• 成功循環モデルから学ぶ① ~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-194~

成功循環モデルから学ぶ① ~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-194~

~成功循環モデルから学ぶ①~

組織開発(OD)の実践って、どうするの?-194

 

個業化が進む中でも、チームは個人と組織をつなぐ重要な単位です。なぜかといえば、次のような2つの理由からです。

一つ目は、チームは個人の働き方に強く影響を与える単位です。チームの人間関係は職場の規範をつくります。そしてそれは、人々のモチベーションやコミットメントに影響を与えます。

規範(norm)とは、「~である」と記述される事実命題に対し、「~べきである」と記述される命題ないしその体系をいう。哲学で、判断・評価・行為などの基準となるべき原則。などと説明されます。法規範や社会規範がその典型であり、道徳や倫理も規範の一種であるといわれます。社会学においては、人間社会集団におけるルール・慣習のひとつでもあるといわれます。組織開発の文脈の中では、社会学で使われる意味として理解されています。特に、ホーソン実験でそのことが確認され、人間関係論の形成につながります。ホーソン実験については、さまざまな情報源で入手できますのでここでは割愛しますが、人間関係論の重要な仮説を確認します。

  • 物的情況の変化が生産能率にもたらす影響は小さく、むしろ生産能率に大きな影響をもたらすのはメンバーの精神的態度の変化である。
  • メンバーの精神的態度に大きな影響を与えているのは、非公式集団の存在である。

非公式集団とは、公式の取り決めとは関係なくメンバーの関係性の中で出来上がっている集団のこと。

この2つの仮説の②が集団規範という概念で理解されています。つまり、集団(チーム)規範は、メンバーの精神的態度に影響を与えるということです。

二つ目に、チームは組織としてのコア・コンピタンスを創る重要な単位になります。コア・コンピタンス とは、ハメルとプラハラードが提唱した概念であり「顧客に特定の利益をもたらす技術、スキル、ノウハウの集合である」。そして、次の3つの条件「顧客に何らかの利益をもたらす自社能力」「競合相手に真似されにくい自社能力」「複数の商品・市場に推進できる自社能力」を満たす自社能力のことと説明されていますが、経営や組織運営でもっと大切なことは、コア・コンピタンスは何によって生み出されるかです。コア・コンピタンスは、戦略論というよりはナレッジ・マネジメントや組織学習の文脈の中で見るとよく理解できます。下記の図はプラハラードが来日した際に、コア・コンピタンスはどのような要因から成り立つのかを説明した図式です。

 

コア・コンピタンスは、もちろん複数の技術がありその活用から生み出されますが、活用で大切なことが情報の共有であり相互学習です。そのコアとなる単位がチームです。ハメルはチームでの学習を「Learning as a Family」という表現で示しています。そして、チームでの学習がビジネスユニットを横断して組織全体の知恵となっていくと、それが「顧客に何らかの利益をもたらす自社能力」「競合相手に真似されにくい自社能力」「複数の商品・市場に推進できる自社能力」というコア・コンピタンスになるのです。むしろ大切なのは、チーム・組織学習という能力です。

ですから、経営者およびマネジャーやチームリーダーは、仕事の中身そのものに対する深い理解とともに、チームのプロセスを理解し、効果的な学習がなされるような規範作りや、支援・介入を実践するスキルが求められるのです。

以上のような理解に立てば、「成功循環モデル、 MIT:ダニエル・キム教授」は、シンプルですが深い示唆に富んだモデルとして理解することができます。改めて成功循環モデルを見てみましょう。

 

〇印の数字は、集団のGoodサイクルを示しています。これは「互いの関係良好であれば信頼関係をつくり→それが人々の思考をオープンにし→それが仕事に集中した行動を導き→それが高い結果をつくり→ますます良い関係になっていく」というものです。

□の数字は、集団のBadサイクルを示しています。これは「結果が出ないと責任転嫁が起こり→それがメンバーの関係悪化を招き→それはメンバー閉じた思考・内向き思考を生じさせ→それは散漫な行動・無意識な手抜きを生じさせ→ますます悪い結果になっていく」というものです。

このように「成功循環モデル」は、人間関係の質がチームの結果の質に影響を与えるということを説明しています。これは、個人の能力開発と組織開発をどのように関係づけて理解すればよいかについてもいろいろな視点から考えることができます。(続く)

 

この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。