• 自分事で仕事をする人~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-㉙~

自分事で仕事をする人~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-㉙~

~自分事はどこでも関心が高い~

以前弊社の竹本が、米国AMAI社(JoyBizのパートナー企業でテキサスが本社)のマーク社長にインタビューした際に、米国でもエンゲージメントが問題になっている企業が多いという話がありました。洋の東西を問わずエンゲージメントはやはり関心が高いのですね。(ODメディア2018年7月30日の記事)

※     因みに、日本における従業員エンゲージメントは各国に比べ低いといわれていますが、さまざまな要因の違いがあり、単純比較はできないのではないかとも感じています。とは言え、日本企業はどちらかといえばハーツバーグが言うところの「衛生維持要因」への対策が多く、「促進要因」への対策が少ないのかもしれません。統計的なデータがないので私の経験的な受け止め方ですが。

マーク氏も「エンゲージメントが高くなると責任意識も高くなり、問題解決力が高まり、結果として業績もよくなる」と言っていますが、それって要は「仕事が自分事になる」という事でしょうね。「自分事:ジブンゴト」という感覚がとても重要という事です。そりゃそうですよね「他人事」では打ち込み度合いが高まりませんから。多分、「仕事が自分事である人間が沢山いる組織」がティール型組織でしょうね。

「自分事」をググると927,000、「ジブンゴト」で665,000件の検索結果が出てきました。上位には「自分を知る」という検索項目もあり、ちょっと違うかなと思いつつも、意外と関心が高いテーマなんだと改めて思いました。そのようなエンゲージメント(16,600,000件検索)ですが、組織開発(OD)のテーマに取り上げられることも多いですね。

エンゲージメントを高める方法としては、調べてみると、『エンゲージメントを高めるには、個人の仕事の志向性に沿った環境や機会の提供を行う必要があります。そして、多様性や価値観を共有・評価し、自分たちが何をしたいか、どうなりたいかを対話することが、エンゲージメントの高い組織を実現する上で非常に重要です。』とありますが、このようなことが概ね一般的な理解でしょう。

私的には、「個人の仕事の志向性に沿った環境や機会の提供」について、程度の差はあれ個人の仕事の志向性に沿った環境というのをすべての従業員分デザインするのは難しいと思ってしまうんですけどね。なんか観念的だなと。

そこで、今回のテーマである「自分事で仕事をする人」に満ち満ちた組織をつくるにはどうするかという事ですが。私の体験を振り返ってみたいと思います。

~自分事で仕事をするとはどういうことか~

私、キャリアの中で「管理された」という認識があまりないのです(自分の性格や志向性がそのような認識をさせるのかもしれませんが)。キャリアの最初はとあるコンサルティング・教育会社に入社ですから、オーナーではありません。でも、かなり自由にやってましたね。

入社当時、トップからは、「会社に貢献しますって、おこがましいことをぬかすな。君たちは食客だ。要するに無駄飯食い。ちょっと遊んでろ。遊んでいたって我社はなんも困らん」てなことを言われましたね。新人ですから貢献できる能力がないのは当然ですが、率直に言われると驚愕ですね。面白い会社だなと思いました。

また、会社の経営的に必要な売上目標とは別に営業部員が個々に目標を立て、それを営業所ごとに合算して全合計すると、会社の目標より高くなるんですね。で、概ね会社目標は達成される。因みに、個人目標は「年収いくらにしたい?」という尺度が最初にあり、それが目標設定の基準になる。そして、個人の目標を達成しようといろいろ工夫する。

工夫している過程で当然マーケットや顧客、プロダクトの勉強をしなくてはならない。もちろん一人では目標達成できないので、先輩やコンサルタントの力を借りる。その過程で濃密な人間関係が出来る。

人材マネジメントでは「我がままと、他がまま」を認めるという考え方がその会社にはあり、今でも私の大切な考えの一つになっています。これは、「一人ひとりは違うのよ」という事ですし、「人を自分の好みに染めるな」という事でもあります。

情報共有も、「上だけが知っているのじゃダメ、みんなが知っているように伝えろ。でも、知らないのは聞こうとしない奴も悪い」そんな考えも好きでしたね。なんでも上のせいにするなという事です。上司も人間です。要するに、仕事を自分事にしていかなくては面白くない環境があったんですね。

全社で統制するという類の課題は、もちろんありました。できないと先輩からどやされました。でも、何やかやあっても、自己責任で自由にやれるというのは私の性には合っていました。そんな環境で私はキャリアを積み重ね、今はJoyBizの会長をやっているという具合です。

こんな風に書くと、なんとなく、自分をひけらかしているようで嫌なのですが次のことを言いたいので自分のことを書いています。それは、万人に合うエンゲージメントや組織開発(OD)はないよ、ということです。キャリアの最初の会社は、その後成長しましたし、私もとても学習でき経済的にも潤いました。でも、入社7~8割の人は退職しています。私の一期後の入社組は全滅しました。

コンサルタントという仕事は、忙しいか暇かのどちらかです。ちょうどいいは一瞬です。また、コンサルタントは「出張」が常です。それが無理な人もいます。だから「個人の仕事の志向性に沿った環境や機会の提供」って、私的には???なわけです。E.シャインのキャリアアンカーも8つあるんです。8つのアンカーに沿った仕事環境を1つの組織で実現することは不可能です。混乱すること必至です。例えば、保障・安定アンカーの人にとって、起業家アンカーの人が好む環境は合っているのでしょうか?

なんてことを言うと「個人は尊重しないの?」という反論を受けそうですが、個人は尊重しないといけません。個が活きる組織が最高です。私、スマントラ・ゴシャールのファンです。ですが、個にも選ぶ権利があるように、組織にも個を選ぶ権利があると思うのです。別の言い方をすれば、「組織は特定個人に依存しない組織づくりに努力する。個人は組織にとってかけがえのない個人になろうと努力する」このせめぎあい(攻防)が、「個人が活き、活力のある集団になる」のではないか、と思うのです。

言っときますけど、組織にセーフティネットが要らないなんてことを言っているのではありません。敗者復活はあるし、一旦退社した人が戻りたいといったら戻せばいいのです(もう一度頑張るという意思表明はもちろん必要です)。

「自分事」で仕事をするという事は、そういう事ではないかと思うのです。ODは観念論ではなく、実践論です。ですから、自分事で仕事をする人々の集まり≒エンゲージメントが高い会社を創造していくということも、組織論として実践できるかどうか、はとても大事な視点です。かといって、今の自分に役に立つだけでは、視野狭窄です。未来にわたり、持続的な学習と成長に寄与するのかという視点で考える必要があります。それも教示的ではなく。

今や悪者扱いされる「官僚制組織」も、かつては個人の恣意的な組織運営からの脱却を目指した理念が生んだ組織形態です。

 

「自分事:ジブンゴトで仕事をしていく」って、難しいね。行き過ぎると「自分勝手」と見られ兼ねないしね。このテーマ、まだまだ続きます。

 

※      この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。