• リーダーシップ開発②~174 組織開発(OD)の実践って、どうするの?~

リーダーシップ開発②~174 組織開発(OD)の実践って、どうするの?~

前回のODメディアで、リーダー人材を継続的に育てるには、企業としてのリーダーシップ・ブランドを構築することが重要であるということを見ていきました。今回は、リーダーシップ・ブランド構築の5つの原則を詳しく見ていきます。

【原則1.リーダーシップの基礎を固める】

ブランドは、一朝一夕に築けるものではないことは誰しも承知していることです。ブランディングのためには、基本要素と差別化要素の二つが必須条件です。それは、製品マーケティングを見れば明らかですが、例えばレクサスやBMWは自動車としての「走って、曲がって、止まる」という基本要素を高いレベルで備えると共に、レクサスやBMWならではの差別化としての味付けや痒い所に手が届くメンテナンス・サービスを有しています。リーダー人材育成も同じです。D.ウルルッチとN.スモールウッドは、基礎づくりでは、彼らがリーダーシップ・コードと呼ぶ基本4要素を習得することが重要と言います。

  • リーダーは戦略に精通すること。将来を見通し、顧客とどのように信頼関係を創造していくのかについて確たるシナリオを持つこと。
  • リーダーは実行力を磨くこと。組織を機能させるには、何をあるいは誰をどう動かしていけば良いかについて深く理解すること。
  • 人材マネジメントについて精通すること。周囲とのコミュニケーション力を高め、部下たちのモチベーションを高める術を習得すること。
  • 自分自身が手本となること。貪欲に学習し、SQやEQを鍛え、周囲との信頼関係を構築すること。

リーダー育成プログラムでは、この4つがもれなく盛り込まれることが重要です。もちろん、この4つの学習には長い年月が掛かります。このような基礎固めができれば、次にリーダーシップ・ブランドの具体的構築に着手します。

【原則2.ステークホルダーの期待に応える…リーダーシップ・ブランドの具体的構築】

リーダーシップ・ブランドの構築は、企業としての誓約を宣言することから始まります。特に重要な内容は「顧客からどのように見られたいか」であり、その実現のために求められるスキルと行動をリーダーたちは習得しなくてはなりません。例えば、「オールウエイズ・ロープライス」を掲げるウォールマートは、仕入れ交渉に長けた謙虚な姿勢のマネジャーを採用し、彼ら彼女らをリーダー人材として育成します。コンサルタント会社のマッキンゼーの企業スローガンは「CEOから頼りにされるアドバイザー」であり、リーダーへの評価は「経営課題の解決、データの統合、ソリューション開発の先駆者集団」となります。

【原則3.顧客の視点でリーダーを評価する】

リーダーシップ・ブランド宣言が明確になれば、次はリーダーやリーダー候補が、この宣言に従っているかどうかを継続的にチェックしていきます。このチェック項目が、前回のODメディアで紹介した10のチェック項目です。このチェック項目は社内だけでなく、顧客や外部のステークホルダーにチェックしてもらいフィードバックを貰うことも良いでしょう。顧客にしてみれば、リーダーが期待通りに行動すれば、それは取引量を増やしていこうとする動機づけになります。

【原則4.顧客や投資家に教えを仰ぐ】

これはずばり、顧客や投資家に、社内リーダー研修の講師になってもらったり、討議メンバーに加わってもらったりすることを意味します。自社都合でなく、広く多様性を重視した経営を実践するには、社外の人たちを含むエコシステムを構築することは、とても重要です。キャリア開発では、顧客と直接接する経験を積ませることはとても大事です。

【原則5.リーダーシップ・ブランドの成果を長期間追跡する】

リーダーシップ・ブランドを重視したリーダー人材育成は、属人的な要素に左右されることがなくなり、全社的なマネジメント力が向上します。手塩にかけて育てたリーダーが、他社に新天地を求め、そこで活躍すれば、世間から「経営力に優れた企業」と評価されます。これこそリーダーシップ・ブランドの真骨頂です。リーダー人材が他社に移るとか、引き抜かれることを「投資をした甲斐がない」などと姑息に考えてはなりません。強力なリーダーシップ・ブランドを持っている会社は、CEOが交代しても大した影響はないのです。リーダーシップ・ブランドを構築する努力は、企業としては「掛け替えのない人材をつくらない」ことであり、個人としては「掛け替えのない人材になろうと努力すること」なのです。

強固なリーダーシップ・ブランドは、無形資産の最たるものの一つであり、顧客や投資家からは「同業他社よりも将来性がある」という評価に繋がります。リーダーシップ・ブランド構築の5つの原則は、長期間の努力によって築かれるものであり、1年や2年の研修プログラムで構築されるわけではありません。そして、その構築には人事部門だけが取り組むのではなく、経営陣全体の努力と取締役会の深い理解が必要です。そして、あらゆる階層のリーダーがリーダーシップ・スキルとリーダーシップ・ブランドの要諦を習得すれば、自ずと企業価値は向上するでしょう。

 

 

この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。