• チームワーク:対話過程~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-【133】~

チームワーク:対話過程~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-【133】~

前回のODメディアで、チームワークの向上についてオープンチームワークの概念を紹介しました。今回のODメディアでは、オープンチームワークを実践するためのワークショップの進め方について見ていきます。

 

①チームの協働関係を改善する話し合いに入る前に、メンバー1人ひとりの「対人関係の好み」を確認します。対人関係は個人によって好みが異なりますが、このテーマで話し合うことは感情を取り扱う対話を始める予備演習になります。

ここでのポイントは、一人ひとりの対人関係の好みについて自己開示したり指摘したりすることに慣れることです。土台となるのは、W.シュッツの3つの欲求と行動理論です。その3つとは「参画欲求、統制欲求、親密欲求」です。

私たちは、欲求と実際の行動は異なることがあります。例えば、マネジャーだからみんなに声掛けすることが役割だと認識し、参画や親密さの欲求では低いにもかかわらず実際にはみんなに声をかけている行動を取っているなどです。

このように、「私と周囲の認識の違い」や「私の欲求と実際の行動のギャップ」などについて話すことは、チームワークを高めるためにとても有効な話し合いになります。また、このような話し合いを済ませてから協働性の問題を話すと話し合いが円滑に進みます。

 

②チームの目標・課題を確認し、チームメンバーの役職と役割表およびメンバーの関係図を完成させます。この段階は論理的であり、チーム活動の基本的な構造の確認です。

 

③チームメンバーの関係の査定をします。この段階が「1対1の関係性」について、メンバーそれぞれが考える「目標達成のためのあるべき姿」と「現状」のギャップの査定になります。

この段階で大切なことは、チームワークの問題を浮き彫りにすることではなく、「あるべき姿」と「現状」についてメンバー全員の認知のすり合わせをすることです。大切なことは「全てのメンバー間の1対1の関係」を査定することです。
最初に全員の関係について「あるべき姿」を査定します。例えば、チームメンバーがリーダーを含め7人いる場合は、リーダーAさんとメンバーBさんの関係のあるべき姿の査定、次にリーダーAさんとメンバーCさんの関係のあるべき姿の査定というような順番です。

リーダーAさんと他のメンバーの査定が終われば、次にメンバーBさんに移り、BさんとCさんとの関係というように全員のあるべき関係性について全てのメンバーから意見をもらいます。

あるべき関係性について最高に重要で常にコミュニケーションを取らなければならない関係を10点とし、その重要度がもっとも低い(ほとんどコミュニケーションをとらなくて済む)関係を1点とします。そして、メンバー全員が2人のあるべき関係の重要度について「点数」で表明するのです。

全員が同じ点数を表明することはほとんどありません。ここで全員での話し合いが始まります。メンバーの責任は「なぜその点数を表明したのか」について自分の考えを述べることです。あるべき関係について全員の意見の一致、すなわち点数が揃うまで話し合いを続けます。

 

④次に「1対1の関係の現状」について査定します。あるべき姿で実施したやり方と同じように、リーダーAさんとメンバーBさんの現状関係の査定、次にリーダーAさんとメンバーCさんの現状関係の査定というように実施します。

これも点数で表明しますが、あるべき姿の査定と異なるのは、現状の関係が効果的でチーム活動に貢献していれば1点、効果的でなくチーム活動に貢献していなければ10点とします。

このような点数の付け方をするのは、「あるべき姿」と「現状」の数字を乗じて2人に関係について分かりやすく可視化するためです。現状査定においても、点数が揃うまで全員で話し合います。乗じた点数が高いほど、あるべき姿と現状にギャップがあることになり、その2人はなぜそのようなギャップが生じているかを話す必要があります。

 

ここまでのステップでお分かりの通り、関係のあるべき姿と現状についてみんなが話し合うことは、関係性つまりチームのプロセスについてかなり突っ込んだ話し合いをしていることになります。

メンバー全員が、チームメンバーの関係性や協働性の在り方について、この話し合いの前には「なんとなく感じていたこと」を表明することで、全員の認知のすり合わせができるのです。この後は、関係性について特に話し合うべき2人が他のメンバーの参画を得て、関係をどのように構築すべきかを話し合っていきます。

話し合うべき2人が複数の組になる場合は、分かれて同時並行で話し合いを進めて構いません。話し合いが終われば、その過程と結果をメンバー全員に発表しシェアします。

このようなスタイルの話し合いが「対話過程」であり、心理的安全性を構築することにとても効果的です。この体験をしたチームは、a.前向きな姿勢、b.感情的安定性、c.経験への開放性、およびd.学習指向に肯定的な姿勢を醸成することが出来、変化に対して柔軟で効果的なチームワークを発揮できるようになります。

 

※この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株) 波多江嘉之です