• 「失敗の本質」から学ぶ組織論①~181 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-~

「失敗の本質」から学ぶ組織論①~181 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-~

「失敗の本質」から学ぶでは、これまでリーダーシップに焦点を当ててきましたが、今回から「失敗の本質」の本来の目的である組織論に焦点を移していきます。失敗の本質を、組織論的観点から分析する理由はどこにあるのでしょうか、筆者たちは以下のように述べています。

「研究対象ケースの6つの作戦:ノモンハン事件、ミッドウエー、ガタルカナル、インパール、レイテ、沖縄は、戦闘の時間と空間を異にするばかりでなく、兵力・軍備・補給の状況も異なっている。(中略)それぞれの戦いは、それぞれの状況の下で戦われたのであり、その失敗の原因もまた多くの個々の状況に依存しているというべきかもしれない。しかし、同時に個々の作戦は、個別に独立して生起したわけではなく、日本軍という近代組織によって戦略が策定され、その組織を通じて実行されたものであることも否定できない事実である。(中略)そこにわれわれは、一連の失敗をおかしていく日本軍という巨大な組織の姿を見ることができる。いったい、なぜ日本軍はこうした失敗をおかしたのであろうか(中略)。こうした問題意識に基づいて、(失敗の本質では)6つ負け戦の中に表出した日本軍の特性を明らかにしていくことを課題としている。別のいい方をすれば、組織としての日本軍の失敗を組織論の観点から論じようとするのである」

では、6つのケースに共通してみられる作戦の性格とはどのようなものでしょうか。

  • 複数の師団あるいは艦隊が参加した大規模作戦であった。したがって、陸軍の参謀本部、海軍の軍令部という日本軍の作戦中枢が作戦計画の策定に関与している。
  • このことは、作戦中枢と実施部隊との間に、時間的、空間的に大きな距離があることを意味していた。さらに、実施部隊にも程度の差はあれ、同様の状況が存在した。
  • 直接戦闘部隊が高度に機械化されていたが、それに加えて補給、情報通信、後方支援などが組み合わされた統合近代戦であった。
  • 相手側の奇襲に対応するような突発的な作戦という性格のものはほとんどなく、日本軍の作戦計画があらかじめ策定され、それに基づいて戦われたという意味で組織戦であった。

以上のような作戦の共通性は、個々の戦闘状況における指揮官の誤判断や、個別の作戦上の誤りを超えて、むしろそうした状況を生むに至った日本軍の組織上の特性、すなわち戦略発想上の特性や組織的な欠陥に、より大きな注意を払うべきことを示唆しているというのが筆者たちの見解です。確かにそうですね。そしてこのような観点は組織開発(OD)を学習し実践する私たちに、とても大きな示唆を与えてくれると確信します。

 

「失敗の本質」では、日本軍の組織特性を次の2つに大別して分析しています。

  1. 戦略上の失敗要因分析
  2. 組織上の失敗要因分析

 

戦略上の失敗要因は以下の5つが挙げられています。

  • 曖昧な戦略目的
  • 短期決戦の戦略志向
  • 主観的で「帰納的」な戦略策定:空気の支配
  • 狭くて進化のない戦略オプション
  • アンバランスな戦闘技術体系

 

組織上の失敗要因は以下の4つが挙げられています。

  • 人的ネットワーク偏重の組織構造
  • 属人的な組織の統合
  • 学習を軽視した組織
  • プロセスや動機を重視した評価

次回から、この要因について詳細に見ていきます。

 

この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。