そもそも組織開発(OD)ってなに?

VUCAと言われる時代において、経営の舵取りはますます難しくなっています。どんな戦略を描いたら良いのか?どのように組織をマネジメントしたら良いのか?我が社の将来に向けて今何をしておくべきか?こうしたお悩みはますます経営者・経営幹部の皆様に重くのしかかっているように思います。こうした中で各社で「組織を戦略遂行に向けてデザインする」ことに関連する部署が新設される、など「組織開発」に対する関心が高まっていると感じます。

今回は、「組織開発」を検討していかれる方に向けて「組織開発」の本質的な役割を考察しながら、その使いどころを解説したいと思います。

グループ・ダイナミクスの起源と基本的な概念

まず最初に質問です。「組織活動の最小単位は何か?」と聞かれたらみなさんはどのようにお答えになるでしょうか?様々な企業で研修会などをご一緒しているとほとんどの方が「社員(一人ひとりの個人)」と答えます。組織の中には役員や社員(従業員)がいてそのひとたちの考えを持って組織が動いていくので、もちろんこの答えは正解と言えます。しかし「組織開発」の文脈では答えは変わってきます。なぜかというと「組織開発」では、人と人が集まった「集団」を最小単位と捉えているからです。そしてそれが「組織開発」という取り組みの最大の特徴となります。その「集団」が個人の行動に影響を与える様々な作用にフォーカスし、それをポジティブな方向に修正・調整(時には変革)する活動が組織開発と言っても良いでしょう。

この「集団」が個人に与える作用を日本では「集団力学」と言いますが、グローバルでは「グループ・ダイナミックス」と言われています。皆さんも言葉や大まかな概念はご存知かもしれませんが、「グループ・ダイナミックス」は、もともと20世紀初頭にドイツで生まれたゲシュタルト心理学の研究から生み出されました。ちなみにゲシュタルトとは、「形状・枠組み」といった意味で、体系だったモノや概念を外から俯瞰した有り様を言います。あたかも集団を一つの「体系」として捉えて、それがおよぼす様々な現象や影響に対する研究が続いています。

つまりゲシュタルト心理学とは人の心理を分解・分析的に分けるのではなく、全体性を持った構造的なまとまりとして捉える考え方です。そしてその構造的なまとまりの影響を大きく分けると、グループ・ダイナミックスの「牽制作用」と「相乗作用(効果)」という2つが存在しています。

まず牽制作用についてですが、一般には「集団規範」と言われています。集団規範とは、集団の中で「~するべきである」と多くの場合、暗黙の了解で、強制される行動パターンです。例えば、エスカレーターを大阪の人は右側に乗り、それ以外の地域の人は左側に乗る、という地域特有の習慣があります。そして東京ではエスカレーターで急ぐ人は右側を通りますが、大阪では左側を通ります。仮にみなさんが大阪で移動する時には、左側に乗り、そのまま先に進まなかったとしたら、急いでいる周囲から「早く行ってよ・・・」という圧力を無言ながらに感じるのではないでしょうか。この誰に何を言われたわけではないのに感じる圧力は集団規範が生み出しているものです。「この業界のしきたりは」とか「我が社の流儀は」といった約束事は皆さんの周りでも数限りなくあることだと思います。そしてそれが無言の圧力となり、誰から何を言われたわけでもなく一人一人の行動に影響を与えていきます。

次に相乗作用(効果)は「チームワーク」にみられるような集団内での感情の高まりです。例えばスポーツの場面で全員が一致団結して試合に勝とうとするシーンはわかりやすいですが、ビジネスのシーンでも、頑張っている人に刺激を受けて、自分も頑張るようになり、それがまたほかの人を刺激して気づけばチームが目標達成し、達成感を分かち合えた、という経験を持っている方も多いのではないでしょうか。これは専門的には「集団凝集によるエネルギーの感染」とも言え、グループ・ダイナミクスの大きな影響力の一つです。

グループダイナミクスが個人に及ぼす悪影響:認知的不協和

グループ・ダイナミクスにおけるネガティブ的な側面は、その力が過剰に働くといわゆる「村八分現象(仲間はずれ現象)」や「集団パニック・ヒステリー」のような弊害を生み出すことが多々あります。

人はもともと社会的な存在です。社会的な存在というのは「一人で生きていくのではなく、集団を作って、人と関わり合う社会的な活動をすることで、お互いの生命や種を守ろうとする意思を持っている」ということです。

つまり生理学的・遺伝的に何らかの障害が無い限りには、人は「群れようとする」「群れに帰属しようとする」本能を持っています。そしてそれは、「群れの一員であろうとする(同化しようとする)」行動につながります。

