• アクションラーニングの実践②~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-㊻~

アクションラーニングの実践②~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-㊻~

~チームでする振り返り

前回、職場を「学習機会を生み出す場」として捉えることが大切だと言いましたが、このような職場にしていくことを私たちは職場開発と呼んでいます。職場開発の実践的なやり方がアクションラーニングです。

いずれにしてもポイントは「内省的な振り返り:省察」、「確認する」ということです。これをチームとしてやれるかという事ですが、これが意外と難しい。結論から言えば「信頼関係」が成り立っていないと集団としての「省察、確認」はできない。

なぜかって? それは「こんなこと言っても良いのかな」とか「そこまで自分の不安を言い出すのは後々みんなからのけ者にされるのでは」とか、いろいろな不安や懸念を私たちは持っているからです。だから、「沈黙は金なり」とばかりに黙ってしまう。また、人には認知バイアスがありますから「あの時は~~でしたよね」という事実確認でも、「いや、そうじゃないよね」と個人的な見方が先行した話になってしまいます。そして下手すると上位職者から「君ももう少し我社のやり方を学んだ方がいいね」とか言われる。

そのため、A.エドモンドソンが提唱するような「心理的安全性」をつくることが重要になるという事になるのですが、職場リーダーがその重要性をしっかり認識していないと中々うまくいかないですね。つまり、「気づき」や「自己理解」といったことについて深く理解していないと職場が学習の機会となる事はありません。

「お前な、気づきや自己理解なんてもんは研修でやってこい。ここは仕事をする場だ。もうちょっと効率的に仕事をやれ」と真逆なことを言われるのが落ちです。こんな上司こそ「気づき」や「自己理解」が欲しいのですけどね。

 ~振り返りを腹落ちさせる体験学習

そこで、これをカバーし「気づきや自己理解」の重要性を短時間に体験的に腹落ちさせるトレーニングが「チームで実施する体験学習」です。

誤解を恐れずに言えば「構造化されたトレーニング・グループ」です。今だと「Activity」として知られていることが多いのかと思います。チームでのゲーム方式なども含みますが「やってみて」それを即その場で振り返り、一般化して次の「Activity」に挑戦するという研修方式です。このActivityの大切なところは、チームにトレーナーが必ず1名は付いて「内省的な振り返り:省察」、「確認する」というプロセスを支援することです。これがあって気づきを得ることができます。そうすると「なるほど」と合点がいくのです。

そして、このEIAGのプロセスを何回も回すと、参加者同士が遠慮なくフィードバックをするようになり気づきも深くなります。また、それを繰り返していくことで一人ひとりが「自分の思考と行動のパターン」に対する気づきを深め、従って変容もし易くなるのです。

このような体験学習プロセスを体験した後で、自分の仕事にコルブやEIAGモデルを持ち込んで学習プロセスを組み立てる、というのが効果的な経験学習の学び方です。

ただ難点は、ある程度の参加者人数が必要(人数が少ないとダイナミックスが起きない)、講師も多数入るので結構予算もかかる、実習できる広い会場が必要というものがあります。とはいえ、最近の企業ニーズであるダイバーシティやバイアスに気づく、など人間関係や価値観の変容などを目的とした教育では大変に効果がある研修になります。

~実際のチームへの働きかけ

こういった基礎研修を体験した後に、実際のチームへ働きかけをしていくとそれはとても効果的な働きかけになります。一般にはそれは「コンサルテーション」と呼ばれる関わり方です。クライアント側からすれば、第三者のチェンジ・エージェントを活用し組織やチームの何らかの問題を解決しようとするものです。

このようなアクションラーニングは、「ラーニング:学習」という言葉が入っているように、対象職場・組織のメンバーが「自分たち自身で、自分たちの問題を認識定義し、自分たち自身で問題解決していく力」を高めることが目的です。つまり、「クライアントの、クライアントによる、クライアントのための問題解決」ができることが大切なのです。

もちろん、組織やチームが掲げる目標を達成することは必要なのですが(クライアント側からしてみればこれができなきゃお金を払っている意味がない)、大切なポイントは「自律的な問題解決と目標達成」というプロセスであり、その中で組織やチームが従来とは異なる「思考と行動」を学習し身につけることです。そして、そのプロセスをクライアント自身が一般化(概念化による理解)して、他の問題解決に適応できることが重要なのです。これが出来て初めて組織開発(OD)をやったといえます。

 

  • この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。