• ~モチベ―ショナル・リーダー③~ 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-147

~モチベ―ショナル・リーダー③~ 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-147

前回までのODメディアで、効果的なリーダーシップの発揮を「3つの動機」という視点から見ていきました。この3つの動機に加えて、組織志向か個人志向か、自己抑制力が高いか低いかという要素の組み合わせによって具体的なリーダーシップの発揮の仕方が異なってきます。典型的な3つのタイプについてどのような特徴があるのかを見ていきましょう。

【組織志向マネジャー】

権力動機が高く、親和動機は低く、自己抑制力が高い。

 

【親和志向マネジャー】

権力動機よりも、親和動機の方が高い。

 

【個人権力志向マネジャー】

親和動機より権力動機の方が高いものの、自己抑制力が低い。

 

大規模で複雑な組織では、組織志向マネジャーがもっとも高い成果を上げています。彼らは組織的な権力に関心を抱いており、それをテコに部下を動機づけ、生産性を高めます。

日本の最近の傾向を見ると、親和志向マネジャーが望ましいのではないかと考える向きも多いのではないかと思いますが、そうではないのです。親和志向マネジャーは、誰とでも良好な関係を持っていたいというタイプのため、例外に走る傾向が強いのです。本人は気づいていないかもしれないのですが、例外は同じ部門の部下たちからすれば不公平や依怙贔屓に映るのです。部下に好かれたいという動機が強いマネジャーは、実は組織という人間集団を動かすのには向いていないのです。

調査によれば、部下が自分の職場におけるエンパワーメント、組織行動や情報の明確性、チーム・スピリットをどのように評価しているのかを見ると、親和志向マネジャーが上司という部下は、エンパワーメントされておらず、組織の手続きが曖昧だと感じ、自分のチームの仕事にあまり誇りを感じていなかったのです。つまり、親和志向マネジャーは理性よりも感情で判断したり、場当たりの決断をしたりすることが多いために、整然とした手順をなし崩しにしていたのです。このように手続きが無視されるため、部下は自分の権限は弱く、責任も与えられていないと思うようになり、次にどうなるのか、自分はどのような立場にあるのか、自分は何をすべきなのかが曖昧になるのです。

 

個人権力志向マネジャーのマネジメント効果は、意外かもしれませんが親和志向マネジャーのそれよりも幾分高いものになっています。自部門のメンバーに責任感を持たせることができることに加え、高いチーム・スピリットをかき立てます。しかし、このタイプは組織の手続きが曖昧で、自制心にやや欠けるため、組織づくりにおいて組織全体のことを考慮することが少なくなる。部下たちは、組織というより上司個人に尽くそうとしがちです。

 

組織志向マネジャーは、明確な組織づくりを目指して、高いチーム・スピリットを醸成しようとします。権力志向マネジャーの方が、人情に動かされる親和志向マネジャーよりも部下にやる気を起こさせ、組織全体のために仕事をすることを求めます。

 

伝統的な組織心理学の世界では「権威主義マネジメント」は、アメリカの産業界では悪癖の一つとみなされ、否定されてきています。それが権力というものまで否定することになっているのではないかというのがマクレランドやバーナムの見解です。

因みに権威と権威主義いう意味を調べてみると、「権威とは、自発的に同意・服従を促すような能力や関係のことであり、威嚇や武力によって強制的に同意・服従させる能力・関係である権力とは区別される。代名詞的に、特定の分野などに精通して専門的な知識を有する人などをこのように称することもある。」とあります。また、「権威主義とは、権威に服従するという個人や社会組織の姿勢、思想、体制である 政治学では、非民主主義の思想や運動や体制の総称でもあり、各種の独裁主義や専制主義や全体主義などが含まれる。」となります。一般的には、権威と権力がごっちゃになって理解されている可能性が高いですが、マネジメントにおける権力志向とは、人間集団である組織を動かしていく力を持ちたいというような意味です。マクレランドとバーナムは、マネジメントとは「影響力を行使し合うゲームである」とみており、そのような中で民主的マネジメントを唱える人たちは、この現実を忘れてしまっていると言います。加えて、動機を見るのか行動を見るのかと言えば、行動科学者たちは行動を見ているのであり、話がかみ合わないのは、ここに原因があると言っています。マクレランドとバーナムは、結局のところ、マネジャーは組織を動かしていく上で何らかの影響力を行使し、統制されたアプローチで仕事を進めることに関心を払うべきであると主張します。皆さんの組織ではどのマネジャーのタイプが高い成果と部下の満足感や誇りを高めているでしょうか。

 

※この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株) 波多江嘉之です