「認知的不協和」という考えがあります。人は集団の中で、自分の信念と異なる行動をしてしまうと、心にしこりが残ります。その心のしこり(不協和)を解消しようとして、自分の信念を集団規範に合わせて変えてしまうような反応をします。つまり人は集団の中で生き残るために、たとえそれが信念を曲げた行動であっても、自分の行動を自己正当化しようとするわけです。まるで自分で自分に言い訳をしているような状況になります。こういった反応は皆様の身近にもたくさんあるのではないでしょうか。

このように自分の選択の正しさを自分に言い聞かせ内面の不協和を解消しようと反応するため、集団に帰属しようとして取った行動は、自分の心すらも時に蝕んでいってしまいます。

こういったグループ・ダイナミクスの作用を受けた心理から発生する悪影響は日常の至る所で見られます。日常の例でいうと、政治家の方の演説を見ていて、当選当初は非常に熱い思いをもち、有権者へのメッセージ力も強いと感じられた方が、信じられないようなスキャンダルで謝罪している様子は身の回りに溢れています。こうしたことも認知的不協和の一例と言えます。最初は正義感や理想があっても、現実と言われて利権構造などの渦中に入り込んでしまうと、その行為や自分自身を正当化し始めてしまうのです。それがずっと続くとまるでスターウォーズの世界でいうダークサイドに堕ちるかのように、そこの集団の色に染まっていってしまう訳です。「朱に交われば赤くなる」という訳です。当たり前の話ですが、まじめで純粋な人ほど「不協和」を嫌うため、そうなる度合いが強い傾向もあります。

こうした例からもわかるように、信念がある人ですら、もともと信念を失いやすい構造が組織や集団にはあります。そもそもあまり自分の信念などの強い自覚がない方が安定化された組織・集団の中にいて周りに「染まらない」方が不自然とすら言える問題なのです。

残念ながらコンサルティングにより企業組織様にお伺いをしていると、使命感や責任感をあまり感じられず、自己中心的な行動ばかりする人が、信念・問題意識を持って利他的に行動してきた優秀なエースを排除してしまうような場面を見ることが少なくありません。組織・集団が健全な信念を押しつぶす方向に働き、本来の価値創造ができなくなる、というのは、非常に残念ではありますが、宿命とも言えます。

グループダイナミクスの悪影響を回避する方法:「場」へのアプローチ(=組織開発アプローチ)

このようにグループ・ダイナミックスによって捲き起こる影響は多岐にわたります。これを細かく要素に分けて、問題解決しようとすると逆に複雑性が高すぎて途中で頓挫してしまいます。もっと悪いことにそこにいる本人たちが問題なのに問題と認識できていないことが殆どです。「我が社の常識、世間の非常識」とはいたるとこで叫ばれながら、我が社の常識を本当に批判的に捉え直すのは非常に難しいのが実情です。結果としてグループダイナミクスの悪影響は、何となく気づいていながら放置されがちな課題として残ります。

ではどうすれば良いのか?こうした課題は集団を最小単位と見て集団に働きかけていくことが最大の鍵となります。まさに「組織や集団」を「開発」するのです。

そしてこれらを実践していくためには、集団の外側から分析するのではなく、

  • 当事者自らがグループ・ダイナミクスに向き合う
  • 自分のこととして問題を理解し、集団内の人々と問題意識を共有する
  • 主体的に葛藤を恐れず周囲に働きかけていく

こうしたアクションが求められます。

こうしたアクションを起こす過程で、組織はその姿をどんどん変えていきます。そしてあらかじめ正解を設定し、それとのギャップを埋める「正解探し」ではなく、機会開発的に「より良い姿」を模索し、発展させていくことが決め手になります。これが組織そのものを一つの単位として成長させる「組織開発」というアプローチの真髄です。

組織開発においては、こういった自らが変化となり、その変化をマネジメントしていくような介入アプローチをアクション・リサーチ、アクション・ラーニングと言います。組織活動は個人の強化開発と行ったアプローチだけでは解決できない、集団内の関係性の問題の方が圧倒的に多いのが実情です。

関係性の問題解決に最も近い、個人の強化開発は「リーダーシップ開発」ですが、集団における関係的な相互作用はリーダーシップといった個人的な力のアプローチではカバーしきれない限界があるのです。

組織や集団という単位を「場」と言いますが、「場」がグループ・ダイナミクスを持っている以上は、その「場」にアプローチをしていく必要があります。

もし皆さんが自分の組織の問題解決が思うようにならないと感じているのであれば、集団という「場」に対する問題解決のアプローチが欠けているからかもしれません。

こうした組織・集団へのアプローチの効果性はいろんなば面で示されています。皆様の組織の戦略達成のためにどのようにアプローチされるのが良いでしょうか。もしこうしたことを企画されていくのであれば、これまで自分たちが当たり前に思っていることが周囲の人と話し始めるところからスタートしてはいかがでしょうか。どう変えるかが曖昧では組織開発の効果は半減します。もしそうした検討でパートナーをお探しでしたら

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