モメンタムをマネジメントする:燃焼編③ ソモサン第286回

マルチタスクとは「同時に多くの仕事を重ねて行う」ことです。タイパ(時間対生産性)と称される今日、時間が持つ生産性が尊ばれてファスト・ライフが中心の日々になってきました。でもマルチとは言っていますが、脳科学的には脳の処理作業がマルチになることはありません。一見マルチのようには映りますが、

実際はシングルタスクを瞬時に入れ替えながら作業している

のです。

タスク処理で処理エネルギーを使うのは皆さんにもご想像が付くと思います。でも実際にはこのタスク切り替え時にも同じくらいの処理エネルギーを費やすと言うことは想像し難い事実です。つまり

マルチタスクとは一つのタスク処理から次のタスク処理に向けて2倍の処理エネルギーを使う理屈になるのです

そこで皆さんにクイズです。このマルチタスク、日常で最も為されている状態を皆さん思い浮かびますか。

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

そうそれは

「スマホいじり」

です。スマホはマルチタスクをデジタルで操作する作業そのものです。しかも電車などで観察する限り、皆さん頻繁に画面を切り替えて見ています。ゲーム、動画、メール、凄まじい限りです。この激しい切り替え。相当のストレスとなり、脳は疲れ果ててしまいます。それが好みに対する集中と興奮によって一見相殺されたようになって気がつかない心理状態になっているのですが、実際には激しい切り替えによって脳はかなり疲れ果ててしまっているのが現実なのです。

実は脳がストレスフルになると脳内物質であるコルチゾールが増えて脳にダメージが起きるということも分かっています。

コルチゾールが増えると神経細胞がどんどんと死んでいきます。

認知症などの脳障害の元凶になっていくのです。とても怖い話です。

ではストレスを蓄積させないためにはどうすれば良いのか。簡単です。

短い時間だけでもスマホの操作を控える、

ということです。タイマーなどで仕事の時間を区切って確実に脳に休憩を与える

(30分働いて5分休む)

といった方法がかなり有効になります。本を読んでいただいた皆さんは、気づかれましたか?

書籍にある「スマホを置いて、、、」というワークのアプローチにはこういった科学的な背景があるのです。

モメンタム・マネジメントとはこういった行動に対する演出的な関わりをするのも一つになってきます。チームに対して敢えてそういった時間をさりげなく作り出すと言った具合です。

それではモメンタムアップのためのマネジメントアプローチ、「対話」について話を切り替えて行きましょう。

対話のコツは、何よりも

「相手の言葉に耳を傾けて、感情を心で受け止めて聴くこと」

が原則になります。

中でもモメンタムの火種を焚き付ける聴き方について、そのポイントとして心掛けるのは、モメンタムが低い状態の人が持ちがちな視点を変える様に対話を誘導することです。何よりも相手と感情の起伏を同時化して、相手と気持ちの波を合わせなければ、人の胸襟は開きません。

それには次の3つのアプローチが必要になってきます。それは、

①合いの手を入れて話しやすい雰囲気を作る

②相手の話を引き出す話し方をする

③相手とは別の視点で質問する

です。まずは雰囲気を作ることです。それには、

①明るく、アップテンポで話すこと

②相手の呼吸や息遣いに合わせること

がコツになります。そして相手の話すトーンに合わせながら内容も抑揚も徐々に上げていきます。

相手の話を聴く時は、

①広く聴く。口を挟まずに、相手の話に耳を傾けることです。

②深く聴く。話のポイントを理解して、問題の背景に何があるのか見極めながら耳を傾けることです。

それによって徐々に思考の方も共振させて行きます。とにかく入り口は「合わせる」です。

そうして徐々に話のポイントを理解して「要するに何々なんだね」と相手に伝えて行きます。

「要するに」と言えるまでは根気よく積極的に質問し、分かろうとしなければ、心の内には入っていけません。

「私的にはこの様に理解したよと手短かに伝えれるところまで行けば、その後は、

③温かく聴く、

ということになります。それは、問題解決の糸口となる様な視点や考え方を相手と一緒に考える、ということです。一体感を与え、孤独感を排することで感情の勢いが起きてきます。

感情の勢いづけができたら、それに乗っかって思考の勢いづけをします。

具体的には、

提案や質問の形で違った思考を投げかけながら、認知の切り替えや勇気づけ

を行います。

「何々してみたらどうかな?」「こう考えてみたらどうかな」といった塩梅で、思考をポジティブに方向づけして行きます。

この時、「何々すべきだ」は絶対に言わないことです。それはマネジャー側の価値観です。これをすると上手くいった場合は、以後は依存的になりますし、上手くいかなかった場合、他責になってかえって自己嫌悪に陥って裏目になります。あくまでも選択肢は当事者です。できるのは寄り添った上での違った視点の提供とアイデアの提供です。

人にとって最もモメンタムが高くなるのは

「自己選択し、自己決定し、自己責任を感じた」心

の時です。

マネジャーの大多数は、責任感故なのか、権威意識なのか、自己存在への不安なのか、とにかく「自分が思っていたことばかり言っている」人ばかりです。そして「言いたくて言いたくて仕方ない、相手の話を聞かない」人ばかりです。更には「感情が前に出で、バイアスをかけてやり取りする」人を至る所で見かけます。これではモメンタム・マネジメントは叶いません。

モメンタムは感情と思いの複合した「覇気」とか「気合い」のようなものです。まずは感情を着火しなければ始まりません。そして思いを持続するように燃焼させなければなりません。両者は二つで一つですし、順番も大事です。情熱をたぎらせて、ポジティブに向かって行動を惹起させる。それを演出するのがマネジメントの要諦であり、真のマネジャーの仕事です。皆さんもしっかりと原点に回帰して頑張ってください。

今の日本の企業で欲しいのは前向きからくる創造性とイノベーションを起こす行動です。

それがない限り円高は望めません。皆さん、早く悪循環から脱却しましょう。

それでは次回もよろしくお願い申し上げます。

 

さて皆さんは「ソモサン」?