• 組織文化とOD⑳:組織文化の変革⑤~ 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-219~

組織文化とOD⑳:組織文化の変革⑤~ 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-219~

組織文化の変革について、前回までのODメディアでE.シャインやC.オーライリー、J.フェイファーの実体験および個別企業の研究から、その効果的な方法を理解しようと努めてきました。このような研究から変革のプロセスの実態に迫り、毎日のある意味「面倒くさい」意思決定や人間関係への対応の積み重ねがいかに大切かについて学びました。事例はいずれも経営リーダーシップに焦点が当たっていますが、あなたが組織の一担当者であれば、組織内のパワーをいかにうまく使っていくかという政治的対応も求められます。これはその時々の経営陣や上司の心理状態や経営実績などを考慮して試行錯誤しながら進んでいくものでしょうが、とはいえ一般的にはどのような変革プロセスがより効果的で適切なのかを理解しておくことは重要です。今回から、「組織文化の変革計画」を立案する上で参考となるステップと具体的活動について見ていくことにします。

ただ、組織文化の計画的変革は、それが単体のテーマとして取り上げられることはほとんどありません。例えば、組織的不祥事という問題を考えてみましょう。そこでの問題解決は不祥事の撲滅であり、組織文化の変革がメインテーマではありません。しかし、不祥事の撲滅にはその組織の根底にある「仮定:暗黙の了解事項」を変革する必要がほとんどです。

例えば、安全活動を形骸化させないために、組織文化に根ざした組織メンバーの「心の環境」について注目する必要があるのではないかという指摘があります。Hofstede et al. 1990の研究によれば、価値観は国によって異なるのに対して、行動パターン(慣行)は組織間においてより顕著に異なっていることを明らかにしています。私たちがある組織で仕事をしていこうとすれば、その組織が持つ固有の組織文化(慣習、慣行)に沿うように行動することが求められます。そういった意味で組織文化のありようは、人々の思考と行動に強く影響を与えるのです。岡本浩一(東洋英和女学院大学教授、2001年)は、このような風土を属人的組織風土と呼んでいます。

属人的組織風土とは、事柄の内容よりも、誰がその事柄を提案したか、誰が推進しているかなど、一個人をインデックスとした判断が主流となる風土のことです。「あの人が言うから間違いないだろう」とか、「彼の意見ならば従っておこう」などという、発言者の属性に依存した、いわば思考を停止した状態で物事を決める慣行を持つ風土を指しています。つまり、ある個人の能力や人的ネットワークに全面的に拠って意思決定を行う状態です。属人的風土の特徴を測定する代表項目(科学技術振興事業団/社会技術研究システム心理学研究グループ)は以下のようなものです。

  • 相手の対面を重んじて、会議やミーティングなどで反対意見が表明されないことがある。
  • 誰に頼まれたかによって、仕事の優先順位が決まることが多い。
  • 会議やミーティングでは、同じ案でも、誰が提案者かによってその案の通り方が異なることがある。
  • 仕事振りよりも好き嫌いで人が評価される傾向がある。
  • トラブルが生じた場合、「原因が何か」よりも「誰の責任か」を優先する雰囲気がある。

 

属人的風土の中では、以下のような特徴も見られます。

  • 反対意見が言い辛い。
  • 上司が誤りを認めたがらない。
  • 上司の苦労話をよく聴かされる。

 

もうお分かりのように、ハイフェッツが言うところの「技術的問題」であれ「適応を要する課題」であれ、どちらにしても何度も同じような問題が出現する・繰り返されるということは、単に知識やスキルの問題ではなく、問題解決には、その組織の「文化」を取り扱わなくてはならないことを示しています。前置きが長くなりました。以降、組織文化の変革計画ステップについて見ていきます。計画的ステップといっても、実際は行ったり来たりするものですが(もういい加減、早く示せという声が聞こえてきそうです)。

 

【ステップ1.新しい組織文化のビジョンを策定する:変革内容の明確化:Vision】

【ステップ2.変革対象を設定する:What】

【ステップ3.介入方法を策定する:How】

【ステップ4.具体的スケジュールを計画する:When、Where】

次回のODメディアから、4ステップの詳細を見ていきます。(続く)

 

この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。