マイクロバースト法とJoyBizの実践的プログラムを考える

今年のソモサンも最後の回となりました。思いを持って書かせて頂きましたが、それが少々入りすぎて冗長になってしまったことは否めません。その様な拙文を熱心にお読み頂きまして誠にありがとうございました。
前回も触れましたが、今JoyBizは新しい動きに向けて準備を始めており、その一環としてソモサンの内容もリニューアルしていこうとしております。具体的にはスマホを主力としてコミュニケーションを取っていらっしゃる方々により読みやすい仕様にしていく所存です。ということで、今回のソモサンはこれまでの流れの最終回となります。
最後のテーマはマイクロバースト法による意識啓発と、アイデンティティの醸成を促進するアプローチについてです。今回はJoyBizとして長年研究開発してきた展開についてご紹介致したいと思います。

 

マイクロバーストの~細やかな内観と心の揺らぎ~

精神科医の川野氏はこれまでの専門的な知見から、「意識啓発に有効な情報を当事者の行動変容や成長につなげていくには、まずその情報に受け手がきちんと気付くか否かが重要」だが、それには「きめ細かく内観する力の醸成が必要である」と示唆されています。

きめ細かな内観とは、例えば日常での何気ない他者とのやり取りの中で「つい自己正当化の発言をしてしまう防衛的な態度」とか、「自分の誤った行為に対して合理化を無意識に発動させて詭弁を弄してしまうといった姿勢」の様な、普段は見逃してしまうレベルでの歪みを習慣的に丁寧に振り返ることです。

そして些細な事柄からでも自分の甘さや弱さを見つめ直し、小さな自己変革を積み上げていく行為だと言えます。川野氏は禅宗の僧侶でもいらっしゃいますので、その経験からも内観を軸とする坐禅や瞑想の効能を熟知されています。
また確かに、東日本大震災のような死に直面する大きな実存の危機を梃子にした自己改革といった「マクロバーストによる変化」はリスクも相当なモノで、押し潰されてしまう可能性も計り知れません。

一方で、日本のトップやミドルの多くにみられる心身分離的な姿勢はその姿勢自体が歪んでおり、そういった防衛姿勢の人が幾ら内観をしても入り口の所から真実を直視しようとしないわけですから話になりません。

甲南大学の西川教授は、内観する振りをして実際には内観をしていない人の深層心理を「心身分離・観念分離という屁理屈の正当化」と説明されています。

これは例えば深層では「自分にはどうせ出来ないと思いながら取り組んでいる」とか、「やりたくないと思いながら何となく行動している」という風に、「心を使命や目標にはっきりと向けて身を投じていない」実態の中で、そこまで深くは内観していないにもかかわらず、本人は「頭では理解しているのだが」と、一見自己理解は出来ているように自己認知している心理状態を云います。

こういった「したり顔のトップやミドル」が中核でいる限りには組織の改革や成長は当然為し得ません。権力に立ち向かってでも目指す目標を成し遂げるには、当事者にかなりの信念やそれを支えるアイデンティティが求められます。

その様な意識を醸成するには、相当の頭の切れ味が求められます。しかし実際には、それ以上に胆力が求められます。そしてその様な胆力を鍛えようとすると、自力的な内観では一定の限界が生じます。今まで現場をみてきた限りでは、弱いか自己都合に偏っている人が殆どです。

特に心身分離を誤魔化して自己正当化している、歪んだ心根の人が非常に多いのが実際の所です。これを是正するには、この歪みを「炙り出す場や演出」が必須になります。マイクロバースト法が持つ効能と意義もそこにあります。

 

具体的なマイクロバースト法

マイクロバースト法は、小さな心の揺らぎを多発的に起こす技法です。これまで最も深いアプローチとして知られたバースト法はTグループ法です。私の経験としてはこれが何処でも展開できるのであれば云うことはありません。しかしこの技法は相当の日数と相当のストレス状態の仕掛けを伴います。
日数的には最低1週間掛かります。また近年の人材は人生目標の希薄化が起因してストレスに対して非常に脆弱になっています。従って、今日においてこの技法を使うにはかなりの決断が要ります。余程組織的に逼迫していなければ実施は難しいと云えます。
マイクロバースト法はTグループ法とまでは行きませんが、それに近い心理的な葛藤、小さな実存の危機を複数回発生させることからより深く内観を促し、心を鍛えると同時にアイデンティティを醸成させるアプローチです。
具体的にはインストルメント(道具)を駆使することや集団力学を活用することで、様々な想定外の状況を演出することから、机上論ではない暗黙知やストレスを実体験して貰います。それによってより多角的で深い気づきや思考を導き出して行きます。
インストルメントを活用したプログラムとは、アクティビティやケース、インプロなどを状況的に組み合わせ、またエンカウンター的な集団討議や振り返り、自己プレゼンテーションを通してストレス状態を蓄積させます。
そして随時きめ細かく内観を行い、自分から逃げないと云うよりも逃げられない状況を演出していきます。そういった体感の積み重ねによって、頭ではなく心での自己理解・自己共感を生み出していきます。
現在JoyBizではこのプログラムを公開講座ELDという呼称で後継者育成や次期幹部育成に、年に一回実施していますが、来年からは企業内での教育やプロジェクト推進の促進剤として集中的に展開していきます。
例えば、これまでのレジリエンス・プログラムを集団や組織レベルでの活性化作りに適応させた「チーム・レジリエンス」や、プロジェクトの効果性を高める実践的なコンサルテーションである「プロセス・アーキテクト」という新プログラムをリリースします。

※チーム・レジリエンスは、変化への適応能力が高いチームを創造していくプログラム
※プロセス・アーキテクトは、プロジェクトリーダーへのコーチングやチームが抱えている具体的な課題の解決を通して実際の事業開発や成果創出を促進するコンサルタント派遣型プログラム

 

自分たち自身での創造性発揮と事業開発に向けて

今、新規事業や企業再生のための事業開発に向けて、外部のブランド・コンサルタントが持て囃されています。しかし事業開発や創造性は、本来企業内で最も重視されるべきコア・コンピタンスです。その開発に投資をせず、安易に外部に開発プランを委託するような経営は早晩行き詰まる事は必至です。

では何故その様な事態に陥ってしまっているのでしょうか。一つは拝金主義的な企業経営が広まっていることにあります。そして社内にアイデンティティや使命感を持った人材が激減していることも一因です。それは、社会の継続性を軽視した目先主義・利己主義を蔓延させてきた平成時代の残照といえるのではないでしょうか。

本当に社会はこれでいいのか、JoyBizはビジネスを軸とした人間社会の恒久的な発展に寄与しようと物事の本質的意味を問いながら活動していますが、来年からは上記のようなLIFTプログラムをより実践的に落とし込んだプログラムを展開しようと動き出しています。

ということで、本年は本当にありがとうございました。来年も引き続きJoyBizをご愛顧頂けますと幸いに存じます。

皆様、良いお年をお迎え下さい。来年新しい内容のソモサンでまたお目にかからせて頂きます。

 

さて、皆さんは「ソモサン」?