• [組織開発]教科書から学ぶ②~ODのルーツ 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-255~

[組織開発]教科書から学ぶ②~ODのルーツ 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-255~

ODが何処でどのように始まったのかについては、ほとんどの学問領域と同じように明確なものはありません。とはいえ、ODは多様な複合したものから始まっているのは間違いなく、W.バークによれば、それは旧約聖書のモーゼの記録にまでたどり着くといいます。まあ、そこまで戻らなくても「組織開発の探求(中村、中原2018)」では、ジョン・デューイ(経験学習)やエドモンド・フッサール(現象学)またジークムント・フロイト(精神分析)に起源を求めようとしています。要するに、ODは大小さまざまな川が流れ込んで生まれてきているのです。しかし、特にアメリカにおけるODの発展を振り返った場合、現実的な一つの分野としての基礎づくりを助けた歴史的な出来事はホーソン研究でしょう。ホーソン研究そのものの詳細は割愛しますが、組織の中の人間を機械的に扱おうとするテーラーイズムの考えとはきわめて対照的であったこと、心理的・社会的要因により労働者の業績に顕著な差異が生じること、今では当たり前ですが、従業員を人間として認識することが大切であることなどが確認できたということは、ODという分野の素地を作った重要な研究だったといえます。もう一つの先駆は産業心理学です。これは、1940年代から隆盛を極めるようになります。そして、1950年代からはサーベイ・フィードバックの技法が開発され、自己成長や関係性改善に多大な貢献をした感受性訓練(Tグループ、ラボラトリー・トレーニング)が生まれてきました。W.バークによれば、この4つ「ホーソン実験、産業心理学、サーベイ・フィードバック、感受性訓練」はODを発展させる基礎を提供したといいます。4つの詳細は割愛しますが、ポイントのみ下記に記します。

 

【ホーソン実験】

  • 心理的、人間的要因が従業員の生産性やモラールに重要な影響を与える。
  • 作業員の満足感を高めるには、自律性を持たせる、自分の仕事についてよく知っていることなど、幾つかの変数が重要である。
  • 動機づけなどのちの理論に対する証拠を提供した。
  • グループ・ダイナミックスに関するほとんどのデータを提供した。
  • 人間が職場でもっと人間的に扱われる時代の到来を告げた。

【産業心理学】

  • インターナショナル・ハーベスター社(米国、1986年よりナビスター・インターナショナルに改称)で行われたフライシュマン研究などの貢献。トレーニングの効果は、参加者の上司のスタイルと密接な関係があり、上司のリーダーシップスタイルがトレーニングの目的と一致している場合のみ効果がある。
  • 後に、シャインにより「トレーニングの効果は、参加者が所属する部門の文化、もしくは風土と密接な関係があった」と説明している。

【サーベイ・フィードバック】

  • リッカートの指導の下に実施されたフロイド・マンの研究などが貢献。マネジャーがサーベイ結果について部下とグループ討議というスタイルで話し合う場合、はっきりしたポジティブな変化が表れた。
  • サーベイ・フィードバックは、組織のトップマネジメントから、公式な組織階層に従って下部へと流れていく。フィードバック・ミーティングには上司とその直属部下が一緒に参加し討議する。

【感受性訓練】

  • 始まりは、1946年夏のコネチカット州ニューブリテンで行われた、レビンが中心となったワークショップである。
  • このワークショップで、討議のプロセスを討議参加者自身が取り扱うことの重要性が確認された。
  • このワークショップは、その後、感受性訓練やTグループ、プロセスグループなどとして実施されることになる。

 

以上の4つとは別に特に北欧を中心としたODの流れもありますが、W.バークはこれには言及していません。以下にちょっとだけ、紹介します。

 

 

欧州におけるODは、第2次世界大戦で荒廃した国土の復興、民主主義の追及、共同体の醸成、ナチズムを二度と現出させないという理念/価値を重視したものであり、その方法論として丁寧な対話を特徴とします。アメリカにおけるODは、第2次世界大戦以降の豊かな国家、強い企業、それによる弊害としての行き過ぎた官僚主義の打破が中心課題であり、組織の変容/変革のためにサーベイ・フィードバックやチームビルディング、チェンジマネジメントなどの技術を土台にした介入の効果性を重視します。日本は、最初はアメリカの流れが主であり、欧州の流れは1980年代にはアメリカにおけるODに繋がっていくのですが、日本には2000年代以降に関心を持たれるようになります。対話型ODなどはその典型です。

[組織開発]教科書では具体的な組織適応として、エクソンモービル(当時はエッソ)における製油所で働くマネジャー対象に実施した3日間のラボラトリートレーニング。参画的志向のマネジメントとトレーニン(H.コルブ、R.ブレーク、R.ブラッドフォード)。ユニオン・カーバイトにおけるチームづくり:D.マクレガー。ゼネラル・ミルズにおけるボトム・アップ型マネジメントの実現(D.マクレガー、R.ベックハード)などが事例として挙げられています。当時は、ボトム・アップ型のマネジメントが出現していたころでしたが、実施者や研究者は、自分たちがやっていたことをボトム・アップと呼ぶ気はなかったし、Organization Improvement(組織改善)という言葉にも満足していなかったようです。そんなところから自分たちの活動をOrganization Development(組織開発)と呼ぶようになったようです。(続く)

参考文献:[組織開発]教科書

 

この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。