• OD実践とUse of Self~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-【61】~

OD実践とUse of Self~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-【61】~

~ODのスタートはバイアスに気づくことから

対話的ODという概念と文献が出てきたり、より良い組織運営をしていくにはみんなとの間にズレがあることを前提としたうえで対話的関係を築いていくことが大切だ、という主張が出てきたりで、私たちは働き方や組織の在り方を変えていこうとする時に、従来とは異なる視点を学ぶことができるようになりました。

そのような視点から、問題解決のあり様もネガティブな逸脱を排除したり修正したりするだけでなく、今に至る経路を振り返ることで問題を捉え直してみたり、あるいは現状延長線ではない新たな未来を創造し直すことで新しい動きを起こしていくというポジティブなバイアスによる問題解決というアプローチも理解されるようになってきています。

 

でも、最終的には「私が私の行動を変える」という自己決定をして、新たな一歩を踏み出すという実践が行われてこそ世界(自分の身の回り)が変わっていきます。そんな事はみんな分かっているのに、なかなかその新しい行動が始まらない。これが問題なんですね。なんででしょうね。

それは、従来の行動を取り続ける方が自分にとってメリットがあるからです。とはいえ、個人的な安定を求めることが、却って「緩慢な死:Slow Death」を招くことがあります。私たちは変化が必要と感じていても、必ずしも「自分自身が変わること」を選択しないことがあります。結果、失う事が多くなる。トレードオフは人生に付きものです。また、不条理は世の常です。必要なのは、どちらを選択するかという意思決定です。

「船を揺さぶらない」文化では、問題解決の「ヤッタふり」をするがそれは根本的な問題からの回避策でしかありません。私たちは、往々にしてリードする方法ではなく管理する方法に習熟しています。つまり、PDCAマネジメントです。

「深い変化:Deep change」は、自分のメガネ(バイアス)を付け替えることができるかどうかを問うています。それができて初めて、変化を生み出すことができます。

 ~実践が伴って初めてOD

組織開発(OD)の手法は、ほんとに沢山・いろいろありますが、この手法が行きつくところは、Use of Selfです。つまり、変化/変革は「私自身を使って行うもの」であるという認識をみんなが持てるかどうかにかかっているのです。

じゃ、Use of Selfって何?という事ですが、Use of Selfには2つの側面「ペルソナ(persona)とシャドウ(shadow)」があるという事から理解しましょう。ペルソナはSelfと社会の間の妥協の産物として、人生を管理しやすく楽しくする役割。つまり、社会的に仮面をかぶっている私ですね。次に、シャドウは私的なSelfです。それは劣った・恥ずべきSelfかもしれませんが、誰もがそれを持ちます。そして、Self(私自身)はペルソナとシャドウを併せ持つ集合的な現象であり存在です。

そこで、OD実践家の課題はどこにあるのかというと、クライアントに関わり・変化を起こすために自分自身つまりSelfを使用したい人は、常に影のセルフを健康なペルソナに一体化するように、慎重な注意を払う必要があるということです。でないと、クライアントから欺瞞的な私を見透かされてしまいますから。当り前ちゃ当たり前ですね。

つまり、「現実を変えるのは、“私”であり“あなた”である。現実が変わるのは、私の意識と実践から始まる。現実が変わるのは、現実を直視する場でしか起こらない。」という事をよくよく理解し、何のためにより良くなりたいのか、何のために生きているかを問うことが必要なのです。

変革のスタートは「トップダウン」もあれば「ボトムアップ:草の根的に広がっていく」というのもあります。どちらにしても、最後はリーダーシップと組織文化の変革につながらなければその改革は失敗します。このプロセスでは幾つかの山や谷があるのですが、その山谷の中で最も高く深いのが「自分自身が持っているバイアスに気づき、それを修正/拡大/変容する」というプロセスです。

これができて初めて「物事を解釈する枠組み:ナラティブ」が変わります。Use of Selfはまさに、バイアスの変容に対して「私自身が挑戦し変化していく」というものです。お山の上に立って指示するという事ではありません。私自身が実践の中で変化し学び成長していく、そのプロセスが自分の外のシステムに影響を与えていくのです。

 

※この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株) 波多江嘉之です。