• 気持ちに火を点けたら、今度は思いに火を点けよう。動き出そう。諦めず続けよう。~クールモメンタムの作動~ ソモサン第256回

気持ちに火を点けたら、今度は思いに火を点けよう。動き出そう。諦めず続けよう。~クールモメンタムの作動~ ソモサン第256回

世界で高まるモメンタムアップへの関心

皆さんおはようございます。

先週大変ユニークな研究の内容がネットニュースに掲載されました。「史上最も気分がアガる曲とは」。オランダ・フローニンゲン大学のヤコブ・ヨリイ博士と云う方が、イギリスの大衆家電メーカーが販売する音楽再生機のユーザーに対して実施した「気分の上がる曲」アンケートに寄せられた膨大な数の楽曲データの解析によって「音楽と高揚感の関係を法則化してほしい」という同社の相談を受けて、「人々の気分を高める音楽の、その謎に満ちた構造」を解き明かそうと取り組まれたのだそうです。そして彼は音楽によってもたらされる高揚感を計るための方法を考案し、音楽史上最高に気分の高まる10曲のプレイリストを完成させたらしいのです。ヨリイ博士によれば、曲のテンポやコード進行などさまざまな要素から高揚感を測定するアルゴリズムを考案した結果、テンポが140bpm以上であることに加え、メジャーコードが多用されているという2つが主な要因であることが浮かび上がったということです。そこにヨリイ博士は第3の変数として、歌詞の内容を加えて答えを導いたのだそうです。

アンケート結果として寄せられた曲を調べてみると、「特に明確なメッセージを持たない歌詞や、海へ出掛けたりパーティをしたりといったポジティブで楽しげな内容の歌詞が多いことが判明した」とのことで、その調査結果によると、音楽史上最も“高揚感のある曲”トップ10の第1位に輝いたのは、クイーンの「ドント・ストップ・ミー・ナウ(Don’t Stop Me Now)」だったそうです。因みに2005年には英BBCの人気自動車番組「トップ・ギア(Top Gear)」もこの曲を「ベスト・ドライビング・ソング」に選んでいるそうです。10曲の全容は、

  1. 「ドント・ストップ・ミー・ナウ(Don’t Stop Me Now)」クイーン
  2. 「ダンシング・クイーン(Dancing Queen)」/アバ
  3. 「アップタウン・ガール(Uptown Girl)」/ビリー・ジョエル
  4. 「アイ・オブ・ザ・タイガー(Eye of the Tiger)」/サバイバー
  5. 「アイム・ア・ビリーバー(I’m a Believer)」/モンキーズ
  6. 「ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン(Girls Just Want to Have Fun)」/シンディ・ローパー
  7. 「リヴィン・オン・ア・プレイヤー(Livin’ On a Prayer)」/ボン・ジョヴィ
  8. 「ウォーキング・オン・サンシャイン(Walking On Sunshine)」/カトリーナ・アンド・ザ・ウェイヴス
  9. 「恋のサバイバル(I Will Survive)」/グロリア・ゲイナー
  10. 「グッド・ヴァイブレーション(Good Vibrations)」/ザ・ビーチ・ボーイズ

だそうです。ロック愛好者の私としても非常に得心するところです。カトリーナ・アンド・ザ・ウェイヴス以外は全部持っています(笑)。

今回の法則は、科学的な正当性が十分でないということは当然で、これは博士自身も認めていることです。正当な手順を踏むためには、やはり研究論文の発表や、そのために用いられたアルゴリズムについて、客観的かつ学術的に検証を推し進め、そして認められる必要があるのは間違いないところです。でも世界中がこのようなモメンタムに関わることに強い関心を持っているという事実は特筆すべき話題だと云えるでしょう。人は世界共通で、常に「気分を盛り上げたい」「リッチモメンタムな状態でいたい」と望む存在なのです。

