• 自立と自律の違い~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-【124】~

自立と自律の違い~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-【124】~

前回のODメディアで、「個人のメンツを気にするようでは、組織運営の中核を担うミドルが組織の<重さ>を実感するに違いない」とか、「日本の組織では個人としての自律と自覚を前提とした議論や対話をする訓練ができていない」というようなことを主張しました。

近年、企業でも自律型人材の育成を目標にしているところも多くなっています。ところで自律型人材って、どのような人材でしょうか。なるほどね!という定義をしている文章があったので参照してみます。

 

『自律型人材とは、自らの価値観や信条に則り、自ら物事を判断することができる人材のことです。では、そもそも自律にはどのような意味があるのでしょうか。‘じりつ‘という言葉は、「自律」と「自立」の2種類があり、それぞれ違う意味を持ちます。

自律とは、価値観や信条の独り立ちのことです。そして、自律の対義語を「他律」といいます。他律は「自らの意思によらず、他からの命令、強制によって行動すること」を表します。

一方で、自立は環境や他者に依存することなく、能力や経済力が独り立ちすることを表します。そして、自立の対義語は「依存」です。依存とは、「他に頼って存在、または生活すること」を表します。

つまり、自律型人材とは「物事を自力で完遂できる人材」ではなく、「物事を自らの価値観や信条に沿って判断できる人材」のことを言います。(理と利より引用)』

 

なるほど、よく分かります。一般的に人の成長は「依存→自立→自律(あるいは相互依存)」と進んでいくことが望ましいと言われます。コビーの7つの習慣も土台はこれですね。こうみても、やっぱり問題は「自立から自律へ」の過程ですね。

繰り返しになりますが、自立は「環境や他者に依存することなく、能力や経済力が独り立ちする」、そして「物事を自力で完遂できる人材」です。これって昔から望まれる人材の在り方ですし、企業組織ではお手本になる人材と言われます。

そこで皆さん、自律と他律をもう一度よく考えてみましょう。「自律とは、価値観や信条の独り立ちであり、自ら物事を判断すること」、「他律とは、自らの意思によらず、他からの命令、強制によって行動すること」。私たちはどちらを選択しているでしょうか。

 

オリンピック組織委員会前会長であった森さんの失言は、単に女性蔑視だったのでしょうか。それは分かりやすい切り方ですね。多様性の視点からも、ジェンダーの視点からも分かりやすい。色々な記事を見ていると森さんは、女性蔑視はしていないというような記事もあります。

ODメディアの立ち位置である組織・社会運営という視点から見てみると議論されていない論点があるようです。

それは「トップが決めたことには従う」「責任はトップがとる」という暗黙の了解事項です。「もう決まっているのだから」、あるいは「私がそう決めているのだから」、みなさんは「わきまえて発言してください」という考え方は「価値観や信条の独り立ちであり、自ら物事を判断すること」を是としていないのではないでしょうか。

森さんの発言は、自律から見る論点とジェンダー視点から見る論点がごちゃ混ぜになっているようにも感じますが、いずれにしても「父権主義、家父長的社会構造:パターナリズム」のマインドです。

大阪ナオミさんの一連の「Black Lives Matterに対する態度や発言」、「森さんの発言に対する記者の質問への回答」など、世界や日本でも称賛されていますが、これはまさしく「価値観や信条の独り立ちであり、自ら物事を判断すること」の表れだと言えます。

これを前提にすれば、多くの人々の間で、価値観や信条が初めから一緒ということはあり得ないわけです。ところが、日本はかつて金太郎飴社員とかようかん型社会(どちらも、どこから切っても同じという意味)とか言われた時期があり、それが依然として払しょくできていないのではないかと思うのですよ。

少なくとも森喜朗さん世代にはそれが強いのかもしれませんね。そのような考え方の人たちが組織の上層部にいるのでは自律型社員は育たないし、自律型社員は「わきまえない社員」になってしまいます。

結局、自立は求めていても、自律は求めていないという「無意識のバイアス」があるのでしょうね。

 

私たちは自律ということを、ポジティブODの基本的なマインドセットとして紹介した「ポジティブな逸脱」として認識することが出来るのでしょうか。違いを認めて、そこに新しい機会を見出していくということはテクニックではなく、マインドセットや価値観の問題になってくるのですね。How toばかり求めてもダメってことですね。

 

ところで、TPOはわきまえるのが良いですね。これまでわきまえないとアナーキーになっちゃう(笑)。

 

※この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株) 波多江嘉之です