• チーム・ビルディング~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-【57】~

チーム・ビルディング~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-【57】~

~チームワークは適材適所だけでは不十分

組織開発(OD)の実践的アプローチに「チーム・ビルディング」があります。有体に言えば、チームワークが良く生産性が高いチームをつくるという事です。チームワークはどのような組織にあっても重視されるテーマです。

ところで、良いチームワークって何でしょう。チェスター・バーナード(1886年~1961年、アメリカ合衆国の電話会社の社長であり経営学者)によれば、以下の3つがある程度の水準以上であることが大切と言っています。

①目的が共有されている:目的共有

②協働して働く意欲がある:協働意欲

③円滑なコミュニケーションが取れている:情報共有

 

チームワークは、昨年の流行語大賞「One Team」のようにポジティブなイメージです。しかし、現実は意外と厄介なことが起こるものです。集団愚考(グループシンク)という研究で立証されているように、チームワークは間違うと同調圧力となり、新しい意見や行動が阻害されることがあります。

チームワークのベースは適材適所ですが、常に変化する環境の中ではチームワークからの逸脱行動が期待されることがあります。チームワークからの逸脱行動とは、計画したプランがうまく機能しない場合、個人が事前計画とは異なる臨機応変な行動を選択し実行することを言います。スポーツチームを見ても、チームの動きについて不確実性の度合いは異なるものです。

例えば、野球やアメリカンフットボールはメンバー相互の役割に関して不確実性の度合いは低く、固定したポジションの中で確実にその役割を果たすことが求められます。逆に、ホッケーやサッカー、バスケットボール、ラグビーは、個々の役割は決まってはいるが柔軟性がより求められるスポーツであり不確実性が高いといえます。となると、チーム・ビルディングは、最初にどのように協働すべきかがメンバーに理解されておく必要があると同時に、不確実な状況になった場合如何に個々人の自主的判断で行動するかが重要になってきます。

ラグビーでは「un-structureな状態」というようですが、これに対処する練習をせずに単に役割のみを決めて、チームのパフォーマンスを上げようとしても多くの場合頓挫します。ジョセフHCは、この「un-structureな状態」をわざと作り(作戦としてはキックをより多く使う)、その中から新しい機会を創り出していくことを重視していたそうです。このような場合、「un-structureな状態」を定型化できないわけですから、プレーヤーに自主判断で動く主体性が求められます。

ラグビーJapanでは、合宿で多くのリーダーを指名し、選手同士が本音で語り合い、自分たちで実践方法を確立していくプロセスをとても重視していたようです。

 

~真実を語れるチーム

皆さんの中には、チーム活動に対して何か言いたくても言えないという経験をした方はたくさんいらっしゃると思います。「そんな目標で良いの?」とか、「それって俺がやるの?」とか。でも、ここで言うと「角が立つしな」とか、「それって自分勝手じゃない」とか言われそう、ということで黙っておくことってよくある話です。でも、これを放置しておくと何時か感情が爆発し、チームがガタガタになるという、そんな経験もあるでしょう。

チームワークにおいて適材適所という考え方でチームを運営することは、チーム活動の最初のうちは効率的です。しかし、誰かに不安や恐れがありそれを表明できないとどうなるでしょう。チームは柔軟性がなくなりチームの力は弱くなっていきます。

チームワークを良くする仮説に「一人ひとりが、なぜそのような態度や行動を取ってしまうのか、ということに対する気づきを高めれば、問題はみんなで協働して解決するものになる」というものがあります。これはヒューマン・エレメント理論で有名なW.シュッツによるものです。彼は、オープンネスという言葉でそれを語っています。

オープンネスとは、

①チームのメンバーが、個人的に脅威を感じていても、お互いにそれを認めることが出来るほど、オープンになっている。

②チーム全体に、それらの感情を認める気持ちがある。

状態のことです。これにより結果として、個々人がプラスの逸脱行動を選択できるというものです。真実を語れるチームは高いパフォーマンスを発揮します。それはチームでやっていることに対して後ろめたさがないし、疑問が解消しているからです。

つまり、良いチームワークはオープンネスが発揮されているチーム状態です。このようなチームはレジリエンスも高くなります。

 

 

この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。