• 組織文化とOD㉚:文化変革をリードするリーダーの能力①~ 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-228~

組織文化とOD㉚:文化変革をリードするリーダーの能力①~ 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-228~

組織文化とリーダーシップの最後のテーマは、内部から変革をリードするリーダーに求められる能力です。リーダーシップが文化の創造・形成と変革の双方に決定的に重要な要因であるとすれば、私たちはどのような能力を開発していく必要があるのでしょうか。E.シャインは、その能力を6つ挙げています。

  1. 知覚と洞察
  2. 動機づけと技能
  3. 情緒面の強靭さ
  4. 文化的仮定を変革する能力
  5. 関与と参加の創造
  6. ビジョンの深さ

以下、一つずつ見ていくことにしましょう。

 

【知覚と洞察】

言うまでもなく、リーダーは組織の問題を知覚し、組織文化がそれにどのように影響を及ぼしているかについて洞察する力を持っていることが望まれます。しかし、これは簡単なことではありません。なぜなら、それは自分自身の振舞いに目を向けることであり、また自分の弱点について理解することが要求されるからです。私たちが、脅威を感じているときに無意識に発動させる防衛機制は、不安を管理するだけではなく、効果的であろうとする振舞いを阻害してしまいます。従って、自分の弱点を見るということは、防衛機制が邪魔をするわけであり、中々に難しいことなのです。リーダーは、概ね自分の弱点を見る代わりに、組織で起こっている問題を「他人のせい」にします。そして、部下を更迭したり、解任したりすることで問題を解決しようとするのですが、問題は解消せず、また同じことが繰り返されます。日本の名のある経営者も、防衛機制を無意識に発動させてしまい、問題の堂々巡りを繰り返している例があります。

変革プロセスを成功させるリーダーは、自分自身と自分の組織に対して高度の客観性を持った人たちなのです。ですから、変革に成功する経営者やリーダーは、かなりの人たちが一度は本流を離れて、異なる文化を持っている組織で働く経験をしています。例えば、TOYOTAの奥田さん、大丸の奥田さんなどです。因みにこの二人兄弟ですね。NTTの新藤さんは別の組織から招聘された人です。JALでの稲盛さんもそうですね。アメリカの経営幹部は、カウンセリングなど心理学の力を借りて、自己を見つめ直す機会を持っていますが、日本では禅(坐禅)でしょうね。どちらの場合も、外部の第三者が会社のなすべきことに対して勧告するのではなく、リーダーが自分で判断するのを助けるように関わります。

 

【動機づけと技能】

文化の変革は、組織メンバーの「変わっていこうとする気持ち」を喚起する必要があります。つまり、内部の不満や不安を、建設的な変化へのモチベーションに変えていくことが求められるのです。リーダーは、メンバーのモチベーションを喚起させ、変化に向けて歩みだすようにリードしていく必要があります。これには、卓越したコミュニケーション力、私利私欲を排除して組織のために献身すること、といった能力が欠かせません。また、変革に伴う痛みを和らげること、逆に変革に抵抗する勢力には断固として対決することといった優しさと厳しさの両方を併せ持つ必要もあります。

 

【情緒面の強靭さ】

変革の最初は、固まったものの見方や考え方をほぐしていく作業から始まります。組織変革のプロセスでは「解凍」と呼ばれる局面です。この局面では、リーダーは変革がもたらす不安の多くを吸収する情緒面のタフさが必要であり、組織メンバーの怒りや悲しみ、不安といったことを受け止め、組織を支え続ける能力が求められます。

変革は、これまでの会社の成長力の源泉であり、誇りでもあった事業の閉鎖を余儀なくされるかもしれません。あるいは、忠誠心のある社員や古参従業員の退職ということもあるかもしれません。最悪、創業者が大切にしていた文化的仮定が、現在の状況の中では適応しないということをメッセージしなくてはなりません。このような局面では、リーダーは心底から組織全体の繁栄を希求しているということを証明しなくてはなりません。献身とコミットメントが要求されるのは、まさにこのような局面においてです。リーダーは、変革におけるリスクを受け止め、未知の領域に押し入るだけの強さを持たなくてはならないのです。

(続く)

参考文献「組織文化とリーダーシップ;E.H.シャイン」

 

この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。