• 組織文化とOD㉖:変革戦略の選択①~ 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-224~

組織文化とOD㉖:変革戦略の選択①~ 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-224~

組織開発(OD)は、どのような定義をしてみても、また診断型とか対話型とか方法論の違いがあるにしても、現状組織をより良い、高いパフォーマンスを発揮する組織に変革してく計画的な活動であることに変わりはありません。しかし、変革あるいは変化の意味は人によってその理解内容や受け止め方が変わるでしょう。特に、変革計画を策定し実行する側の人たちは、自分たち立場からの見方だけでなく、その影響を受ける人たちの見方や受け止め方についても思いを巡らせておくことはとても大切です。それはなかなか難しいことですが、そのことに対する想像性が欠如している場合は、「I am OK , You are not OK」になりかねず、双方とも困惑、イライラ、果ては罵り合いに陥る恐れがあります。果たして、変革戦略の選択をする場合、私たちは何を基準に選択すればよいのでしょうか。

「変革」と一般的に言っていますが、その変革をどのように理解し受け止めるか、あるいは定義するかは、その変革を見ている人の立場によって異なります。立場が異なれば、変革の意味も変わってきます。E.シャインによれば、立場は大きく分けると4つになります。

  • 集団メンバーで一連のイベントから個人的に影響を受ける人
  • 集団メンバーに新たな、あるいは異なった反応を起こさせようとする意図を持った変革エージェント
  • 集団メンバーであって影響は受けないが、同僚のメンバーに何が起こりつつあるかを観察している人(傍観者)
  • 変革を分析し意味づけようとする外部の観察者、研究者または歴史家

 

4者を図式化すると下記図のようになります。

          

 

また、一連の出来事が自分たちにどのように影響するか、また短期的視点に立つか長期的視点に立つかによって、変革の意味が変わるでしょう。

また、何が変化したか、あるいは変化しなかったかは、変化を起こそうとした人の目標によって異なります。従って、「計画された組織文化の変革」について云々する場合は、変革を推進する人が自分の意図を明確にすることがとても重要になります。E.シャインは、立場の違いによる変革の受けと方の例として、以下のような例を挙げています。

「ある会社で、早期退職を迫られた上級幹部や、その家族、また早期退職手続に直接関与している管理者は、劇的かつ抜本的な変化が社内に起こっていると感じた。(中略)ところが、業績好調な事業部門の管理者は、この変化は不可避的であると考え、いまこそ会社を立ち直らせるために幾つかのこと(例えば、業績不振事業部門の幹部の早期退社)を行わなければならないといった。地理的に本部から離れていた一部の管理者は、何年も前から厳しい原価管理統制プログラムを実行させられていたが、本部では何も変革を実行しているようには見えなかった。また、組織文化の根本的な再定義を期待していた管理者やコンサルタントにとっては、何の変化も目に移らなかった」

E.シャインが挙げている例は、当然といえば当然です。何を変革しなければならないのか、抵抗や潜在的影響をどう測定するかは、人によって異なるのです。ですから、変革の目的と何を変革すべきなのかについて、変革を推進しようとする人たちが明確に意識し合意しておくことがとても大切なのです。そして、ある変革戦略が実効を上げているかどうかという議論は、どのような変革プロセスを選択したかにも影響を受けます。変革プロセスについて、E.シャインは代表的な5つのプロセスを取り上げています。

  • 一般進化プロセスとしての変革
  • 順応あるいは学習プロセスとしての変革
  • 治療プロセスとしての変革
  • 革命的プロセスとしての変革
  • 管理されたプロセスとしての変革

5つに対するE.シャインの解説は、簡単に済ませているものから詳細に説明しているものと異なる分量を割いています。次回からこの5つに焦点を当ててみていきます。

参考文献

「組織文化とリーダーシップ;E.H.シャイン」

 

この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。