• プロセスを可視化する~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-【130】~

プロセスを可視化する~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-【130】~

チームワークは、チームで仕事をしている人たちにとって常に気になる課題です。ところで、チーム活動を見ていく際に私たちが持っていると便利だという概念モデル(メガネ)に、コンテントとプロセスがあります。

よくご存じの方々も多いと思うのですが、チームワークを考える上で役に立つ大切な概念です。改めてコンテントとプロセスについて確認しておきましょう。

 

コンテント(Content)とは、チームが取り組んでいる課題や仕事のことです。プロセス(Process)とは、コンテントに取り組んでいるチームで起こっていること全てであり、チームの状態を示します。簡単な事例を見てみましょう。

コンテントを確認するとは、何をやっているのか(What are you doing?)を確認することです

a.例えば、営業チームが会社の新しいマーケティング施策について理解する会議をやっています。

b.例えば、来期の目標設定について話し合っています。

 

プロセスを確認するとは、どのような状態であるか(What is the state?)を確認することです。

a.例えば、マーケティングチームの人が一所懸命に説明しているが、営業メンバーはただ聞いているだけです。

b.例えば、課長から会社方針の説明があり営業メンバーから活発な質問が出ています。

 

この簡単な事例で分かるように、プロセスは集団という人間の集まりの中で見られる相互関係の状態です。ダニエル・キムの成功循環モデルを引用するまでもなく、プロセス(関係)の質は結果の質に影響を与えます。

チームづくりなどでは、コンテントそのものが適切なのかという視点からチームづくりをしていくこともありますが、多くはプロセスの改善に焦点が当たります。では、どのようなプロセスになっているのかを理解するにはどのような方法があるでしょうか。この方法で便利なツールが「反応表」というものです。

 

ところで皆さんは、例えば会社でのさまざまなミーティングや会議の後、公式にプロセスについて振り返ることをしているでしょうか。ほとんどの場合はそれはなされず、ミーティングや会議の後に気の合った仲間同士でちょっとした感想を言い合っているのではないでしょうか。

それは、「今日はなんとなくまとまったね」とか、「部長が、何か知らないけど、イライラしていたね」とか、「みんな自分勝手な意見を言うだけで折り合いを付けようとしてなかったよね」など、とにかくいろいろな見方が表出されます。

中には「君は今日の会議の結論には不満が残っているようだけど、俺はよかったよ」など、他人によって見方が異なる場合もあります。このように会議そのものの振り返りは会議とは別の場で行われることがほとんどではないでしょうか。

そもそも、振り返り自体が会議の場ではないところでインフォーマルに行われるというのもプロセスですね。要するに、人々の関わり合いの中で起こっていること全てがプロセスな訳で、コンテントの実践にはプロセスが大きな影響を与えるということが理解できると思います。

 

話が回りくどくなりましたが、「反応表」に話を戻しましょう。反応表とは、簡単な質問で構成されるチェックシートです。例えば、以下のような質問をします。

a.会議で、あなたは言いたいことが言えましたか。

b.あなたは、グループで話していることや、やっていることに集中できましたか。

c.会議の結論にあなたは納得していますか。

 

質問は自由にデザインしていいわけですが、いずれにせよグループのプロセスが浮き彫りになるように設計します。一つの反応表では、質問数は、多くても5つ程度が良いでしょう。答え方は、5段階または7段階尺度が良く使われます。

質問に対する回答は、その場で集計してみんなに開示し、なぜそのような点数を付けたのかメンバーの認知を確認していきます。初体験は、メンバーにとっては結構辛い作業になるかも知れません。拒否反応を抱く人もいるかもしれません。それを含めてプロセスであり、組織の文化です。でも、この反応表を自由に使えるようになるとチームのプロセスが劇的に改善していきます。

点数はプロセスを「見える化」する機会をつくることが目的ですが、大事なことは反応表についた点数ではなく、そのデータをもとにして話し合い/対話をし、メンバーの認知を確認していくことです。この話し合いの中で私たちはプロセスについてと、自分自身の認知についてとても多くの学びを得ることが出来ます。

 

※この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株) 波多江嘉之です