• あらためてエントリーの重要性を考える~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-㊳~

あらためてエントリーの重要性を考える~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-㊳~

~承認プロセスは大事です

組織開発(OD)の手法はいろいろと開発されていますが、組織開発(OD)の実践でもっとも大切なことが、トップマネジメントの承認というプロセスです。このエントリーの段階は、「政治的なプロセス」と位置付けることができます。要するに、どのようなプロセスを経て、「じゃ、わが社でぜひやろう」と承認をするあるいは得るのかです。組織開発(OD)は、通常は会社全体の効果性向上を目指した取り組みですから、最終承認が誰かは「トップマネジメント:社長」です。

また、最終承認を得るまでには多分「組織開発? OD? それ何?」とか、「また訳が分からんものを持ち込んで」とか、いろいろな反対や壁、じゃまがあるでしょう。

また、組織開発(OD)には当然お金もかかりますし、様々な利害関係者が集まって話し合うという場と時間も必要です。このようなことに対するスポンサーまたはリーダーが必要なわけで、草の根運動をすれば組織が良くなるとか、変革が起こるという訳ではありません。従って、組織開発(OD)はある意味トップダウンです。

ここでいうトップダウンとは、トップがすべて決めてその通りやれというような意味ではなく、トップが組織開発(OD)を実践することにコミットメントするという意味です。これがないと組織開発(OD)はうまくいきません。なぜかというと、組織開発(OD)が成功したかどうかは、結局のところその組織の文化(行動様式、その根底にあるものの見方や考え方)が変わるかどうかにかかっているからです。そして、この組織文化に大きな影響を与えるのが組織のリーダーであるトップマネジメントの考え方と行動です。

 

組織開発(OD)に取り組む場合、そのきっかけは大きく分けると2つです。一つは、外部からの働きかけ。もう一つは、内部から専門家に依頼をするというものです。

外部からの働きかけとは、つまりコンサルタント会社の営業による売り込みとか、株主サイドからの提案などです。これって、意外と馬鹿にできないのですよ。昔々の言い方になりますが「黒船」を利用するというやり方です。内部からの依頼とは、トップやトップに近い部署がどこかで「組織開発?OD?」と聞いてきて、役に立ちそうということで始まります。

どちらの場合も、最初に「声を上げる人」が必要なわけで、この人が対象組織の現状をどのように認識して、周囲にどのような働きかけをするかは「ものすごく」大切です。

そして組織開発(OD)をスタートさせるには、「わが社の場合どのような目的と進め方をすればよいか」という企画あるいは計画がとても重要であり、出来合いのプログラムをもってきてとか、外部の専門家だから何をどうやれば良いか提案して、というようなスタンスではまず成功しません。日本の企業の場合、このスタンスが多すぎます。

そして、ある程度情報を出すとコンペ企画です。私はこれを「お手軽組織開発(OD)」と呼んでいますが、お手軽組織開発(OD)では何も変革が起こらないでしょう。新しいことをやろうとしているにもかかわらず、企画は出来合いの企画を評価し、かつそれを古い袋(パラダイム)の中に入れ込んでしまっています。

いずれにしても、エントリーにこぎつけるまでは紆余曲折があり一筋縄ではいきません。組織開発(OD)をやってみたいと考える人は、ここで挫折しないことです。

~事前計画(シナリオ)の大切さ

さて、具体的なエントリーは各社の事情によりさまざまです。ある会社では、ご担当者が組織開発(OD)の考え方と手法を紹介するセミナーに出席され、その後トップを含む役員/部長全員に対する「組織開発マネジメントセミナー」から始めました。初めて訪問してから、エントリー研修に当たる役員/部長セミナーまで約半年でした。ご担当者の社内根回しもうまくいったのでしょう。非常にスムースに事が運んだケースです。

また、組織開発(OD)が始まると最初の計画通りに進んでいかないことがほとんどです。つまり、組織開発(OD)は「人を相手にした意識や行動の変容、関係性の再構築、そして延いては仕事の仕方の変革、つまり組織文化を変える」ということを実施していきます。最初の介入(組織開発では、何らかの手段を講じることを介入と言います)で、何か変化が起これば、それは当初計画の視野に入っていない問題を引き起こすことがあります。従って、「計画的な日和見主義(デービッド・ナドラー)」が求められます。

 

最近では、最初に組織開発(OD)を企画し計画を練り上げる「コア・チーム」を立ち上げ、その人たちの議論を先行させ、内部の「チェンジ・エージェント」を育成し組織開発(OD)の実践に臨むという会社も増えてきました。組織開発(OD)を一過性のものにせず持続させるには適切な取り組み方法であると言えます。計画的な日和見主義とはいえ、やはりODシナリオを持つことは大切なんですね。

組織開発(OD)を企画し計画を練り上げるということについてもう少し言及すると、これには「何を変えるのか」という事と「どのように変えるのか」という2つが含まれます。組織開発(OD)が組織を深く探求していくことであり、単なる変革とは異なるという考えもあるでしょうが、会社が組織開発(OD)的アプローチを取り入れてみようというのは、従来の問題解決手法では解決できなかった問題・テーマを解決しようとすることであり、それには必ず「What:変革のテーマ」と「How:変革がどのように実施されるのか」という事についてプランニングしていく必要があります。

特に、Howはとても大切です。スタート時点で考えておきたいポイントは以下の3点です。

      誰をどのように巻き込むか

組織は多かれ少なかれ「人々の力関係」で動いています。これを無視した実践は頓挫します。

      個人の不安にどのように対処するか

組織開発(OD)という、現場から見ると「訳が分からない難解な取り組み」では、先々が十分に見えないことが多いものです。従って、最初から「賛成」という人ばかりではないという事を念頭に置く必要があります。因みに、不安を最小限に抑え、現在の問題の原因を解決するのではなく、希望する未来に向かって前向きな行動を促進するのがポジティブ・アプローチです。このようなアプローチは「問題が解決される(原因を取り除く)」のではなく「問題が解消されていく(現状と原因の関係が変わる)」という認識になります。

      変革時の混乱を如何に最小限にするか

組織開発(OD)の実践は、つまりは従来の考え方ややり方を変えることです。となると大きいか小さいかは別にして、オペレーションに混乱は付きものです。従業員の退職もあります。

何がどのように変わっていこうとしているのかという情報は常に共有しておくことが大切です。

 

この3つの問題について、事前にすべて対処できる計画を立てることは無理ですが、少なくとも「どうなるだろうかというシナリオ」は検討しておくべきです。転ばぬ先の杖ですね。

 

      この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。