• 実践でのコンテントとプロセス~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-【89】~

実践でのコンテントとプロセス~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-【89】~

組織開発(OD)の実践は、必ずコンテント(解決すべき課題)とプロセス(課題解決の進め方)の両方から成り立ちます。そして、組織開発(OD)のノウハウが効果を発揮するのはプロセスのマネジメントに対してです。

コンテントは例えば、「これからのアジア市場をどのように開拓すべきか」といった戦略的なテーマから、「withコロナの働き方はどうあるべきか」といった人材マネジメントテーマ、あるいは「〇〇チームのパフォーマンスを上げたい」といったチームマネジメントのテーマに至るまで多岐にわたります。

そして実際の組織運営や変革の場では、プロセスがうまくマネジメントされていないためにコンテントの問題解決がうまく進んでいないということが圧倒的に多く存在します。ですから結論から先に言えば、コンテントの問題解決の質を高めようとすれば、プロセスの質を高めていくことが大切なのです。人間集団の問題解決(OD)で最も大切な視点です。卑近な例を見てみましょう。

言い忘れましたが、コンテント、つまり重要な課題や問題は何かということについて組織的な合意納得を得るという意思決定は、もちろんプロセスの問題です。

 

A社は優秀な技術に基づく製品を持っている会社ですが、一時期その製品開発コンセプトの失敗から業績が低迷したのです。このような会社は、買収をしたい側からすればよい買い物になります。それは株価が低迷しているからです。銀行などもA社のような会社については、事業の継続という点から買ってもらえる会社を探します。A社は運よく買収の運びとなりました。そこで、買収側のB社はA社の内情をいろいろと把握し成長軌道に乗せるべくマネジメントしていこうとします。

ところが、このA社買収前のマネジメントはトップダウン型で、ティール組織論でいうところのいわゆる「レッド型」運営をやっていたのです。ということになると、A社のメンバーは縦割りで依存的体質を持った動きをしているということになります。このような状況で皆さんなら、組織の活力を取り戻し次なる成長軌道に乗せていくために、どのような介入をされるでしょうか。

 

a.A社のメンバーに自主的で自律的な行動は期待できないから、B社側がトップダウンで改革を進めていく。  それとも、

b.そのようなやり方(トップダウン)では頭が変わっただけであるから結局組織は変わらない、だから参画型のマネジメントに切り替えていくべきである。

c.財務的な立て直しが急務であるから、まずは専門プロジェクトを立ち上げて問題解決していく。

 

などなど、つまり問題解決のプロセスについていろいろな方法が考えられるでしょう。

もっと言えば、aでもbでもcでも、いつ、誰とどのようなコミュニケーションをして、どのようにみんなを巻き込み、誰がどのようにリーダーシップをとっていくのか、ということも考慮し実行に移さなくてはなりません。では、そのような変革プロセスのマネジメントをどのようにやっていけば良いのでしょうか。これには一応、ガイドとなるシナリオはあります。下記の5項目がそれです。

a.政治的な支援を開発する

b.変革への動機づけをする

c.ビジョンをつくる

d.転換過程を管理する

e.勢いを持続させる

 

これだけじゃ分かんない、ですよね。どういうことか、あなたがチェンジ・エージェントになったつもりでイメージしながら読んでもらうと良いのではないかと思います。

「政治的な支援を開発する」とは、変革対象組織を動かすことができるパワーを持った人の支援を取り付けるという事です。これはその会社のトップマネジメントはもちろん、労働組合があればその幹部、あるいは古参役員で影響力がある人達の支援をまず取り付けることです。これがないとあらゆるところで邪魔が入ります。

また、政治的な支援は変革のスタート時だけでなく、変革が進んでいく途中でも必要です。変革が進んでいけばいくほど、現場がその変革をポジティブに受け止め、現場自身が主体的に変わっていこうとすることが大切になります。つまり現場が変革に賛成してくれるようでなくては、変革は前に進まないのです。この時に大切なのが「変革への動機づけ」です。

「政治的な支援を開発する」と「変革への動機づけ」は、ある意味変革のリーダーシップ開発であり、このような活動プロセスの中から次のリーダー候補が出てくる場合もあります。いずれにしても、aとbは変革における車の両輪のように重要なプロセスになります。

「ビジョンづくり」は言うまでもなくどのような組織を目指していくのかを明確にし、それに向かって人々の気持ちを一つにしていくことです。

「転換過程を管理する」とは、組織が変わっていく過程において様々に噴出する課題や問題に都度対応し、目指すビジョンから外れないようにしていくことです。計画は計画通りには進んでいきませんから、その都度の対応はとても重要になります。

そして最後の「勢いを持続させる」とは、読んで字のごとく変革のペースを落とさないという事です。人はある程度の達成感を味わうとちょっと一休みしたいものです。もちろん、休みは次の活力にとって必要な栄養源ですが、これを上手くマネジメントしないと組織が先祖返りをしてしまうことがあります。持続させるって大変なんですよ。次回から、この5つについて詳しく見ていきたいと思います。

 

※この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株) 波多江嘉之です