コミュニケーション力を高める①

新卒に求める能力として毎年上位(1位)となるコミュニケーション能力ですが、今や新人に求めるものに留まらず、ビジネスをする上で誰もが必須になる能力、かつ高めていきたい能力になっています。今回はそんなコミュニケーションに関連する話題を提供していきたいと思います。

コミュニケーションとはそもそも・・・

コミュニケーションという言葉を私たちは普段多くの場面で使っていますが、その分この言葉には様々な意味合いが含まれています。ここで改めて「コミュニケーション」の定義を確認していきましょう。

1.Communis=Public=Share(分かち合う、共有し合う)の意味がある

コミュニケーションとは、ラテン語のコミュニス(Communis)が語源だといわれています。「共通したもの」というのが元々の意味だとされています。別の説では共有物であるCommonという言葉が語源とされていますが、いずれにせよ、共有、共通という意味合いですので、“会話”だとかや“話すこと”とはニュアンスが異なる意味合いを持っています。

2.Symbolic(記号の)、Semantic(意味の)の両面がある

これらはコミュニケーションを取る中で留意しなければならないポイントです。

言語でやり取りされるコミュニケーションにおいて、記号としての側面でいえば、そのコミュニケーションは報告/事実なのか、推論/意見なのか、断定/感情なのかを識別しなければなりません。仮に昨対比10%アップの売り上げを伸ばしていたとして、営業会議で「今期の売上が好調である」という言葉が発せられたとき、報告/事実として述べられているように感じますが、人によっては10%“しか”伸びていないと感じることもあります。この場合、事実というよりは発言者の断定/感情ということができます。もし報告/事実としてコミュニケーションをとりたいのであれば、「今期の売上は1億で昨対比10%アップです」とのように具体的な言葉で発言する必要があります。もちろん「好調だろう」というやりとりであれば推論/意見になります。

さらに、使われる言葉の意味としての側面でも注意する必要があります。言葉には内包的な言葉と外延的な言葉の二つがありますが、内包的な言葉とは様々な意味を含む言葉のことで、外延的な言葉とは指し示す範囲や意味が限定されている言葉です。「お茶」という言葉を聞いたとき、何をイメージされるでしょうか。人によっては「紅茶」「緑茶」「ウーロン茶」それぞれ連想するかと思いますが、これが内包的な言葉です。外延的な言葉とは反対に「ダージリンティー」というように意味が限定される言葉がそれにあたります。

3.Verbal(言語的)、Non-Verbal(非言語)側面がある

コミュニケーションにおいては言語で発するやりとりと、言語以外でやりとりすることがあります。外見や行動が言語以外(Non-Verbal)に含まれるでしょう。ビジネスにおいて多くの方がスーツを着用していますがそれは会社組織における人と人とのコミュニケーションということができます。例えばビジネスをする相手がスウェット姿をしていたらその人物と分かり合える(コミュニケーションが取れる)とは感覚として抱きにくいのではないでしょうか。また、マナーとしてお辞儀や会釈が日本社会にはありますが、廊下ですれ違って会釈をする、というのも非言語としてのコミュニケーションということができます。

4.Logic(論理)、Feeling(感情)、Behavior(行動)で構成している

コミュニケーションを構成するレベルとしてはこの3つのレベルが存在します。頭を使って、考えや知識、言葉のやりとりが論理のレベルですし、思いや表情、気持ちが伝わるなどは感情のレベルのやりとりと言うことができます。動きや所作などは行動レベルにあたります。コミュニケーションにはこのようなやりとりのレベルがあるということです。

5.Personal(対人的・個人的)なものである

コミュニケーションは人間がいるから発生するもの、人間が発するもの、受け取るものとする非常に俗人的な側面があるということです。

 

コミュニケーションでは以上のような性質がありますが、非言語を高めるマナー研修が実施されるのも、ロジカルコミュニケーションといわれるものが強化されるのも、それぞれの要素を個別に高めていくアプローチを取っているのです。

コミュニケーションについて問題に直面した際、コミュニケーションそのものを分解し、改善するポイントを探る場合上記のいずれか、または合わせて考えてみると良いと思います。

 

他者を理解するレベル

では具体的にコミュニケーション力といわれるものを改善していく一つの手段や方法論、コツをご紹介します。

本質的な要素は上記で述べましたが、実際にコミュニケーションが行われる現場においては、自己理解、自己表現、他者理解の3つが行われています。そしてこの3つは自分自身のメンタルモデル(固定観念)が非常に影響している項目であり、看過できない概念ではありますが、今回はその中でも他者理解についてポイントをご紹介したいと思います。他者と良好な関係を築くポイントは傾聴(すなわち他者理解)が重要になります。これは分解していくと以下の4つのレベルがあります。

①    評価的理解

これは会話の中で、「だからA氏はダメなんだ」とか、「B氏って●●だよね」というような相手を評価する態度で聞く姿勢を指します。人や物事を“良い”や“悪い”で判断する理解の仕方のことで、人が傾聴をするうえで最も浅いレベルの段階です。

②    分析的理解

評価から一歩踏み込んで分析的に相手を理解する態度のことです。「A氏は学生時代●●だったから、ダメなんだ」「B氏はこういう言動が多いから●●だよね」とその人のことを何かに紐づけながら推察をしていく理解の仕方です。評価的理解よりも、より相手に近づいた理解・傾聴と言えるでしょう。

③    同調的理解

さらに相手に寄っていき、同調をしていく理解の仕方です。「●●を新たに進めるのは辛いです。」「そうだよな。時間もない中で難しいよな。」などのやりとりが同調的理解ということになり、さらに理解・傾聴のレベルが深くなります。

④    共感的理解

相手に対して共感の姿勢をもって理解していく態度のことを指します。相手の発言に対して意味や気持ちをすり合わせていくやりとりが共感的理解につながっていくのです。「●●を新たに進めるのは辛いです。」「時間が足りないと感じて、●●を進めるには余裕がなくてあなたにとって気分が乗らないということだよね。」というようなやり取りがそれに当てはまります。相手の真意や言いたいことを同じ目線で見ているというところがこの理解の重要なポイントとなります。

ちなみに、共感的理解のコツは自分の固定観念を捨て、相手の考えに乗ってみることです。よく「相手の靴を履いてみる」と例えられることがありますが、相手の靴を履くためにはまずは自分の靴(=固定観念)を脱がなければなりません。その状態で相手の履いている靴を履くと、その温もり、フィット感等を初めて感じることができるのです。

 

コミュニケーションにおいて傾聴が鍵だとされていますが、日ごろの他者とやりとりをする中で相手を理解するスタンスを見直してみることが重要です。部下とのやり取り、同僚とのやり取りで評価的理解しかしていない傾向や、共感しているつもりでも同調までで留まってしまっているケースを良く見かけます。時と場合によりますが、相手に対してこのような共感的理解をしていくことが良好な関係を築くためのポイントになります。

 

※この記事は2部構成です。コミュニケーションを高める②はこちら