ここで云うところのテンポが140bpm以上とは、1分間に140回のリズムを刻む回数で、1分間の心拍数とも云えます。 概ねランニングでは1分間に140歩走る歩数になります。皆さんもBPMという用語は運動の際に耳にしたことがあるかもしれませんね。この数値は人がジョギングをしている時の心拍数に近い値と云えます。ジョギングをしている人ならば想像できるかも知れませんが、精神的に最もリラックスする状態とも云えます。メジャーコードと云うのも心を高揚させる「陽」のコード進行です。何れもホットモメンタムを活性させる方法論と一致する内容です。

ホットモメンタムを発動させるには、ワクワクやドキドキによって心臓を活性的に動かすのが効果的ということです。ワクワクドキドキと云うのは、ハラハラドキドキと通じています。ですからスリラーやホラーなどの怖い動画を見てドキドキするのもホットモメンタムを作動させる一方法と云えます。確かにこういったジャンルを好む人が一定数いらっしゃるのも頷けるところです。

クールモメンタムは、人生における目的を考えることから

では今回の主題であるクールモメンタムに話題を振っていくことに致しましょう。ここで云うところのクールとは、「冷たい」と云う意味ではなく、欧米で使うところの「冷静な」つまりは「思考的な」という理性面を指します。クールモメンタムとは「思いを勢いづける」、例えば「目的への拘り」や「使命感」「信念」のような想念を活性させるということです。

前回話しましたが、人にとって「意味」は「動機」の原動力です。「意味」は「理由」であり「必要性」を示すものです。人は意味を思うことから、行動を正当化し、納得をもって自らの行動を動機づけます。意味合いや意味付けは無意識的で時に衝動的な気持ちを意識的な思いに繋げ、瞬間的なやる気を持続的な動機に繋げる役割を担っています。人は「意味」を持って生きる存在と云えます。対人関係もそれをどう意味づけるかは要となるアプローチです。

さてではこの「意味」における「理由」や「必要性」とは何を根源として想起されるのでしょうか。まさに「何のために」の「何」とは何でしょうか。そこにあるのが「目的」です。「目的」とは「「成し遂げようとすること」であり、「それが満たされたときに得られる見返り」を意味づけたものです。人を動機づける根源は「欲」です。欲とは「心を満たすもの」です。その欲が充足された状態を成し遂げる到達点として、それに向けて自らの行動を方向付ける想念が「目的」です。そしてそれを納得する理屈に落とし込んだ想念が「意味」です。ですから目的のない方向付けはあり得ませんし、目的のない活動では努力も無意味なものになってしまします。当然そこに動機が生じる筈もありません。つまり「思いとしての動機」を喚起させるにおいて「目的」という概念は必要不可欠な存在と云うことになります。

しかし目的はその根底に働く「欲」の在り様によって方向性においてもその持続性においても大きな違いが生じてきます。人は社会的存在としてその社会を持続していくための秩序に従った目的の方向付けを求められます。例えば「相互扶助」の考えを重視し、「利他」の精神を人に共通なポジティブな目的として時代を超えて基調にしています。禅の考えなどもそれが基本になっています。ですからそういった思想観を逸脱した欲望や目的は「我欲」として忌諱され、様々な圧力が掛けられます。このような社会との関係を無視、軽視した目的や意味づけは勢いや持続性において強くマイナス的な影響を受けることになります。

だからこそクールモメンタムを考えるにあたり、動機づけの元となる「目的」や「意味合い」をより勢いだったもので持続性の高いものにするには、単なる言語力や語彙力や論理立ての力ではなく、教養を持ったそれでないとならないということを看過してはいけません。私はそれを「人間性に対する知性」と称してます。

人間性とは教養のことを云います。教養とは「教え」を「養う」ことです。「教え」とは人間が社会的存在として歴史を営んで来る中で身に着けた様々な秩序や道徳、法や約束事です。「正しい」「間違い」ではなく、共有し握り合った申し合わせです。これに並立するのが「科学性」です。科学とは「理科学」を云います。理科学は自然科学を基軸にして実験や観測を元に、一定方向の方法論に即して得られる定量的結果を「学ぶ」ことです。

