• 組織文化とOD㉘:組織文化変革に関するリーダーの役割①~ 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-226~

組織文化とOD㉘:組織文化変革に関するリーダーの役割①~ 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-226~

リーダーのリーダーシップのあり様は、組織文化の形成、進化、変容、破壊と密接に絡み合っています。文化はリーダーの言動によって創造され、リーダーによって植え付けられ、強化されます。文化が機能障害になった場合、リーダーは集団が既存の文化的仮定の一部を捨て、新たな仮定を習得することを助ける必要があります。リーダーのリーダーシップの機能を定義することは終わりのない議論となっていますが、組織が置かれている環境に適応し持続的存続と発達を獲得することを前提とすれば、リーダーのリーダーシップは、その本質的機能として組織文化を創造し操作することにあるといえます。リーダーシップに対してもっとも困難な挑戦は、まさしく組織文化を操作し整える機能です。時としてそれは、リーダー自身が当然視している仮定を克服することが含まれます。集団は健全性と生存を確保するのに何が必要かを見定め、新しい文化的仮定を学習しなければなりません。このようなことには、リーダーのリーダーシップが不可欠です。組織文化を効果的に機能させるリーダーシップとは何かを考えていくことはとても大切な視点です。以下、組織成長の各段階における組織文化とリーダーのリーダーシップの関係について、E.シャインの主張を見ていくことにしましょう。

 

【文化創造におけるリーダーシップ】

創業から成長途上の組織では、リーダーのリーダーシップの在り方が組織文化を形づくっていくのは疑念の余地がありません。この段階ではリーダーは、ビジョンと共にそれを明確に文章化し、組織に浸透させる能力を必要とします。このような時期に、他の組織でのやり方や考え方(文化)を身に付けたメンバーが組織に加わってくることもあります。そのような人たちは、新しい組織での首尾一貫したメッセージを描くことができません。要するに「前の組織ではこうだった」という話をするのです。リーダーは、それを放置せずビジョンと価値観を語り、実践していくことが求められます。つまり、リーダーには執念とともに忍耐心も必要です。組織が発達するに伴い、リーダーへの依存とか、同僚との関係とかといった情緒的な問題が発生してきます。

組織文化に焦点を当てたモデルではありませんが、ラリー・グレイナー(アメリカ)の企業成長モデルは、組織成長の原動力とそれに伴う危機を明示したモデルとして有名です。簡単に説明すると成長の原動力とそれに伴う危機は以下のようなことになります。

  • 創造性によって組織が拡大していくが、その拡大自身が新しい従業員を採用することになるので、リーダー個人のリーダーシップだけではすべてをカバーできなくなる。そしてリーダーシップの危機が訪れる。
  • この危機を乗り越えるために、組織はマネジメントを整備しようとします。つまり、管理統制による成長を目指します。しかし、そのことにより従業員の自主性が阻害されます。特に、新しく入社した管理系(昔でいえば、石田三成系)が中枢を占めるようになると、古参の従業員は不自由さを感じるようになるでしょう。これが、自主性の危機となって現れます。
  • 自主性の危機を乗り越えるために、組織は人々に権限を委譲します。構造的には事業部制や、あるいは地域での自主性を重視した経営となります。しかしこれが、組織の一貫性を阻害する統制の危機というものをもたらします。
  • 統制の危機を乗り越えるために、組織は分権化した各部署や個人間での調整をせざる得なくなります。しかし、そのような調整機能はいつしか書類のみが多くなる組織となってしまい形式主義をもたらします。
  • 次に組織は、形式主義を打破するために協働を奨励するようになります。しかし、協働(コラボレーション)は人間関係においてかなりのプレッシャーを感じるようになります。価値観や意見が異なる人たちをまとめて成果を出していくことは、かなりの心理的ストレスを感じるのです。これが、協働による成長を阻害する要因となります。これを乗り越えていくには、組織メンバーがレジリエンスを高めていく必要が求められます。グローバルな組織が、マインドフルネスをやったり、レジリエンスを高めたりする努力をしているのは、こんなところに理由があるのかもしれません。

 

ラリー・グレイナーの企業成長の5段階は、組織文化の醸成とは異なり、企業規模の視点で成長に伴う機会と危機を分析したものですが、組織文化の視点で見ても、リーダーがそれぞれの成長段階でどのような危機を乗り越えて文化というものを醸成していかなくてはならないかを教えてくれます。E.シャインは、リーダーシップの視点から組織成長に伴い機会と危機を説明しています。すなわち、文化の創造、植え付け、強化というプロセスは、解決とともに問題を持ち込んできます。それは、リーダーの個人的特質に含まれている内的葛藤や不整合に由来します。リーダーの情緒的ゆらぎは、部下に強く影響を与えます。従ってリーダーは、組織の成長と共に、自分自身の内面に起こる葛藤と戦い、自分自身も変化し成長していくことが求められます。日本の場合、少なくないリーダーが坐禅をするのは、このようなことが理由かもしれませんね。(続く)

参考文献:「組織文化とリーダーシップ;E.H.シャイン」

 

この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。