• ポスト・コロナの組織を考える⑥~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-【74】~

ポスト・コロナの組織を考える⑥~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-【74】~

~獲得してきたものを手放す

前回の最後に、「私たちの意思決定や行動は、多くの場合、文化的な産物なのだ」という事に言及しました。組織社会でいえば、私たちはその組織社会の文化に意識的にも無意識的にも縛られています。そのような状態では、「知性・意識」は一定の枠の中に納まることになり、その枠から外れることはおかしいとなります。

例えば日本のハンコ文化。今回のコロナ禍の状況の中で「人と人との接触8割削減」などを実現させるならば、ハンコ文化はマイナスでしかありません。政府もそのことを理解しており、日本の文書主義について回るハンコ文化を撤廃しようという動きもあります。とはいえ、このような従来の文化に対する疑念の表出と真剣な検討は「特殊などうしようもない環境が表れた」から意識化に上り、見直しがなされるのです。普通はなされません。

 

さて、この事例で何を言いたいのかをご理解いただけると思いますが、「知性や意識の発達」は何か新しいものを身につけるだけでなく、持っていたものを手放すということも求められます。特に成人であれば、むしろ手放す方が多いのかもしれません。

ネガティブなイメージで語られる官僚制組織(アンバー)は、それ以前の個人のカリスマや縁故に依存する組織の負の側面を排除するためにつくられた組織です。逆に言えば、それ以前の制度の中で社会のトップにいた人たちは、新しい時代の中では持っていたさまざまな資産を手放していくしかなかったのです。創り上げていくには、当たり前ですが破壊と創造がついて回るという事です。

ポスト・コロナの組織を考える時の思考としては、何を構築していけば良いかの前に、何を手放すべきかを考え明確にしていかなくてはならない理由はここにあります。要するに、私たちがこれまで獲得し、それによって私たちの存在意義やアイデンティティを認識していたものを疑って掛かる必要があるのです。

その為には、私たち自身の認識や意識の発達が求められ、それは取りも直さず「私たちは自分の存在をどこに見出しているのか」を問い直すことでもあるのです。

~依存していることを自覚する

新しい目的と行動に向けてスタートする時に、自覚しなければならないのは「私は誰かに依存している」という事です。私自身もそうです。家庭では、もちろん妻に依存しています。ご飯に始まり、清潔な下着や服を着るとかもそうですし、ゴミ出しもそうです。コロナでの「stay-home」で改めて自覚しました。

これは、今の若いパパは当たり前に自覚していることだろうと思います。近くを散歩すると、公園で小さなお子さんと一緒に遊んでいるパパのなんと多いことか。いやー、私は全くやっていませんでしたね。30代半ばからずっと出張生活で、土日も仕事というのは結構ありましたからね。その当時は脇目も降らずに自分の仕事という狭い世界における認識が私の限界だったんですね。そんな中で「自律しているつもり」になっていたんですね。

という事で現在、じゃ、妻に依存せずに生きていく術を見出さなくてはならないのか、と言えばそうでもありません。私が自分の責任と役割の再定義をし、新しい責任と役割を全うすることで自分自身の在り方(Being)を再認識していくという事が必要です。私の場合は、それは朝の風呂掃除や皿洗いといったことから始まるのですが、そういったことの中に自分の責任や存在を見出していくのです。

じゃそれで何かを獲得しているのかというと、それは凡人の私には未だ???な訳ですが、でも多分、何かを獲得しているという事を考えなくてもいいのではないかとも思うのです。そうではなく、現在の私自身の行いから新しい何か目的を見出していくことができればいいのではないでしょうか。ひょっとしたら、そういう「目的を見出す」という悩ましいことも捨て去った方が良いのかもしれません。

今ここに生きる(here & now)ということは、ひょっとするとそういうことかもしれません。ここらは、自分では、まだ答えが見いだせていないですね。小さなことかも知れませんが、大きな集団であっても同じことが言えるのではないかと思うのですが。

 

息子と話していて息子が「必要な仕事と、そうでない仕事が分かってきたよね」。なんてことを言っていたのですが、息子は広域生協で仕事をしています。近年にない忙しさだそうです。特に食料品の宅配ですね。またその加入申し込みが殺到していて、物流が対応できず断らなくてはならないかもしれない状況だそうです。

私たちの生活は、こういう日々の生活の土台を担う仕事の上に成り立っているわけです。考えてみるまでもなくそうなんですが、以前は十分意識していたわけでもありません。ここでも、私たちは「依存」しているのです。

という当たり前のことを前提にすれば、ポスト・コロナの組織づくりの要は、一人ひとりが自分の責任と役割の再定義をすることが、先ず求められるのではないかと思うのです。そして、その試行錯誤の過程の中で新しい目的を見出していく先に、次の時代の組織の在り方が見えてくるのではないかと思うのです。

稼いでいるからいっちょ前の役割を果たしているんだ、と考えていた以前の私は「バカ」でした。反省((+_+))。

 

※この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株) 波多江嘉之です。