現代は国の教育指針の歪みから「科学性」に偏重した思考の人材が溢れ返り、社会に教養の欠落が生じ始めています。昨今ではジャニーズ問題などが顕著な例で、性犯罪を犯した経営者が、それを糧に作った会社であるにもかかわらず、平気でそれを維持させようと動いたり、「社会の木鐸」と云われた報道がそれを容認するといった海外から見れば実に恥ずべき動きを平然としている、まさに教養が欠落した風景が挙げられます。

このような想念が罷り通るような前提での「目的」や「意味合い」によって作られた「思い」はまさに亡国の極みであり、これが持続的なクールモメンタムの火種であっては問題です。クールモメンタムの火種足る目的や意味合いは、しっかりとした教養の土台の上に紡ぎ出された中身であることが望まれます。

ところで、クールモメンタムの火種となる「目的」や「意味合い」を内在する「思い」のことを一般には物理学用語を用いて「ポテンシャル」ということがあります。

物理学では「位置エネルギー」を指します。この位置エネルギーですが、公式では重力と高さと重さの相乗性で成り立っていると定義されています。これを心的なエネルギーやモメンタムの世界に当てはめると、重さが教養の度合い、高さが経験の長さ、そして重力(定数)が掛かる逆境への抵抗力と云うことになります。このことは位置エネルギーを高める、つまり心的なエネルギーを高めるには、教養を高め、経験値を積み、そして逆境への耐久力を身に付けることに尽きるということになります。

クールモメンタムを上げる方法論

ではクールモメンタムを効果的に発動させる方法について考えてみましょう。クールモメンタムは「目的」を持った「思い」に火を点ける作用です。火を点けるには具体的な着火点が必要になってきます。「目的」に対しては「目標」になります。目的が「成し遂げようとすること」であるならば、目標のほうは(その)目的を達成するために設けた「めあて」のということになります。例えば、目的を「自他ともに幸福になるような人生をまっとうする」としたとしましょう。その為に、まずその目的を実現できる道筋についていろいろ調べ、人に親切にしてそれを積み重ねれば自他ともに幸福になれるということを軸にして、「少なくとも1週間に1回は人に親切にする」とか「1日に1回、その日出会った人に親切にする」という「めあて」を設定すれば、それが「目標」ということになります。更によりその目的を達成するのに適した職業につくことが目的の度合いが高まると考え、その目的を実現するために「6年以内に自分は看護師になる」という「めあて」を設ければ、そのめあてが「目標」になります。

更に「6年以内に看護師になる」という目標を分解して、「2年後に看護師学校の試験に合格し入学する」という目標や「3カ月後までにこのテキストの学習を終える」という目標や「毎日2ページかそれ以上学習する」という目標、「今日は時間があるので4ページ学習する」などという目標を設定することもできます。

一般には、最初に良い目的を設定し、目的を達成した状態をただ漠然と夢見るだけでなく、それを実現するためにはどのような道があるのか知恵を働かせ、その目的を達成するための道を具体的に思い描き、途中に「めあて=目標」、つまり達成できたかできなかったか自分で判定できるような形で表現したことを設け、それらの目標を達成すべく、日々やるべきことをコツコツとやってゆけば、やがては目的としていることを成し遂げることができる、といったことが流れとされています。しかし多様化し目まぐるしく世相が変化する現代では、自分の今の力で出来る小さな「めあて」を目的として、それをまず「しるべ化」して目標に置き換え、日々それを追っかけながら、身に付いた力に応じて次の段階での「めあて」を考え、徐々に目的を大きくしながら、応じたしるべを考えて目標化し、といった手順でさ迷いながら成長していくののも有りと云えます。

何はともあれ、良き目的を持っている場合は、たとえ何かのトラブルで途中の目標がいくつか実現不可能な困難な事態になっても、諦めて放り出す必要はなく、知恵を働かせ、同じ道筋でも目標の設定方法を変更したり、あるいは目的をなしとげられる別の筋道を見つけて別の目標を設定すれば、目的としていることを成し遂げることができます。目標はあまり硬直的に考える必要はなく、より重要なのは目的を成し遂げることなので、目標についてはより柔軟に考えるのが好ましいと云えます。人生というのは様々なことが起きるものなので、一般に、当初の予定どおりに途中の目標を達成してゆけることはむしろ稀です。目的を成し遂げた人のたいがいは、途中でさまざまな困難に遭遇し、それでも諦めず、何度か目標を見直したり再設定したりして、(日々コツコツと)目標をひとつひとつ達成するための行動をつづけ、その結果、目的を成し遂げている人ばかりです。

