• ~モチベ―ショナル・リーダー①~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-145

~モチベ―ショナル・リーダー①~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-145

組織を動かしていくには優れたマネジャー(経営管理者)が必要です。だから多くの組織は管理者研修を実施するし、人材育成に投資するんですね。では、組織を動かす優秀なマネジャーはどのような特性を持っているのでしょうか。この問いに対しては「コンピテンシー」と称して、いろいろな行動特性が示されます。一般的なマネジャーあるいはリーダーシップトレーニングでは、この行動特性を理解し発揮できるようなスキル研修が実施されます。しかし、このトレーニングで優秀なマネジャーになるのはどの程度の割合なのでしょうか。

そもそも、2日か3日程度のトレーニングで優秀なマネジャーが育成されるのでしょうか。そりゃされませんよね。トレーニングを受けるに越したことはないですが、トレーニングを受けなくても優秀なマネジャーは存在します。では、優秀なマネジャーとそうではないマネジャーは何が違うのでしょうか。この「何」は、動機にあるのではないかという仮説のもとで「モチベ―ショナル・リーダー」を提唱した人がいます。

ハーバード大学教授のD.マクレランドと共同執筆者であるD.バーナムです。彼らの調査対象は大規模な組織です。そのような組織は複雑性が高く、成功に必要な一切合財の仕事を自分一人の手でやり切れるわけではありません。部下たちを動かし、組織のために働かせなければならないのです。しかも、それぞれの仕事が大勢の人間に分散しているため、マネジャーは各人にタイミングよくフィードバックするといったことなどは現実的にはできず、テキパキと仕事を進めていかなくてはなりません。このような組織では、どのようなリーダーが望ましい成功を収めるのでしょうか。以下、参考文献 HBR2010.2 モチベ―ショナル・リーダーの条件。

 

成功した中小企業の経営者が何に動機づけられているのか、それは「達成動機」であることは心理学の分野でよくわかっていることです。達成動機は、今まで以上に優れていて、かつ効率的に物事を達成したいという欲求です。では、達成動機は優れたマネジメント(経営管理)にどのような影響を及ぼすのでしょうか。結論から言うと、達成動機型マネジャーでは大規模で複雑な組織のマネジメントを十分に担うことが出来ないというものです。

ちょっと待って、組織が成功するには「優れた製品やサービスを、競争相手よりも効率的に提供すること」が大事じゃないかと思う方が多いでしょう。いや、そうなんです。でも組織という人間集団は、それを一人でやっているわけではありません。大勢の人たちが協働してそれをやっているのです。マネジャーは部下たちを動かし、組織の目的に向かって働いてもらわなくてはなりません。しかも、それぞれの仕事が多くの人たちに分散しているため、リソースの配分や情報の提供、あるいは進捗にフィードバックなどをタイミングよくテキパキ物事を進めていく必要があります。つまり、マネジャーの仕事は一人で優れた成果を上げるよりも、うまく人を動かしていくことが期待されているのです。

 

マクレランドとバーナムは、重要な3つの動機に着目しています。一つは「達成動機」です。もう一つは「権力動機」であり、3つめが「親和動機」です。後に「回避動機」が追加されていますが、優秀なマネジャーは「権力動機」が強いことが調査で判明しました。では、権力動機とはどのようなものでしょうか。

それは、自分の利益のために権力を振りかざすのではなく、部下に前向きなインパクトを与え、強い立場から影響を行使したいという欲求のことです。そして、部下のモラールの高さを決定づける最も重要な要素は、権力動機が親和動機(部下に好かれたいという欲求)よりも高いかどうかであることが分かったのです。

親和動機が高いマネジャーは、誰とでも良好な関係を持っていたいと思うため、部下の個人的な頼み事といった、組織の規範に添わない要求に対しても応えようとするため、同じ部門の他の部下たちにすればこのような例外が不公平に映ってしまうのです。それによって、親和動機型のマネジャーは部下にやる気を起こさせるのが下手であり、優秀なマネジャーになれない事が多いのです。

調査では、権力動機であっても、それを個人的な利益につなげようとするのではなく、組織目的の達成に向けて行動し、自己抑制力が高いという場合に高いモチベーションと成果を実現させていることが発見されました。つまり、権力を組織に全体の利益にかなうように行使しているということが重要なのです。皆さん方の組織や職場では如何でしょうか。(続く)

※この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株) 波多江嘉之です