• [組織開発]教科書から学ぶ⑦~ODの概念的・理論的支柱 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-260~

[組織開発]教科書から学ぶ⑦~ODの概念的・理論的支柱 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-260~

今回からODアプローチの土台となる、アクション・リサーチ・モデル、システム変革の3段階モデル(解凍⇒移行⇒再凍結)、計画的な変革の諸局面を見ていくことにします。この3つは、どれもK.レビンのオリジナルが土台です。最近では、診断型ODや対話型ODなどがODアプローチの2大潮流みたいに言われていますが、やはりアクション・リサーチ・モデル、システム変革の3段階モデル(解凍⇒移行⇒再凍結)とその応用である計画的な変革の諸局面がODの進め方としては原型になるでしょう。

 

【アクション・リサーチ】

アクション・リサーチという言葉は、二人の異なる人が提唱しています。一人はジョン・コリアーです。彼は、民族関係の中に変革を生み出す研究を行い、必要な行動(アクション)を起こす中心的な領域を決定するためにリサーチを行う必要があると提唱しました。

K.レビン、はアクション・リサーチを「社会運動、および社会運動を促す研究の、状態や影響といった多様な形態についての比較研究」であり、「計画」「実行」「実行結果についての事実発見が螺旋上昇するステップである」と説明しています(Action Research and Minority Problems:1946”)。

アクション・リサーチは「No Action without Research 、No Research without Action」と言われるように、何らかの変革活動を行うには、Action(行動)の前にResearch(調査)が必要であり、何らかのAction(行動)をとることで現状が変化していくので、その変化についてResearch(実行結果についての事実発見)をして次のAction(行動)を選択していくというステップになります。以下、少々長くなりますが実際のアクション・リサーチ・プロジェクトを組織開発の教科書から抜粋して紹介します。このプロジェクトは、あるパジャマ工場で作業員の変革に対する抵抗を調査した研究です(コッチ/フレンチ1948)。

『この工場はバージニア州の西部にあり、マネジメントは他の企業との競争で常に優位に立ちたいと思っていた。そのため、時折、作業方法の変更を行っていた。この変更では、通常、能率は低下し、無断転勤や転退職が増え、作業員の間に不満が出るという深刻な問題が起きていた。他の縫製工場と同じように、この工場も女性を採用し、その数は500名ほどであった。新しい作業員の採用は難しいことではなかったが、訓練には大きな出費が伴った。新しい従業員を配置し仕事を覚えるまでには、平均8週間かかった。他に、高度な熟練を必要とする作業員もいた。通常、作業変更は些細なものであり、例えば「ハンド・プレッサーが仕上げたものを半ダースずつの山にして、折りたたんだ平たいままの段ボールの上に重ねておくという従来の方法から、段ボールの箱に入れるというという変更」とか、「別の人がたたんだズボンの上に上衣をたたんで置くことから、一人でズボンも一緒にたたむという変更」などであった。このような変更は、作業効率や出来高払いのインセンティブに関係していた。マネジメントは、こういう変更に先立ち

  • 関連する従業員を集めてグループ・ミーティングを開き
  • その変更の必要性と理由について説明し
  • 時間動作研究員がこの新しい出来高払い制の基本的なことについて説明する

という手続きを取り、変更が実施に移していた。しかしこの方法は、従業員の非常に激しい抵抗にあい、欠勤・苦情・転退職・不必要に長い再学習といった形で現れた。マネジメントは、このような抵抗にうまく対処できず、外部コンサルタントのジョン・フレンチを雇い、工場の人事部門のマネジャーであるレスター・コッチとともに問題解決にあたるように依頼した。2人は面接や現場観察を行い、また生産記録に丹念に目を通し、アクション・リサーチ・プログラムのリサーチを立案し実施することにした。リサーチは、以下の3つの方法の効果性を確認するために行われた。

  • これまでと同じ方法を使うグループ。これらのグループはコントロール・グループ(実験の対象標準)と呼ばれた。
  • 2つ目は、グループを対象に、ミーティングを開いて変更の理由と必要性を説明し、暫定的な計画を示した。そして、グループには必要な修正を許可し、改善に対する編成グループの承認を得たのち、特別作業員3名を編成グループから自主的に選抜してもらい、新しい取り決め事項を微調整し、さらに後日他の従業員に彼女たちが教えるという方法をとった。このグループはリプレゼンタティブ・グループ(代表者選出)と呼ばれた。
  • 3番目は、代表者を選抜するのではなく編成グループの全員が特別作業員として仕事をするということであった。このグループはトータル・パティシペイション・グループ(全員参画)と呼ばれた。

 

この研究の結果は以下のとおりである。コントロール・グループの能率はほとんど上がらなかった。そして研究が始まってからの最初の40日間でメンバーの17%が退職し、苦情や欠勤も増えた。リプレゼンタティブ・グループは、14日後には生産性は以前のレベルに戻り、苦情は一つ出たが、欠勤はなかった。トータル・パティシペイション・グループは、加えて再学習のスピードが最も速かった。この2つのグループは、30日間で生産性は14%上昇し、研究終了時点で新しいやり方が定着し、欠勤も退職もなかった。この研究結果により、参画的マネジメントを全工場で実施することが決まった。その後、この会社は競争相手を買収し、会社のマネジメントそのものを従業員参画型に変えていった』。

この経験をもとに、フレンチ他はこのプロセスをODに適応できるように一般化しています。

  • 主要幹部による問題点の認識
  • コンサルタントと契約:エントリー
  • コンサルタントによるデータ収集と診断
  • 確認のための再度のデータ収集
  • クライアントへのデータフィードバック
  • ODプランのデザインとその実施
  • データ収集
  • クライアントへのデータフィードバック
  • クライアントによるデータの解釈と対応の明確化
  • 次のアクションのデザイン
  • アクションの実施
  • 組織システムの変化をデータ収集
  • クライアントへのデータフィードバック
  • クライアントによるデータの解釈と対応の明確化
  • 次のアクションのデザイン
  • アクションの実施・・・・続く

 

上記の流れをもっと一般化したものがNTL OD Mapです。下記の図はNTL OD Mapの簡易版です。

 

NTLのアクション・リサーチ・モデルでは、おのおのの局面すべてに関わるチェンジエージェントの重要性「Big I:use of self」が強調されています

参考文献:[組織開発]教科書

 

この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。