• 中に入り込む~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-【88】~

中に入り込む~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-【88】~

組織開発(OD)は、リーダー研修やフューチャーサーチをやったからODをやったとはならないですよね。ODは、要するに集団の思考と行動を変化させることですから、ODを実施しようとする集団の中に入り込まないと実践はできません。そして変化の促進は、集団構成員全員の参画があり、仕事を通して実施するものであり、毎日の地道な努力が必要であり、その結果として人々の変化と成長が実現されるものです。一握りのエリートを純粋培養し、その人たちに任せればよいというものではないのです。

ということになると、変化を促進させる役割を持った人(チェンジ・エージェント)は、変革の対象集団と共に歩む必要があるということになります。そしてそれは、その集団の規範を理解しつつ、しかし規範に染まらず、変革の働きかけをするということになります。いずれにせよ、共に仕事をして共に学ぶということで「共育」という言葉が意味するような状態になります。

ここで注意しておかなくてはならないのは、変革対象者やチェンジを依頼した発注者が、チェンジ・エージェントに期待していることないしは役割です。それは、医者の役割なのか、専門家の役割なのか、プロセスファシリテーターの役割なのか、そして最も気を付けるべきは、発注者の考えを具現化するのか、組織をより良くしていくのかという事です。

 

前回も書きましたが、変革のプロセスについて関係者が本当に深く納得し合意するまでには、ものすごくエネルギーが要るし、多くの時間を必要とします。そして、ODはリストラとは違うということが、この実践の過程で表面化してきます。リストラは、短期での財務的成果を上げるのが目的ですが、ODは組織の体質変革です。

体質変革の際にその組織の当事者としてのリーダーは、組織体質をつくっている張本人であるということを理解しておく必要があります。以前のODメディアでも書きましたが、リーダーが今の組織をつくっているのです。リーダーのリーダーシップ・スタイルが重要になってくるのは、組織の変革を実施していこうとする正にその段階です。

チェンジ・エージェントが当該組織のリーダーに関わるときにとても大事なのが、変革のコンテント/課題を合意するだけでなく、それをどのようなやり方で変革していくのかという変革のプロセスについての合意です。変革のプロセスは、リーダーシップの影響をもろに受けます。ここが意外と合意されない、あるいは話し合われないままに変革プロセスがスタートすることが多いものです。

こうなると、当該組織のリーダー・発注者とチェンジ・エージェントはコンフリクトを起こす可能性が高くなります。私の経験からしてもそうです。

 

従って以下のようなテーマについて話し合い、相互の認識の違いを浮き彫りにし、当該組織の変革に必要な考え方とプロセスについて合意しておくことはとても大切です。

・組織をどのようなメタファーで理解しているのか。

・組織運営で大切なことは何だと思っているか。

・組織がどのように変わっていくこと(将来の姿)が必要なのか。

・変革時におけるメンバーとの信頼関係づくりをどのようにしていくべきか。

・変革のコンテント(課題)と変革の進め方(プロセス)をどのように理解しているか。

・リーダーシップで大切なことは何か。リーダーはどのような役割を取るべきか。

・どの程度の時間をかけて変革を進めていこうとしているか。

などです。

このようなことについては変革の実践がスタートしても、度々認識の違いが出てきます。それはどちらのせいというより、お互いの認識のズレなのです。ズレているのですから、お互いにイライラが募る。これはしょうがない、通過儀礼(initiation)みたいなものなのです。じゃ、どうやってこれを乗り越えるか。それは、「手を変え、品を変え」の我慢強い対話しかありません。論理的な問題解決フレームワークなんてないんです。強いて言えば、

・お互いの間で起こっていることを観察し:observe

・内面の自分の理解を問い直し:orient

・次なるコミュニケーションの代替案を検討し:decide

・橋を掛け直してみる:act

というプロセスを繰り返すということになります。疲れますが「こんな状況めったにないよね」と自分に言い聞かせ、インセンティブは自分自身の成長にあると考えやっていくしかありません。もとい、やりましょう👍。

※この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株) 波多江嘉之です