• 組織の<重さ>とOD➅~組織の<重さ>と組織デザイン① 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-235~

組織の<重さ>とOD➅~組織の<重さ>と組織デザイン① 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-235~

日本における従来の組織開発(OD)では、組織デザインはそれほど議論されない領域ですが、組織をより良くしていく視点からはやはり重要です。組織デザインは、ウォーリーやカミングスの主張を持ち出すまでもなく、組織開発(OD)の重要な側面として理解されています。組織の<重さ>によれば、組織デザインの主要な側面とは、「計画と標準化、社会化・組織文化、ヒエラルキー、水平的調整機構、社内ネットワーク、組織プロセス変数(コンフリクト解消、リーダーシップ)」などを指しています。このような側面と組織の<重さ>との関係を考察した本研究の結論を先に紹介すれば、以下のようになります。

『組織デザインに関連した諸変数の分析を通じて、われわれが見出した1つのテーマは、有機的組織と機械的組織の共存である。主要な発見事実をまとめるなら、「組織の<重さ>が低水準の組織(以下、軽い組織)は、一方で、①自由度の高い、ヨコのコミュニケーションを重視する組織デザインに近い側面を持つ(有機的組織)とともに、他方では、②しっかりとした官僚制機構にイメージが近い側面を持っている(機械的組織)」ということである。つまり、軽い組織では、有機的組織と機械的組織の両方の特徴がみられる。』

以上を要約すれば、

  • 組織メンバーが計画を参照するほど組織の<重さ>が軽減され
  • 組織内の暗黙のルール等が難解になればなるほど、組織は重くなる

ということです。以下、組織デザインの主要な項目ごとに組織の<重さ>プロジェクトの分析を見ていくことにします。

 

【計画と標準化】

計画・標準化・ルールは合理的な官僚制機構の基本であり、組織設計の基本モデルに備わる特性である(Galblaith,1973;Mintzberg 1983;沼上,2004;Weber,1947)といえます。しかし、これはその過剰が問題視されてきた特徴でもあります。はたして、この官僚制機構の特徴と考えられている組織特性は、組織の<重さ>とどのように関係するのでしょうか。分析では、「計画の参照度」は、全般に組織の<重さ>を軽減する方向に作用しています。特徴的なのは、全社レベルの計画参照度と組織の<重さ>は負の相関を持つものの、調整比率(何かをやるときの他部門や他者との交渉など)とは優位な相関を持ちません。一方で、職能レベルの計画参照度は調整比率と有意な負の相関を持ち、組織の<重さ>とは弱い相関しか示していません。

すなわち、全社計画の参照度と組織の<重さ>の相関が負であるということは、ミドルたちが全社計画を参照しているほど組織は軽くなり、逆に計画を参照していないほど組織は重くなるということです。とはいえ、全社計画の参照は、BUの仕事で調整が容易になるということではなく、BUでは開発ロードマップのような計画が調整活動を容易にします。

また、全社計画参照度が、組織の<重さ>2次元のうち、内向き調整志向よりも組織弛緩性と高い相関を示していることから、全社計画の参照度は、組織内の調整以上に、経営リテラシーの高さやフリーライダー行為の少なさと結びついているようです。すなわち、全社計画をしっかり参照している組織は、その組織メンバーが全社の目指す方向に対して誠実・勤勉な努力を行っており、それ故に組織の<重さ>が軽減されているという可能性が示唆されます。また注目すべきは、活動プロセスのコントロールは組織の<重さ>とほぼ無関係であるのに対して、目標によって組織をコントロールするアウトプット・コントロールは全般的に組織の<重さ>を軽減する傾向が見られます。例えば、計画が各人の目標にブレイクダウンされているほど組織の<重さ>は軽く、加えてその目標作成に自ら参加できるほど組織の<重さ>が軽くなる傾向が見られます。計画達成と昇進・昇格のリンクについては、それが強いほど組織の<重さ>が軽くなる傾向を示しています。

計画や予算などは、いわゆる「官僚制」の象徴であり、組織を<重い>と感じさせ、内部調整をより多く必要とさせる張本人のように思われているかもしれませんが、実際には、それが欠如した状態を想像してみれば、巨大な組織がどれほど動きにくくなるかが分かるはずです。計画や予算、その達成と連動した昇進・昇給というのは、少なくとも行き過ぎにならない限り、健全な組織の基本だということができるでしょう。もちろん、与えられる目標や計画では不十分であり、計画作成に自分自身が参加できることが組織の<重さ>とマイナスの相関関係を持つことも忘れてはならないでしょう。

組織の<重さ>研究では、計画と標準化について以下のようにまとめています。

  • 組織の<重さ>を軽減する効果という点では、計画達成と昇進・昇給のリンクの強度→全社計画参照度という経路が最も有望である
  • 新規活動の調整比率を軽減するという点では、計画作成への参加可能性→職能計画参照度という経路が最も有望である

また、

  • 計画達成と昇進・昇給のリンクの強度は、組織の<重さ>を経由して新規活動の調整比率を引き下げる効果を持つ
  • 計画達成と昇進・昇給のリンクの強度が機械的組織を連想させ、計画作成への参加可能性が有機的組織の特徴を連想させることを考えると、機械的組織と有機的組織の同時共存が組織の<重さ>を軽減させるといえる

 

如何でしょうか。有機的組織の特徴のみでは組織の活性化は実現しないのですね。組織を軽くするには機械的管理システムと有機的管理システムの適度なバランスが必要なのです。(続く)

参考文献:組織の<重さ>2007

 

この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。