• 心がリフトするための規制力の軽減と推進力の強化に取り組む~ソモサン第232回~

心がリフトするための規制力の軽減と推進力の強化に取り組む~ソモサン第232回~

ショートソモサン①:幼少期の原体験と自分の行動

皆さんおはようございます。

今回は「自己暗示」としての「自己養育アプローチ」を取り上げてみたいと思います。

瞑想とは、その導入的目標として「リラックス」による脳の休息があげられます。

皆さんもご存じかもしれませんが、子供の頃の養育環境に作られた自己概念は、自らが意図的に変えない限り、大人になってからも生涯自分自身に対する接し方やものの見方、考え方に反映され続けます。

日常他人と関わるとき、私たちはその基準として、まずは親と話す時と同じように、あるいは親が自分に接したときのように関わります。その時例えば子供の頃明らかにひどい扱いを受けていたとすれば、多くの場合私たちはそうした体験を前提に、それを振り返りながら関わり方の基準を形成していきます。そうして私たちは仕事や学校、交友関係などといった様々な社会的な状況において、幼少期からの体験によって身に着けた振る舞い方で人と接していくようになります。

仕事や学校といった公的な場で、社会的なルールによって普段の振る舞い方は多少制限されますが、そういった制限がない状況では身に染み付いた通常の振る舞い方が現れてきます。特にストレスレベルが高い状況においてはその傾向が高まります。

先程も取り上げましたが、もし親から行いの一挙手一投足を批判され、修正されるような家庭で育った子供の場合、その子の心は置かれた家庭環境の規範に合うように物事を考え、期待を抱き、親に気に入られるように振る舞うように訓練されることになります。例えそれが社会的な常識からは相当に逸脱されたマイナス的な環境であっても、子供はそれを理非分別することはありません。いわゆる初期設定によって反応や振る舞いは疑問の余地のない当たり前として刷り込まれていますから「何か違う」とか「何かおかしい」と想起されること自体がありません。そしてその後実家以外で躾をし直される機会もなく、自分の養育環境についてじっくり考える機会もないまま大人になれば、独り立ちして社会に出てからも、それまでと同じように振る舞い続けることになります。

人に頼るなとか人を信じるなと育てられれば、それが教えであろうが、親の振る舞いからの学習であろうが、親との関係の中から身に付いた思考パターンであろうが、結果として、大人になってからでも他者からの援助を受けることに躊躇したり拒んだりするようになります。こういう人はその気本前提としての思考が他者からの援助を受けることを良しとしないと自分を規定してしまっているのです。

そういった人は、今度は自分が親になり、子供を持つと、自分の子供に対しては批判的に細部にわたって管理しながら躾をするようになります。時には自らの感情を押さえ、普通の人なら見せるような弱ささえ見せずに厳しく子供を躾ます。そしてその代償は、やがて自分個人の生活だけでなく、人間関係においても現れ始めます。特に子供に対して強く影響が出始めます。殆どの場合、夫婦間の絆は脆弱で、子供との関係も表面的で乱暴なものになっていきます。

家庭内での関わり合いのスタイルは、それがどんなものであれ、個人に内在化され、それが未来で人と関わり合う時の参照地図となります。どんな場合でも、自分の行動や感情が無視され、否定され、罰せられ、抑圧された人は、それが必ず行動に出て来ます。

幼い子が興奮して母親のところに駆け寄っていっても、母親が事情としては軽い鬱状態にあったとしても、行動的に繰り返し無視されるような体験をすると、その子は喜びや感情を表に出すことを辞めてしまいます。子供は本来親を喜ばせようとして、時には不機嫌な態度を取ったり、深刻に振る舞ったりもしますが、そういった感情や行動、時には感覚さえも出すことをしなくなってしまいます。そうしてそれは習慣化していきます。感情の抑制はその内感情の抑圧に代わり、いつしかそれは代償を発生させます。何故ならば人の本質は感情的な存在だからです。そしてここで重要になるのは、感動や喜びといった自然な感情を、人生の大半で抑圧してきた人たちが被る代償はどんなものなのか、ということです。感動や喜びといった感情が抑圧された心根は、後々の人生で周囲の人からは殆ど気づかれることはないかもしれません。しかしその歪みは必ず自分や引いては関わる人にマイナスの影響を与え始めます。感情は喜びだけではありません。恐怖、冒険心、親密さ、悲しみ、怒り、優しさ、他人への関心といった感情を伴う行動を抑圧する場合にも同様の原理が働きます。人はそういった抑圧を行うと、本来の反応の代わりに人それぞれの方法で置き換えが行われていきます。そして生涯を通してその代償を支払うことになります。

