• ~リーダーは状況を操作しろ①~ 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-154

~リーダーは状況を操作しろ①~ 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-154

あけましておめでとうございます。🎍

今年は「寅年」は、「寅」はすなわち「虎🐯」を表しています。勇敢さや力強さ、溢れるほどの自信というイメージでしょうか。辛い2年を過ごしていますが、ホントに今年は良い年になると良いですね。

前回のODメディアから、リーダーシップ状況論について見ています。リーダーシップを語るときに、どのような状況でも上手くやれるリーダーシップ・スタイルはないというのは、みなさんよくご存じのとおりですね。要するに、リーダーシップ・スタイルに正解はないということです。状況対応リーダーシップでは、ハーシーとブランチャードのSL理論がよく知られています。

これは、リーダーシップ2大機能である課題達成機能(課題への関心)と集団維持機能(人間への関心)によってリーダーのスタイルを4つに分類し、構成員の成熟度を能力と意欲との関係で4段階の成熟度に分け、適切なリーダーシップの行使が大切であることを説いている理論です。しかし、部下の成熟度に合わせて自分のリーダーシップ・スタイルを変えていくというのは、中々に至難なことです。実践ではむしろ、リーダーが自分自身はどのような状況でうまくやれるのか、逆にどのような状況ではうまくやれないのかを自覚しておくことが役に立つかもしれません。今回はそんな問いに対して一つの答えを出したフレッド・E・フィードラー(ワシントン大学教授)のリーダーシップ論です。日本ではそれほど馴染みがある研究者ではありませんが、実際にお会いしたこともあり、個人的には思い出深い先生です。では、どのようなものなのか見ていきましょう。

フィードラーのリーダーシップ理論は「リーダー・マッチ理論」と名付けられています。これは、リーダー及びその集団の効果性は、主に2つの要因によって決まるというものです。第1の要因は、リーダー個人の根底にある動機づけ要因、つまりそのリーダーにとって最も重要な基礎的目標のタイプは何か、そして第2の要因は、リーダーが置かれている状況に対して、どれほどの統制力と影響力を持っているかの度合いです。

第1の要因である基礎的目標のタイプとは、いわゆる業務目標ではなく、フィードラーがリーダー個人の根底にある動機づけ要因と言っているように、リーダーが気にすること、あるいはリーダーが集団を率いる時に、リーダーの関心はどこにあるのかというものです。

リーダー・マッチ理論では第1の要因を、リーダーのリーダーシップ・スタイルと呼んでいます。リーダーシップ・スタイルの一つは「私は、私と人々の関係に関心がある:これを関係動機型といいます」であり、もう一つは「私は、仕事を遂行することそのものに関心がある:これを課題動機型といいます」のかの2つです。この2つは、リーダーシップの2大機能である、集団維持機能(またはそれへの関心)と、課題達成機能(またはそれへの関心)の2つと同じ視点ですね。私自身は、圧倒的に課題動機型です。皆さんはどうでしょうか。

第2の要因であるリーダーが置かれている状況は、リーダー・マッチ理論ではリーダーシップ状況と呼ばれていますが、それは3つの要素で構成されます。

  • メンバーがリーダーを支持する度合い(Leader-Member Relation)。つまり、リーダーとメンバーの関係が良好か、そうではないのかです。
  • 課題達成の構造化の度合い(Task Structure)。つまり、集団が与えられた課題を達成するために、目標、手続き、および具体的な実行ガイドラインが明確になっているかどうかです。
  • リーダーの地位力(Position Power)。つまり、部下の賞罰に対して、リーダーがどれほどの権限を有しているかです。

リーダーシップ状況を明確にするということの根底には、状況がどの程度の統制力と影響力をリーダーに与えているかという考え方があります。つまり、集団がなすべきことは何であるか、そしてその意思決定や活動の結果生まれる成果がなんであるかなどをリーダーが決定できる度合いです。また、リーダーが何かをやろうと試みる時、かなり高い確実性と信頼性をもって、何が起きるかを予測できることが含まれます。例えば、以下の2つの状況を比較してみましょう。一つは、建築会社の監督者が建物の建設に取り掛かる場合、その監督者には建物をつくっていく青写真と部下からの支持があります。課題自体は容易いものではないかもしれませんが、監督者は比較的高い確実性を持ってその仕事の完成を信じることができます。このような状況では、監督者は非常に高い統制力と影響力を持っているということになります。対照的に、みんなが楽しむことのできるピクニックを企画するPTAの委員長といった課題と状況を考えてみましょう。課題は簡単そうに見えますが、リーダーであるPTA委員長の統制力は大きくありません。メンバーは、自分達の意思で何時でも脱退できるような任意団体です。ピクニックも、行きたくなければ参加しなくても構いません。リーダーが発揮できる影響力は小さいのです。

どうでしょうか。この2つの状況に、あなた自身はどちらに対してもうまく対応できますか。私は無理です。少なくともピクニックは、参加メンバーとして隅っこで参加したい方ですね。もうお分かりのように、リーダーが効果的に成果を出すには、自分がリーダーとして最も効果的でありうるのはどのような状況か、そして自分に向いていないのはどのような状況かを理解することです。そして、これを理解するだけでなく、このような状況を如何にして修正し、自分のスタイルやリーダーシップ・アプローチに合わせ、自分の効果性を最大限に発揮することができるかを学ぶことが大切なのです。リーダーは、全ての状況に対して柔軟性を発揮して自分のスタイルを変えていく必要はないのです。自分のスタイルに合わなければ、それは他の得意な人にやってもらった方がチームとしては有難い訳です。そして、その得意な人に委任したりするのがリーダーの仕事であると割り切ってしまえば、「私は有能ではない」などと自分の評価を下げることもないのです。ふむふむ、精神論ではなく、なかなか実践的ですね。次回から、自分はどのようなタイプのリーダーなのか、リーダーシップ状況を理解するポイントはどのようなことなのかを見ていくことにしましょう。(続く)

 

この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。