• プロセスを可視化する反応表の使い方~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-【131】~

プロセスを可視化する反応表の使い方~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-【131】~

前回のODメディアでは、プロセスを可視化する簡単便利な方法として「反応表」を紹介しました。反応表はとても便利なツールです。

チームのミーティングや日常の業務活動についてメンバーの受け止め方を反応表というフォーマットに付けてもらい、それをチームに対してフィードバックし、チームメンバー全員で現状に対する見方やメンバー個々の気持ちを確認し、チーム活動をより良くしていくために一人ひとりがどのように関わっていくべきかを話し合っていきます。

使いこなしていくにはチームリーダーにそれなりのトレーニングをしていく必要があります。

 

反応表を使う場合に大切なことは、プロセスは客観的に診断できないということを受け入れるかどうかです。プロセスは、そのプロセスに関係している当事者が認知するものでありその当事者の世界観によって解釈されるものだからです。反応表に示される数値は、あくまで対話をしていくきっかけにしかすぎません。

例えば、同じような議題で話し合っている2つのチームに対して反応表を使ってプロセスを診断し、一方の方の点数が良かったからと言って、その一方のチームの方がより良いプロセスであったとは一概に言えないのです。

それは、例えば点数が低いチームは、より高い理想のチーム状況のイメージがあり、それに対してはまだまだ十分ではないと思っていたからこそ、点数が低いのかもしれません。

 

いずれにしてもリーダーは、点数だけを見て「今回のプロセスはまあ良かったようだね。次回もこのようになるようやっていきましょう」では反応表を有効に使っているということにはなりません。

ではどうするか、一人ひとりに自分が付けた点数の意味を語ってもらうことが必要です。何を見て、またそれをどのように解釈してその点数を付けたのかを語ってもらう必要があります。平均点は5点台であっても、中には4点や6点があるかもしれません。7点もあるでしょう。つまりバラつきがあります。

そこには、同じ空間を同じ時間軸の中で過ごしながら、その中で起こっていること、つまりプロセスに対する見方が異なるのです。それは何故かを話し合っていくことが大切なのです。それによって、私たちは一人ひとりの認識の違いや懸念を話し合うことが出来ます。

このような話し合いを重ねていく中で、私たちは「なぜ私はその状況(プロセス)をそのように認知したのか」「私たちの中にあるどのような関係性が、その状況をそのように認知させたのか」を理解することができるようになるのです。

 

チームメンバーの関係性やチームの雰囲気について心理的安全性(A.エドモンドソン)という概念があります。エドモンドソンは、心理的安全性の重要性を認識したのは2003年に起きたコロンビアの爆発事故だと言っています。しかし、NASAでのスペースシャトル事故は以前にもあったんですよね。1986年に起きたチャレンジャー号爆発事故がそれです。

この事故はさまざまな調査が為され、このプロジェクトに関係した人々の間における集団心理についてはグループシンク(集団浅慮/集団愚考)として、集団に起きる負の思考と行動・防衛心理が事故を引き起こす原因の一つであると分かっています。チャレンジャー号の事故の後、NASAで多くの制度的改革が為され、その他にも真実を語ることの大切さを学ぶトレーニングを全管理者に実施しています。

トレーニングは、以前のODメディアでも紹介したW.シュッツが提唱するオープンネスの概念とその実践を学ぶ研修です。しかし、17年後に起きたコロンビアの事故でも、関係性の中における真実の排除(上層部によるネガティブ情報の握り潰し)が事故原因の大きな要因として指摘されています。

これから我々が学ぶべきことは、人間関係における不安やパワーへの対処は永遠の問題であり、ちょっとやそっとの対処では解決が難しい問題であることが分かります。

 

では、オープンネスや心理的安全性が高い状態を作っていくにはどうすれば良いのでしょうか。W.シュッツによれば、それは最終的には個々人が自分の内面に起きている事柄や感情に気づき、それに対処する方法を身につけることが必要であるということになります。

例えば、それは真実を最後まで主張できなかったメンバーだけでなく、その真実を聴こうとしなかった上司は、何故その真実を聴こうとしなかったのかということを含めて考えなくてはなりません。組織という複雑な人間関係で成り立つ世界の中で、何がその人たちをそうさせたのかを探求する必要があるのです。

 

このような感情が絡むプロセスの問題は、そのことを取り上げて対話しなくてはならないというようなタイミングで、いきなり話せるかと言えば、それは難しいでしょう。チャレンジャー号やコロンビア号の事故は、それが出来なかったから事故を防げなかったのです。

ですから、感情的側面を語るということは平素から訓練しておくことが大切なのです。その訓練に適した簡便な方法が反応表を使った議論の振り返りと話し合いになります。ものは試しで、使ってみてはいかがでしょう。意外といろいろな気づきが生まれますよ。

 

 

技法 活用場面
3-2-1:

現状診断に使える各種チェックシート

チーム・レジリエンスの現状を把握する「チームのレジリエンス度チェック」やその他のチームの現状診断のシートです。

チームの現状を簡単な質問で把握します。

3-2-2.

反応表

討議や集団活動のプロセスを素早くチェックしたいときに使います。

反応表はチーム状況を当事者が自己チェックし話し合うための便利なツールです。

3-2-3.

話しやすい場をつくる

対話するという雰囲気をつくっていきたいときに使います。
3-2-4.

お互いをよく知る

メンバーがお互いによく知り合っていない、その人となりを十分に理解していないと思われるときに使います。

具体的には、各人が自分の歴史(タイムライン)を作成し、それを発表しあうという方法です。いつも仕事をしているメンバーであっても、その人の言動の背景を意外と知らないものです。

3-2-5.

目標を統合する

個人とチーム全体の目標の統合がなされていないと思われるとき。あるいは、大きな目的と今やるべきことを再整理したいときにつかいます。

チームのレジリエンスを高めていく場合、その大前提となる「私たちは何故ここで一緒に働いているのか」を改めて問い直すことができます。

3-1-6.

ジョハリの窓と役割期待

課題に対するメンバーの役割と関係を改善したり再確認したりする必要があると感じたとき。あるいは、メンバー同士が今以上に自由にコミュニケーションを行う必要があると感じるときに使います。
3-2-7.ストローク

(お互いの働きかけ)

協働性

お互いの関わりについて量と質を確認し、関係について改善したいときに使います。

ストロークは、チームの中の人間関係に偏りが感じられ、メンバーの誰かが疎外感を味わっている可能性があるときに実施すると有効です。

3-2-8.

ライフポジション

一人ひとりが他者に対する自分のスタンスを確認し改善したいときに使います。

具体的には「私とあなた」の関係で、「私はOKまたはNO」「あなたはOKまたはNO」という4つの視点から関係を見て、その4つのどのポジションに私はいるのかを確認することで、無意識に陥っている「私の他者への関係の取り方」を自己理解し、修正すべき点を明確にします。

3-2-9.

チームでの自分の行動

メンバーのチーム内の行動や貢献をお互いに確認し気づきを高めたいときに使います。

具体的には「協力する」「主張する」という2軸から自分のポジションを確認し、どのような行動変容につなげてい行くかを明確にしていきます。

 

※この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株) 波多江嘉之です