抑圧の代償は、ネットでの迫害的な行動を取っている人たちの姿勢をみれば一目瞭然です。本人的には決して日の目を見ることのない深い闇の部分の焦燥を満たそうとする努力を繰り返す過程ですが、それは決して受容されることはなく、永遠に満足されることのないままネガティブな行動を続ける姿の惨めさや浅ましさ。まさに現代の地獄といえます。

人は誰しも程度の差はあれども、感情のエネルギーの抑圧による歪んだ思考や行動を体験したことがあるはずです。中にはとても激しく、症状としてはっきり現れるケースもあります。例えば脅迫行動、鬱、DVや不安発作、幼児虐待などはその顕著な現れです。

それほど目に見えて酷くは映らず、正常で健常な行動とみなされていた範囲だとしても、知ったかぶり、いじめっ子、ご機嫌取り、浮気者、自己中、殉教者、お節介焼き、傍観者、仕事中毒、といった行動は皆歪みの現れです。

ショートソモサン②:自己養育アプローチの準備段階

でも実のところ、子供の頃の実体験を通して学んだものを変えることは、そう難しい取り組みではありません。習得されたことの殆どは自分を保護しようという中で狭いながらも自分に都合の良い世界観を合理として内在化しているわけですから、それを書き換えることは可能だからです。例えばそれまで批判的で無関心な親のもとで暮らしてきた場合、前提から自分自身や出来事を否定的に捉え、それがその人たちの世界を作ってしまっている、そしてそれが幼少期からの源体験な場合、当たり前になり過ぎているのでそれ自体に気が付かない、或いは受容し切れないといった案配です。そしてその結果、そういった轍に嵌まっている人たちは、自分が求めることは、求められた基準に達しなくて当然だと思うようになってしまっているわけです。

自己変容を起こす上で大切なことは、単に染みついた悪癖を変化させるだけでなく、そうした変化をまさにこれまで悪癖が出ているときにやっていた気持ちと同じようなレベルにまで、自動的に無意識に行うことができるように持っていくことです。それには顕在意識レベルでの理解ではなく、潜在意識レベルでの受容が求められます。それには顕在意識のガードを外して、直接潜在意識に語りかける必要が求められます。

またこの悪癖に関しては、これまで数えきれないほどの年月を費やし絶望や批判によって自らを動機づけてきた上、そうした状態を無意識のうちに保ってきた課題です。このように長年にわたって自分に強制してきた悪癖を変化させるには、数週間、数分間の練習では足りません。効果的に変化を引き落とすには、実習を単に一回やれば良いというのではなく、毎日繰り返し練習する必要があります。

皆さんはこの実習をしてみた場合、短期間ですが気分が晴れたり安堵したりすることもあるやもしれません。しかし、おそらくそれは数分のうち消え去ることでしょう。それ位潜在意識に練り込まれたマイナスの想念は根深いものです。またその代償的な行為には意識が向かない、向けたくない防衛的な心情が働くものです。人が持つ潜在的本能は「変えたくない」「今のままを続けたい」ですから。

さてそういったガードを外しながら意識の変容を促すには、まず初めに自分がどれほどマイナスのセルフトークを行っているか気づくことが大事かもしれません。意識に上がっていない批判を自覚するには、これからやる実習を行ってみるのが一番良いでしょう。但しこの実習は、自分の現在の状況について気付きを高めることだけを目的にしたものだということは最初に覚えておいてください。

 

【「自分のマイナスのセルフトークに気付く」実習】

①心地よく座って徐々にリラックス感の広がりを感じながら、お好みの自己催眠法を使ってトランスに入ります。そうして、これまで学んだ自己暗示のツールを使って、プラスの体験を取り出します。準備が整ったら、目を閉じて、自分自身を30センチから40センチ前方にイメージします。

②次に前方に映し出された自分を見つめながら、これから3つのことを順番に行っていきます。

a.思いやりに溢れ、愛情深く支えとなるような受容的な言葉をあなた自身に声掛けします。

b.次に先ほどで感じた心地よい感覚を感じながら、批判的で否定的な言葉を打ち出されている自分自身に、投げ掛けてみます。2、3分行ってみます。

③今度は映し出されているご自身のイメージはそのままで、aで行ったのと同じように、もう1度、思いやりに溢れ、愛情深い支えとなるような受容的な言葉を送ります。これも少なくとも1、2分続けます。

