• [組織開発]教科書から学ぶ⑭~啓蒙主義から社会構成主義へ 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-267~

[組織開発]教科書から学ぶ⑭~啓蒙主義から社会構成主義へ 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-267~

社会構成主義の考え方をODに適応するとどうなるかということについて、前回からの続きです。第一については前回言及しましたので、今回は特に2番目と3番目についてみていくことにします。2番目と3番目を再確認しておきましょう。

第二に、変革とは安定期と安定期の間にあるものではなく、持続的に発生するものである。

第三に、チェンジエージェントは介入をする人ではなく、起こっていることの解釈を助ける通訳的な役割(interpreter)を担う。

 

1990年代までは、変革は新しい安定性を取り戻すための「移行期(transition state)」であるという認識が主流でした。また当時の組織認識は、組織を構成する諸要素(component)がうまくかみ合っている(整合性が取れている)から効果的な組織として活動することができるというのが当たり前のように認識されていました。ですから、組織が効果的でないというのは、組織の諸要素(component)がうまくかみ合っていないということを意味します。したがって変革期は、組織の現在状況(present state)から、希望する姿(future state)、つまり新しい整合性を構築するまでの不安定な時期であり、変革マネジメントは、その不安定な時期をいかにマネジメントしていくのかということが重要な課題でした。このような考え方を構造主義と呼びます。これに対して、社会構成主義の考え方に立てば、変革は持続的かつ累積的であり、組織は永久に変化し続けることになります。要するに、安定は一時的なものでしかありません。しかし、これは少し考えてみれば当たり前のことだと分かります。ある一時期、ある経営者に導かれてうまくいっていた組織もいつの間にかうまくいかなくことがあります。それは、外部環境が変わったからというよりも、うまくいっていた時期に経営していたリーダーが、うまくいっていたときの認識を変えられないまま経営を続けた結果でもあります。それは変化することに失敗したわけです。バレットやマーシャックが言っている「診断型OD」は、欧米的歴史観やメンタルモデルによる「客観的に答えを見出す啓蒙主義的な思想」を前提にしています。対話型ODはそうではないと言っているのですが、昔から「脱皮しない蛇は死ぬ」といいます。社会構成主義や対話型ODを持ち出すまでもなく、適応のためには私たちは常に変化していく必要があるのです。

第三の、チェンジエージェントは介入する人ではなく、通訳する人(interpreter)になるという考え方はどうでしょうか。組織内でなされる会話は、その人たちの認識の範囲内で交わされています。しかし、時にそれを「おかしい」「わからない」と思う人もいるわけであり、そこでは「何が語られ」「何は語られていないのか」を識別することを助けることがとても重要になります。別の言葉で説明すれば、集団での会話のプロセスを当事者に明確に認識させたり、で起こっていること、話されていることについて意味づけし直したり、異なる視点を提供したりする役割です。このような役割を効果的に担うためには、チェンジエージェント、あるいはインタープリターは自分が持っている「自己解釈の枠組み」に対して理解しておくことがとても重要になります。支援者も自分の解釈の枠組み・先入観から逃れることはできないのです。したがって、どのような支援者も自己理解はとても重要な能力になります。基本的なスタンスは「私もOK、あなたもOK」です。効果的な支援をしていくには「私はOK、あなたはNot OK」のスタンスから抜け出すことが大切です。これは、変革が求められる組織のトップマネジメントも同じです。リーダーとして、「私はOK、でも君たちはNot OKね。だから変わる必要がある」という意識では、組織変革はうまくいかないでしょう。名門東芝は、2000年前後から以降のリーダー達のこのようなスタンスでその命脈を絶たれてしまいました。(続く)

参考文献:[組織開発]教科書、対話型組織開発

 

この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。