• 組織文化とOD㉕:組織文化の変革⑧ ~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-223~

組織文化とOD㉕:組織文化の変革⑧ ~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-223~

前回のODメディアから、計画的組織文化の変革は具体的にはどのような方策があるのか、実際に行われた12の介入策に焦点を当てています。今回は6番目の「大勢のグループを参加させる対話の機会を数多く設ける」からです。

 

  1. 大勢のグループを参加させる対話の機会を数多く設ける
    • 組織文化の変革は、組織全体の個人に組織文化の目標、ねらい、内容について直に触れさせ、自分たち自身がどのように仕事に向き合っていくかを学んでいくことが重要です。方法としては、全社員集会のような大規模な集まりの場を設けるということもありますが、部門や課単位で実施する方が効果的です。ファミリートレーニングという方法を活用することも有効です。
    • このような方法は、ラージグループ・インタベンションとか、対話型組織開発と呼ばれることがあります。

 

  1. 大規模で、集中的な教育訓練
    • 従業員を組織だった訓練の場に、全員を短時間で集中的に参加させることは、新しい組織文化の意味合いや、仕事方法の変化を学習することに役立ちます。
    • 英国航空は民営化に際してサービス研修を全従業員に対して実施しました。スカンジナビア航空もサービスを重視し、「わが社には1日3万回もの真実の瞬間」があるといって、顧客接点の質向上を積極的に推進しました。従業員には「真実の瞬間」での対応力を高める訓練を実施しています。

 

  1. 人々が自分の行動を振り返れるフィードバックプロセスを構築する
    • 人々に行動の変化を期待できるのは、行動に対する意味のあるフィードバックが絶えず行われている場合です。フィードバックは、日々収集される顧客の声であったり、定期的に実施される顧客アンケートや従業員サーベイであったりします。
    • 職場単位で自分たち自身の行動について定期的に振り返り、それについてメンバー全員で話し合える機会を設けることも効果的です。

 

  1. 起業家精神が発揮できるよう必要な組織構造の変革を実施する
    • 従業員に自主性や起業家精神を期待しても、彼らを機能別組織に縛り付けて置いたのでは、それは不可能です。組織構造や制度もそれが新しい文化と整合が取れるようになっておくことが必要です。
    • NUMMIの例で紹介したように、人材価値を重視した経営をするなら採用から配置、製造工程、評価、監督者の在り方などが経営哲学を具現化するように設計される必要があります。

 

  1. 目標設定や評価といったマネジメントプロセスを整える
    • 目標設定、予算策定、業績測定といったマネジメントプロセス(日本では、目標管理プロセスとして理解されていることが多い)を、新しい組織文化に一致させる必要があります。
    • 多くの企業で実施されている1on1あるいはグループでの業績評価ミーティングは、組織文化の狙いを伝えていく上でも重要な機会となります。

 

  1. 新しい組織文化を支える報酬制度を整える
    • 報酬制度は個人の行動選択に強く影響します。何を評価し、どのようにプラスの報酬を提供するかは、組織文化の目標と一致しておく必要があります。例えば、組織文化がチームを重視するモノであれば、個人評価だけではなく、チームの業績に応じた報酬体系を設計するということが求められます。

 

  1. 必要であれば個人への介入を実施する
    • 個人として大きな変化を成し遂げようとする意志と能力のある人たちには、それに応じた支援と指導を提供する事が求められます。逆に抵抗を示す人たちには、断固とした処置を取ることも求められます。

 

この12の介入策をどのように組み合わせて実施するのかは、各社の状況によって異なりますが、肝に銘じておかなくてはならないことは、一つの介入策だけで組織文化を変革することは、やはり難しいということです。そして、根気よくテコ入れをしていくことが求められます。どうしても短期的財務目標の誘惑に負けたり、新任の経営トップが個人的な野心を表明し、望ましい組織文化と異なる施策を打ち出したりすることがあります。実際の経営を担う人たちには悩ましいことですが、経営目的やそれを支える価値観について揺るぎない信念をもって事にあたることが求められます。(続く)

参考文献:「不連続の組織変革」D.ナドラー、R.ジョーンズ、A.ウォルトン

 

この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。