実際に体験してみると、プラスの言葉を見つけて掛け続けるのに比べて、マイナスの言葉を見つけ、掛け続ける方が簡単であることに気付くと思います。自分自身のセルフトークについても、これまでマイナスの言葉の方が、プラスの言葉よりもどれくらい多く使われていたか、よく理解できるようになります。しかし、問題に焦点を当てた動機付けというのは健全ではありませんし、楽しくありません。また、想像力や生産性を減少させ、健康や親密な人間関係にも良い影響を与えることはありません。

④同じようなやり方でイメージ法というアプローチもあります。これはイメージで、例えば山に登っている時、上から人が歩いてきた時に自分がどういう態度を取るか、を想起する方法です。元気良く挨拶する姿が浮かぶか、俯き加減に返事をする姿か、挨拶しないか、はたまた陰に隠れるか。そこに自分の本音が現れてきます。

⑤更には自分の良さ、悪さ、というのを書き出してみるというやり方でも、同じような効果が出ます。これらは心理の外在化というアプローチです。

一般に「自分を成長させたければ自分を褒めろ」という人がいます。しかし皮肉なことに、自画自賛するという行為は、寧ろ軽蔑的な意味で捉えられがちです。皆さんもあまり得意になるな、わざわざ自慢するな、という意味で「君は単に自画自賛しているだけだ」という言葉を聞いたことがあることかと思います。特に日本では集団主義の弊害で「出る杭は打たれる」的にこういったことが前面に出る風潮があります。これはグローバリゼーションの流れの中では非常にマイナス的な風潮なのですが、集団的な潜在意識レベルでの反応なので真にもったいない話になっています。

ともあれ褒められることなく、批判ばかりされて育った子供は、親から心地よく愛のこもった言葉をかけてほしい、などとは考えなくなってしまいます。ネガティブな大人の不用意に浴びせられる心ない言葉は、本来ならば普通の子供として育っていた心に不当な仕打ちをなしているわけです。大人は子供たちが自分自身を褒められるようになれるような良き理解者でなければなりません。それにはまず自分に対して自分が癒されていることが必須となります。これこそセルフ・コンパッションの本質です。

 

ショートソモサン③:自己養育アプローチの進め方

今回は「自己養育」の導入として、セルフ・アファメーションのアプローチからステップを進めて行くことにしましょう。これからご紹介する言葉は、まずあなたが進むべき正しい方向へとあなた自身を導いてくれるでしょう。でもこれはあくまでも型です。実際には人それぞれ、状況に応じて様々な言葉が必要であるということを覚えておいてください。そして大事なのは衒いなく自分の子供やメンバーにこういった言葉が投げかけられる慈力を身につけることです。

・私はあなたを誇りに思います。

・あなたは素晴らしい子です。

・あなたはすごいことをやってます。あなたは頑張っています。感情を出してもいいんです。あなたは賢い。

・わかっていますよ。あなたならできるたくさんのことを学んできました。私はここにいます。一人ではありません。

・私が助けます。自分のできることをすれば、それでいい。

・あなたはあなたが好きです。そういうあなたとは私も一緒にいるととても楽しいです。

如何でしょうか。これを「照れくさい」と思う様であれば、あなたはネガティブ・マインドに毒されています。まずはそこから脱却しましょう。

このような言葉の投げかけを自分自身にも周りにも単発ではなく、習慣化するまで繰り返し続けて行きます。そうして空気を作って行きます。自分を育てるという言葉の投げかけのスパイラルは、マイナスのセルフトークや自己批判的な発言、そして物事を決めつけるような発言から、自由な心の状態を作ります。アファメーションはストレスを軽減し、憂鬱を消したり、満足と幸福感を手に入れられるように、自分の支えとなるような言葉を発するためのツールです。これを毎日定期的に行うことで新しい体験やセルフトークが条件付けられます。そしてそれはこれまでの批判的で投げやりだった親子間や人間関係での後ろ向きな言葉がけや依存的な習慣を書き換えることを可能にして行きます。その時あなたは成熟した思慮や深い慈愛をもってあなた自身の成長をも支援することができるようになっていることだと思います。

 

