• リーダーシップ開発①~173 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-~

リーダーシップ開発①~173 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-~

今回のリーダーシップ論は、リーダーシップって何という視点ではなく、リーダー人材をどのよう育てていくのかについて考えてみます。参考にするのはHBR.2008.2リーダーシップ・ブランドの5原則(デイビッド・ウルルッチ:ミシガン大学、ノーム・スモールウッド:RBLグループ共同創業者兼パートナー)です。

リーダーシップ・ブランドとは、「優れたリーダーを大量に排出している企業」のことです。具体的には、独自のリーダー育成の価値基準とプログラムを構築し、その実践を継続的に行っている企業です。D. ウルルッチとN.スモールウッドは優れたリーダー育成プログラムを持っているかどうかのチェックリストも提案していますので、まずはそれから見ていきましょう。

  • どのような会社であるべきかについて、顧客の視点から考え、明確なコーポレート・アイデンティティ(CI)を掲げている。
  • CIを踏まえたうえで、印象的な独自のリーダーシップ・ブランドを打ち出している。
  • リーダーシップ・ブランドの精神に沿って、リーダーの行動規範を明確にしている。
  • 次世代リーダーの育成において不足している部分を発見するプロセスが確立している。
  • 各人のリーダーシップ開発計画には、顧客に奉仕するために必要なスキル・知識・視点の習得が盛り込まれている。
  • 顧客の視点に立てるような研修に投資している。
  • リーダーたちに、顧客の立場で発想できるような仕事を与えている。
  • 顧客を正しく理解し、顧客に奉仕するためのスキルを身に付けるよう、リーダーたちを奨励している。
  • リーダーシップ教育の費用対効果を業績によって判断している。
  • リーダーシップ・ブランドの構築に向けた取り組みについて、あらゆるステークホルダーに熱心に説明している。

 

ウルルッチとN.スモールウッドは、各質問5点満点で採点して、24点以下ならリーダー開発プログラムを基礎から再構築する必要があると言っています。35点から44点はプログラムが順調に構築されつつある段階で、合格点は45点以上です。45点以上であれば、株価上昇も期待できると言っています。

リーダーシップ・ブランドを構築するための原則とは何かを知りたいところですが、その前に、彼らが主張するリーダーシップ開発の誤りについて見ていきましょう。結論から言えば、リーダーシップ開発は「リーダー個人の能力開発に焦点を合わせてはならない」ということです。別の言い方をすれば、これがリーダーの資質だというような「属人的視点」に焦点を合わせてはならないということです。とても挑戦的な主張ですが、どういうことでしょうか。多くの企業が社内MBAなどのリーダー育成に大きな資金を投じているが、そのプログラムは顧客や投資家の視点を疎かにしているというのが、彼らの主張です。通常、リーダーシップ開発では、コンピテンシー・モデルに基づき、ビジョン、目標、情熱などの資質を列挙しているが、それはどの企業も似たり寄ったりであり、その企業独自のものでない上に、次世代リーダーとして育成していくのは良いにしても、それは一般的に言われる属人的資質に焦点を当てすぎ、その会社自体のブランドは色あせて見えると言っています。彼らはまた、社員たちが顧客の期待よりもリーダー個人への献身を優先させるようになったら、それこそ会社は危機的状況になる。一人のリーダーによりかかることは、そのリーダーが失敗した時のリスクが大きすぎると言います。確かに、そうですね。

D.ウルルッチとN.スモールウッドは、個々人のリーダーシップ開発に注力することは大切だが、それ以上に大切なことは「顧客や投資家の期待に応えるだけの能力を備えた、卓越した経営者を育てる企業」として名声を博することが大切だと言います。そして、このような企業は「社員も経営者も、会社として掲げた約束は必ず守る」と世間から信頼されています。このような認知を得ることが「リーダーシップ・ブランド」の構築になるのです。リーダーシップ・ブランドは、事業方針や社員への期待を通じて、組織文化に刻み込まれます。このようなリーダーシップ・ブランドを構築している企業は、顧客の視点を内部化する方法を開発し、その結果として優秀なリーダーを次々に育て上げているのです。当然ながら、このような企業は毎年着実に利益を積み重ね、株価収益率も業界平均を上回っています。ではそろそろ、リーダーシップ・ブランドを構築する5つの原則を見ていきましょう。

  • 戦略プランニング、優秀な人材の育成など、リーダーシップの基礎を固める。
  • 一人ひとりのマネジャーの行動がステークホルダーからの期待に応えるものである。
  • 顧客の視点から各リーダーを評価する。
  • リーダーシップ育成に広範囲に投資し顧客や投資家の教えを仰ぎながらスキルを磨く。
  • リーダーシップ・ブランドの成果を長期間追跡する。

次回からこの5つの原則を詳しく見ていきます。(続く)

 

この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。