• モメンタムをマネジメントする 閑話休題としての実践編 ~ソモサン第289回 ~

モメンタムをマネジメントする 閑話休題としての実践編 ~ソモサン第289回 ~

先だって東海地区にある県知事が辞職しました。その主因はいわゆる失言でした。その要旨を紹介すると、「実は県庁というのはですね、別の言葉で言うとシンクタンクです。毎日毎日、野菜を売ったり、あるいは牛の世話をしたりとか、あるいは物を作ったりとか、ということと違ってですね、基本的に皆様方は頭脳、知性の高い方たちです。ですから、それを磨く必要がありますね」というものでした。この発言に「職業差別しているのか」という抗議の声が上がります。これに対する知事の釈明は、「自身に職業差別の意識はなく、不適切な発言だとは思っていない。しかし、誤解を与える、あるいは、不愉快な思いをさせたのなら申し訳ない。とはいえ、原因は、全体の流れを見ないで切りとり報道をするメディアの姿勢だと考える。こうしたメディアの風潮に憂いを持ち、知事を辞職することとする」といった内容です。そしてこの釈明に「納得いかない」と大きな抗議の声が上がります。

さてここからがモメンタム・マネジメントにおける第一段階の「信頼を作る」ための入り口にある「人の気持ちを読み取る」シグナル・マネジメントの実践のご紹介です。これは上記の話を専門家が分析したコメントを引用しての展開となります。

『釈明会見冒頭、記者に問題とされる発言の真意を質問されたとき、知事は、言葉では「差別意識は皆無」と言いながら、軽く口角が引き上げられる幸福表情を生じさせました。それがなぜ幸福なのかはわかりませんが、誤解を招くような発言の真意を伝えるシリアスな場面ですので、真面目な顔で伝えるべきでしょう。笑っていると「ヘラヘラしている」と見られ、さらに誤解されてしまうのではないでしょうか。一方、別の記者に「問題発言をしたという認識はあるか」と問われ、「不愉快な思いをさせたなら申し訳ない」と言いつつも、知事の顔には謝罪を意味する、悲しみ表情や恥表情は生じません。そして、全体を見ず一部だけを切りとるメディアの報道姿勢に責任を帰します。知事は、本来での訓示での発言の趣旨は、「県に奉仕する公僕として、しっかり勉強してください、体も鍛えてください、芸術を愛する人間になってください」であるとし、「歓迎、励ましの言葉であった」としています。

しかし、全体の流れ、文脈を追っても冒頭の発言は、差別発言と捉えられてもしかたないように思われますし、続く別の記者からも同様のことが指摘されます。この指摘に知事は一瞬眉が引き上げられる驚き表情や眉間にしわが寄る怒り表情を生じさせます。驚きは自分の想定とは異なること、怒りは障害に対して生じます。知事は、「自分は問題発言をしていない」と本当に思っているのだと考えられます』。如何でしょうか皆さん、ここにはこの知事が持つ価値観レベルでの姿勢が序実に現れています。思想信条的な姿勢です。私的にはこれを「選民思想」と呼んでいます。続けましょう。

『さらに知事は、県広報課に「農業・畜産に関わる人の知性が低いということですか」という声が多数寄せられているという指摘に、知事は鼻にしわを寄せ、嫌悪表情を生じさせます。嫌悪は、不快に感じるモノ、拒否したいモノに対して生じる感情です。受け入れがたい指摘なのでしょう。実際、この表情の直後、この指摘を「読売新聞の報道のせいだと思っています」と言います。この後、知事は「切りとりだ」、記者は「切りとりではない」としばし応酬が続くのですが、知事の表情に再度、嫌悪感情が生じます。自身の発言の真意が伝わらず、不快感を抱いているのだと考えられます。最後に今後の対応を問われ、メディアの風潮を憂い、突然の辞任発言をし、会見を終えます。このとき、知事は軽く口角が引き上げられる幸福表情を見せます。「これで皆さん満足でしょう」という意味でしょうか。単なる社交としての笑顔でしょうか』。さてこの態度に対して皆さんは、この知事の真意をどの様に捉えますでしょうか。少なくとも自分の思考に合わない声には全く耳を貸さないという強いバイアスの人であるのは確かです。少なくともマネジメントが出来るような人材ではありませんよね。そして

最後にこの知事は「辞任理由は失言ではなく、リニア問題だ」と発言しました。その時の表情は「切り取りだ」と主張した時の嫌悪表情でした。この信念レベルで人の意見を拒絶する表情を見る限り、話題を逸らしてでも自分を保身しようとする姿勢が垣間見られます。

いずれにしても人の上に立つ人材とは思えません(面白いのはそういった人に限って他人を見下す姿勢を露にするのが笑止ですが)。この方は前職は大学教授でした。面白いのは、その時の学生の評判も同様の態度から嫌悪されてたという落ちがあります。「自分に甘く人に厳しい」これを人格的には「下品」と称します。典型的な利己的人材です。私的には何故こういった人を教授にしたり知事にするのかといった巷の社会の風潮が全く分かりません。怠惰と云った言葉が一番合うように思うのですが。企業においてもマネジメント能力のない人が年功的に、或いは技術能力での評価でマネジャーにして、組織に見えなくても大きな損失を生み出しています。日本はもっとマネジメントというものに真摯な意識を持たないとグローバルからは維持されてしまうと憂いるところです。

ただこの方の前の知事は、私も当時その県の県民でもあり実物を見かけたこともありますが、非常に温和でさりげなく人を援助する動きをされる人格者でした。今回の県の顔の姿を真に嘆かわしく思ったのは残念の極みです。

いつもはここで演習に入るのですが、この段階でもう2千文字を優に超えてしまいました。ということでそれは次回にしたいと思います。次回は傾聴についてです。

傾聴とは、「相手の意思を正確に受け取る」ということです。相手の云いたいことが理解でき、かつ伝えたいことが思うように伝えられてこそコミュニケーションです。そういった意味において、傾聴は伝達とセットで見ることが重要です。

 

それでは次回もよろしくお願い申し上げます。

 

さて皆さんは「ソモサン」?