さあ、では自己養育アプローチの本論に入っていくことにしましょう。

①まずは心地よく腰かけて呼吸に注意を向けるか、ずぼら瞑想などのアプローチでリラックスし、心の状態をニュートラルにします。

②次に人生を振り返って、自分が今ネガティブでマイナスな反応をしがちな言動や行動を生み出す要因となったと想起される過去の体験を思い起こしてみます。例えば私ならば大阪から東京に親の都合で転校した時の学校環境などが失望感や諦観を生み出し、それがネガティブの始まりだったといった具合です。そしてその時に生まれたマイナスな思考や気持ちを思い起こしてみます。

③では瞑想法や催眠法など自分が入りやすい方法でトランス状態に入ります。潜在意識との対話が得やすい心の状態になります。トランスとは脳科学的にはセイリエンス・ネットワークを意図的に操作してセントラル・エグゼクティブ・ネットワークを発動させた状態といえます。

④次に今の自分から見れば、どの様な考え方や思いが自分にとっては得であったかを思い起こしてみます。そしてそれは今にどの様な影響を起こしているかを考えてみます。私で言えば「変えられない事情があった」「言ったところで仕方がない話だった」「自ら出来ることはしていなかった」「実際にはプラスのこともあった」「結局それに縋って前向きになれずに引っ張った」「自分自身で選択したことも多々あった」といった具合です。

⑤そうして、自分の背後に二人の人物を想像します。一人は過去のその時の自分の姿で右側に居て、もう一人は今の自分の姿で左側に居ることを想像します。この時に大事なのは、顕在意識で防衛したり理屈づけた自己ではなく、潜在意識に記憶された生々しい感情的な自分と対話することです。

⑥その二人が②で選んだ状況を通してその③の言葉や思いについて両側から問答的に対話して貰います。そして第三の自分は左側の自分に寄った姿勢でそのやり取りされる声を聞きながらそれを俯瞰します。右側の自分は感情的に反応するでしょうが、それもあるがままに受け止めます。

⑦先ほど浮かんだ考えが全て終わるまでこのやり取りを続けます。もし途中で何でも役に立ちそうな言葉や思いが浮かんできたら、いつ加えてくれても構いません。

⑧ここで最も重要なのは日頃意識していたネガティブな発想や振る舞いに気づくというよりも、それが習慣化して思い込みに突き刺さってしまっているレベルでの反応、身体反応や条件反射レベルでの反応に目が向いてそれに気づくことにあります。人は意識していることへは手が打てますが、気がついていなければ暖簾に腕押しになります。でも人は防衛本能で思う以上に無意識的な反応として後ろ向きな反応をしているものです。自分がネガティブやマイナスだと気が付かずにそういう行動や言動をすることによって自他ともに悪循環をしているのは悲しい限りです。私の周りでもそういった人材が周りを暗くしている状況を目の当たりにすることがあります。本当に悲しく残念な話です。あげく失感情症にまで陥っている若者を目にするのは本当に忍びない話です。

⑨それを続けながら、3回か4回呼吸をし、自分の感情を見つめます。そしてそれが今の自分にとってプラスかマイナスか、周りにどの様な影響を与えているかを考えてみます。良いか悪いかではなく、正しいか間違いかでもなく、得か損かで見つめてみます。

⑩やり取りが終わったら、これからの自分を思い起こして、どういう考えが自分にとって得になるかを判断します。そしてその状態になるには、その状態を続けるにはどのような考え方や態度、言葉使いが最善かを選択します。

⑪次に今度はこれからの自分のことを受け入れ、支えとなり、後押しして成長を見守る助けとなるような言葉をいくつか思い浮かべます。

⑫その言葉を先の両者が自分に投げ掛ける状況を想起します。右と左の両側から頭の横で声掛けをします。そしてその声が頭の周りをぐるぐると回転させていくようにします。まるで360度全ての方向から声が聞こえるように回転させていきます。それを何回か、呼吸をしながら続けます。

⑬そうして声が自分の周りを螺旋上のチューブのように旋回し、言葉があらゆるレベルのあらゆる方向から注がれ、自分の体に入っていくように感じます。5回か6回、呼吸を重ねながら、声が循環していくのを感じます。

⑭さらに広がっていく体験にできる限り深く浸って、その感覚を味わいます。そしてポジティブでプラスな感覚を全身で味わいます。

⑮最後に覚醒法で覚醒を行います。立ち上がって屈伸して元に戻ります。

この自己養育アプローチは深いレベルでの自己との対話です。ポジティブでプラスな言葉を通してそういった感覚や感情を受け入れるプロセスを体感します。繰り返すうちに自分の思考が転換していくのを感じ取ることでしょう。