イメージトレーナーである西田文郎氏は、人生における目的を以下のように話しています。

– 人生の目的は、結局「自分を喜ばせる幸せ」か「自分以外を喜ばせる幸せ」のどち

らかに行き着く

– 真の成功者は「自分以外を喜ばせる幸せ」を知っていた

ただし、人生の目的というのは理屈でこねあげるようなものではなく、本当に心で感じなければならないものなので、良い人生の目的を持つためには、いくつかちょっとしたコツがある、と提案しています。

「コツのひとつは《死》というタイムリミットをイメージすることである。人は皆死ぬのであるが、普段はついそれを忘れてしまっていたりし、死を意識しないと「いつでもできる」などと(誤ったことを)考えてしまう。自分の死をありありとイメージしタイムリミットを意識することは、人生の目的・目標をはっきりさせ、目標に至るまでのプロセスを明確化し、今なすべきことを明確化させる。今日本に生きている若者の中には、自分は生きるので精いっぱいで死はイメージできない、とか、自分は元気で自分の死はどうもリアルに思えないなどと思えてしまう者もいるかも知れないが、そういう場合は「もしあなたの人生が明日終わるとしたら、今日あなたは何をするか?」と問われたと想像すればよい」。同じことはスティーブ・ジョブズも云っています。「今日が人生最後の日だったら、今日やろうとしていることを本当にやりたいか?」。

これは私たちが行う認知行動法による感受性訓練の中の手法としても「墓碑銘」と云う名称で行っているとても効果がある技法です。

因みに人が「人生の意味」をしっかり感じているかどうかは その人の身体的健康の予後(未来の状態)をよく予見させる、とのことです。つまり、人生に大きな意味を見出している人ほど、アルツハイマー病になるリスクが低下し、 冠動脈疾患を持つ人に起きる心臓発作のリスクも低下し、脳卒中のリスクも低下し、 長寿の人が多くなる傾向があるのだそうです(とアメリカと日本の調査で判明した)。 アウシュビッツを生き残った哲学者のフランクルは、人生を「自分がしたいことをしてゆく場」と捉えてしまっている人も多いようだが、このような「私のやりたいことをするのが人生だ」という人生観(欲望中心の価値観)ではなくて、「私がなすべきこと、使命を実現してゆくのが人生だ」という人生観を意識的に選択すると、ひとりひとりの具体的な人生から、自然と、絶え間なく意味がもたらされるようになる、といったことを述べています。

まずは堅苦しくなく、自分を鼓舞する内容で、自分が目指す目的や成功した印象を頭に描いてみて下さい。

-満面の笑顔で笑っている自分。

-破顔一笑している時はどのような状態になっている時か。

 

それを目的として自らの活動をイメージしてみて下さい。それが第一歩です。それがクールモメンタムが発動する瞬間です。でも考えるその前に、まずは心を落ち着けて、楽しい気分になって、それからイメージを始めて下さい。

またその前段階の訓練も大事です。それはイメージを起こす訓練です。それは頭の中にイメージを浮かべている自分を作り出すことです。その第一歩は対話です。それは何も他人とは限りません。鏡の中の自分でも良いですし、ペットとの対話でも結構です。最近では気に入ったフィギュアとの対話が効果絶大だと云われています。ともあれ自分の中にメタ認知できる自分を作り出すことが先決です。

私は、頭の中で思ったことを英語化し、鏡を見て自分に英語で話しかけるという練習をしています。決めた時間だけ英語化した格言を一人事してみたり、そこからの妄想を英語化したりしてみてもう一人の自分と対話しています。せいぜい一日五分くらいで十分です(というよりもそれ以上は話せません)。できるだけ短くやるのがコツです。

 

それでは皆さん、次回のソモサンも何卒よろしくお願い申しあげます。

 

さて皆さんは「ソモサン」?