• 組織開発(OD)の実践って、どうするの?⑥ ~自分の正義を見つめなおす~

組織開発(OD)の実践って、どうするの?⑥ ~自分の正義を見つめなおす~

組織開発のスタートは、誰かが何か問題を感じたところから始まります。要するに、「問題があるので何とかしたい」と誰かが言うことがスタートです。

以前のODメディアで、組織開発は「リーダー(トップマネジメント)が何を変えるかを決め、スタッフが変革のプロセスを管理する場合、ほぼすべてが失敗している。」という米国での調査を紹介しました。そこで、成功するためには「組織構成員の感情的側面」への配慮が欠かせないということを書きましたが、もっと大事なことがあります。

それは、「私自身の正義」です。特に、トップマネジメントやリーダー層が思っている「これが正しい」という思考の枠組みが問題なのです。

「え、俺/私(リーダー)が問題なの?」と聞こえてきそうですが、そうなんです、あなた(リーダー)が問題なんです。というか、問題の原因がリーダー自身の言動にあるということは、よくあることなんですよ。

クリス・アージリスは、組織開発は「上から下へ」が大切といっています。つまり、リーダー自身が自分の及ぼす影響についてよく理解し、そこを変えていくことから始めないと組織は変わらないといっているのです。
ですから「職場(組織)を変えるにはリーダーを変えること(人事的処置)」というのは、あながち間違いではありません。でも、こればっかりでは職場は疲弊しますよね。このやり方ばかりで同じ問題が繰り返されている組織は意外と多いものです。

 

筆者は、ある大手化粧品会社の依頼を受けて、「販売員が経営者になっていくプロセスに必要な育成プログラム」を構築するというプロジェクトに加わったことがあります。そのプロジェクトでは、好業績者と好業績経営者をインタビューさせていただきました。

インタビューからはいろいろなことが浮かび上がってきたのですが、共通していたのは、成功している経営者は一度挫折しているという体験でした。

どういうことか? その業界ではどのような経営者も最初から経営者ではなく、「セールスからスタートする」のです。お店を開く(経営する)までには、幾つかの「売上」というハードルがあり、それをクリアーしていかなくてはなりません。つまりは、個人業績を上げるということです。とにかく我武者羅に頑張るのだそうです。
そして、何人かを預かるマネジャーになり、次にお店を持ち、人を雇用するという立場になっていきます。そこでも、とにかく我武者羅に数字を追いかける。
気づいたら、若い子たちがみんな「辞めさせてください」といって辞めていったのです。

インタビューで、あるオーナーが言っていたことが印象に残っています。彼女曰く「ある人から正義の反対は何?」と聞かれたので、「悪です」と答えたら、「違うよ、それは愛だ」といわれたというのです。
彼女、愕然としたそうです。今まで、自分が良いと思ってやってきたのは「ただの独善」だったのかと。私には他の人のことが見えていなかったと心底感じたそうです。
それ以来、彼女は他人のことをより思うようになり、それから経営は軌道に乗り出したそうです。

 

会社の幹部の多くは組織内の競争を勝ち上がってきた人たちです。その過程で組織の正義を身につけているのです。そうして、うまくいかない状況の中で原因を自分以外の何かに求めてしまう。つまり、目線が「I am OK」「 You are not OK」になっている可能性が高いのです。

「愛が必要」と言いたいわけではありません(愛は大事ですが)。
そうではなく、
「自分の正義を見つめなおすこと」が必要なのです。俺/私は、今の俺/私でいいのか、という問いを発することが大切なのです。

「自分を見つめなおす」というのは、ものすごくきつい作業です。それは他者との関係の中で、自己存在の意味を問い直すことでもあります。

 

次回は、「自己存在の意味を問い直す機会」としてのラボラトリー・トレーニングについてご紹介します。

 

※この記事の書き手はJoyBizコンサルティング 波多江 嘉之 です。