ショートソモサン④:こころを引き上げていく(リフト)モメンタム

さあてこの辺で規制力を弱めるアプローチは止めることとして、改めて推進力を高めるアプローチをご紹介していくとしましょう。友人の川野禅師は精神科医でもあるのですが、最近の若者の中では未病状態にある人が増えているとおっしゃっています。未病とは病気の直前状態ということですが、今最も注目を浴びているのは心の未病です。ストレスという心的な圧力は絶大です。私がそれを身近に感じたのはもう40年前位になりますか。羽田沖で日航機が落ちた事件です。いわゆる逆噴射事件ですね。あの時のパイロットであったKさんは航大時代の父の教え子の一人でしたが、到底あのような事件を引き起こす様な方ではありませんでした。とても優しくて、私の姉なども英語を教わっていました。私的には到底信じられなかったのですが、その際父が語った話が非常にインパクトがある話でした。曰く「彼は優し過ぎた」というものです。当時日航と全日空では大きな組織上の違いがありました。狭いコックピットの中で活動するキャプテンとコ・パイロットは、全日空では同僚関係であるのに対して日航では上司部下だというのです。それだけでは当たり前の話ですが、そこに日本特有のお国柄文化が混ざってきます。いわゆる年功序列という奴です。事故機の場合、キャプテンのK氏は航大出のエリートで若くしてキャプテンになったが、コ・パイロットはそれ以外の出身で年が5歳も上であるにも関わらず部下という位置付けにあり、意思疎通や反発などマネジメントがかなりストレスフルだというのです。これは私も後日実感することがありました。社長である私に対して平然で「何で年下の人間に指示されなければ」といった能力外の要件で反発する人材が日本では至るところで見られるのです。全く非生産的な規範が横行するのが集団主義の日本です。

ともあれK氏はパイロットとしての技能ではなく、マネジメントという対人系で精神が病んでしまったという話でした。まあ先般NHKの朝ドラで航大が出ていた中で、かなりチームを強調していたので大分是正はされたのだろうなと思ったのですが、心を押し殺すと体に変調が出る。心身症という言葉を身近にした時に、心の病という世界や知性と意性の違いについてまざまざと実感を得たのでした。

この意性の開発や強化が軽んじられている日本において、心の病の問題は喫緊の課題です。時間が掛かる規制力の低減も重要ですが、まずは即効的な応援でもある推進力の強化支援はとても大切だと考えるところです。

川野先生は心の疲労が身体に出る象徴として「自律神経失調症」をあげていらっしゃいます。それが酷くなると「心身症」に至ります。またウツという病を発症することもあります。ウツは心の栄養失調からもたらされる燃料切れの状態ですが、それが慢性化すると失感情症にも陥ります。ここまで来ると個人では手が打てません。専門的な支援が必要になってきます。心のマイナス的な循環に嵌ってしまっていますから自助努力での復活は無理です。ちょうどバッテリーが完全になくなった状態からの再生が無理なのと同じです。

大事なのは未病状態の段階で手を打つことです。バッテリーが死なない段階で断続的にでもエネルギーを充填し続けることが生命線になります。この充填がモメンタムのチャージです。

ある種古くからある宗教社会では民衆を救済するために様々なアプローチを開発してきましたが、上位階層に影響した禅宗のように一定のモメンタムを内在する人たちには瞑想法によってエネルギーは充填されましたが、下位階層の人たちには他力本願的な充填が求められました。

心のリフトはプラスへの方向づけとエネルギー充填がセットになります。前者が浄土信仰であり、後者が念佛の読誦や踊り、囃子でした。要はリズムです。リズムによってトランス状態に入り、瞑想と同じように脳をセントラル・エグゼクティブ・ネットワークにすることで脳を休めて活力を取り戻させるわけです。いわゆる催眠効果と同じです。宗教の場合はそこに暗示を巧みに絡ませることからそれぞれの教宣を行ったのでしょうが、モメンタムを発動させるアプローチは共通的に土着的に開発されていったものと考えられます。事実こういったリズムによる高揚はアフリカや豪州などの原住民の活動の中にも見受けられます。

何れにせよ人間の生理的なあり様に直接影響するアプローチは人間が持つ叡智の一つです。「楽しむ」こと「喜ぶ」こと「至福すること」といったプラスの感情を引き出す所業は、「人が知行合一な存在である」という本質から見て行動的アプローチとして理に叶っています。

次回からは具体的なモメンタム向上のアプローチをご紹介していこうと考えています。

 

それでは皆さん、次回も何卒よろしくお願い申しあげます。

さて皆さんは「ソモサン」?