文化的パターンを基に他の人達の行動を評価してしまいがちです。それは、相手の意図と関係なく、自分の文化的偏見を反映しているのです。つまり、見たいように見てしまうのです。

以上のようなことにより、組織に対して何らかの変化を起こそうとする場合、組織レベルにおける文化の検討と理解が必要不可欠であることを示しています。(続く)

  • 参考文献 「組織文化とリーダーシップ;H.シャイン」

この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。