コミュニケーション力を高める②

※本記事は「コミュニケーション力を高める①」の続編です。

理解することを理解する

現代のビジネス環境において、多くがロジカルコミュニケーションに重きが置かれている傾向がありますので、非ロジカルな気持ちや感情の側面を理解して他者と良好な関係を築くことは、実際見落とされていることは多いと思います。したがって相手の言っていることの意味や気持ちを傾聴して関係性を高めていくことは非常に重要なのです。

一方、実際のコミュニケーションは“良好な関係”だけでは成り立たず、“会話の内容”理解をしていくことも重要です。ここでもう一つの理解の枠組みが必要になってきます。

通常我々はビジネスにおいてはロジカルな(論理的な)会話を求められます。複雑な状況の中で答えを出していかなければならない状況が故、不明瞭な事柄を線で結び付け整然と“分ける”ことで明瞭にしていくことが必要です。つまり、理解するということは“分かる”ようになるということです。

このような理解のしかたを論理的理解とする一方で、“ストーリーとして了解する”=“わかる”という概念を、米国の心理学者ジェローム・ブルーナーが唱えた物語的理解という理解・思考の様式があります。

これらは相補的な概念になっているわけですが、論理的理解は「A、だからBになって、Cという結果になる」という思考体系をしており、「少子高齢化で労働人口が少なくなり、新卒採用が難航している」というような理解の仕方はまさにこの論理的理解といえます。

一方物語的理解は「A、そしてB、そしてCになる」という思考体系をしていて、「午後には雨が止んで、電車に傘を忘れた。家に帰るころにはまた雨が降ってきたので、駅から徒歩2分の自宅との距離だがコンビニで傘を買って帰った」という解釈は物語的理解といえます。ここで皆さんはどのように理解をされましたでしょうか。「雨が止んだ⇒電車に傘を忘れた。」「再び雨が降る⇒コンビニで傘を買って帰った。」と因果関係を連想して解釈をするのは論理的理解です。しかし、雨が止んだことが傘を忘れる直接的な原因でしょうか。再びの降雨について徒歩2分ほどで自宅に帰ることができるにもかかわらず、なぜ傘を再び購入するのでしょうか。これらを正しく解釈するためには、因果関係を念頭に置く論理的な解釈では限界があり、行為の理由を背景とする物語的理解によって解釈することが必要になります。

振り返ってみると、普段の職場の人たちとのやり取りの中で、論理的な理解のみを実践しているわけではないかと思います。プライベートな出来事を話すときには特にこの物語的理解の要素が強くなる傾向があり、人間関係を円滑にする一つの思考様式となっているでしょう。

この物語的理解が上記の共感的理解のレベルにおいては非常に重要な理解の仕方になると考えています。「●●が辛いです。」の気持ちを共感する際には、ただ“辛い”気持ちを理解することが必要です。その際に理解する枠組みは論理ではなく、一連の出来事や感情をストーリーとして理解する、ということが必要になってくるのです。

 

良好な関係を築くためのコツ

コミュニケーションを高めるために、マナーやロジカルシンキングを高めていくことは重要なことです。一方で、人と人とのやり取りという性質を考えていくと、そこには固定観念として存在する様々な枠組みがありますので、一つ一つそれらを解明し、理解していくことが、コミュニケーションという複雑なものを高めていくアプローチにつながっていくのです。

一方で何かのきっかけで、円滑にコミュニケーションが取れるようになることもあります。言い方一つ、行動一つで変わっていくので、ちょっとしたコツを身に付けることも有効に働くこともあります。

 

人間関係を良好にするための一つの方法として会話のトピックで変わることもあります。そんなトピックのコツをご紹介します。

人間関係の距離というのは会話の内容やトピックで変わってきます。あの人と距離を感じるな、お客様ともっと親密になりたいという場合に、会話の内容について振り返ってみることが一つの関係をよくするポイントの一つです。

AとBという二人の人間がいるとき、二人の会話のトピックはⅠ~Ⅴの段階において、Ⅴにいけばいくほど関係は良好になっていきます。

:AとBのどちらも経験していないトピック。例えば歴史上の人物の話など現在とはかけ離れていることについて話していたり、お互いあったことのない人のことについて話していたりする場合。

:Aは経験しているがBは経験していないトピック。例えばAの仕事での出来事の話や、Aの家族のことについての話のことですが、Aの一方的な経験の話なので、両者の関係はまだ遠い状態です。

:AもBもどちらも経験したことについてのトピック。二人とも気に入っているテレビ番組や、二人がともに過ごしたイベントについての話であれば、同調的な関係が築かれ、距離も近づいていきます。

:二人で経験を共にした最近の出来事や、当面の出来事で感情面の体験のトピック。同じ職場での経験や、共に苦労した経験などは、関係がかなり近づいていることになります。「あのとき二人で○○したけど大変だったよな。」などの会話は傍から見ても親密になっているように感じると思います。

:相手に対する現在の自分の感情(AがBをどう思っているか、B自身がAをどのように思っているか)についてのトピック。「Bはいつも●●するし、尊敬しているよ」「Aは私のことを怖がっていないか?」などの会話がなされている状態は非常に親密度が高いと言うことができます。。

 

このように順を追っていくと、人間関係が徐々に親密になっていく様子を会話のトピックで感じることができるかと思います。つまりは親密になるにはレベルⅤのお互いの、お互いの感じていることを話してみると良いのです。

相手のことを感じる通りに相手に伝えてあげることは、やってみようとすると意外に難しいことです。そもそも相手に関心がなければ相手に対して感じることができませんし、さらにそれを伝えることもできません。良いことでも悪いことでも相手のことを思いやっていなければ単なる評価になってしまいますので、注意が必要です。

いずれにせよ、日常の話題を少し変えてみるだけで、関係を縮めることができるので、試してみることをオススメします。

 

コミュニケーションの本質から、他者理解、理解の仕方、会話を変えて関係を変えるコツをご紹介させていただきました。これらはコミュニケーションといわれいるものの一側面でしかありません。けれどもちょっとあの人とコミュニケーションが取りにくいな、自分のコミュニケーション力を高めたいとする場合にこんな振り返りの観点も考えてみると良いと思います。