• 組織開発(OD)の実践って、どうするの?⑯ ~価値か、実利か~

組織開発(OD)の実践って、どうするの?⑯ ~価値か、実利か~

自分の人生を選択しているのは誰?

最初にみなさんに質問です。

「私の人生は、私の行動の選択の結果である」

この質問にみなさんは、どの程度同意できますか? 例えば、全く同意できない0点から、全く同意する10点の幅の中では、何点程度の同意ですか?

これは、私が20年ほど前にサンフランシスコで受けたエンカウンター・トレーニングでの最初の問いです。

組織開発という仕事に携わっている手前、「んん~。9点」と軽く言ってしまい、なぜ1点足りないのかを説明するのにえらく苦労した思い出があります。

「私の人生は、私の行動の選択の結果である:I am choosing everything.」は、中々に難しい質問です。

しかし、変化をマネジメントしていこうと考える人たちにとって、これはとても重たい問いなのです。それは、組織開発でも同じで、「変わっていこうとしないことを選択している組織や人々」に対して、「変わっていくことを選択させること」だからです。

つまり、今の状態であるのは、あなたの選択なんです。という事を、当事者が自覚できるかという問いですから。

      因みに、一応お断りしておきますが、児童虐待やDV被害はまた別の要因ですから(この手の話には、時々、なんでそこから逃げなかったの。というような言い方をする人がいますので。これはちょっと違うのでね)。今回考えてみたいのは、健康な大人集団に限定したお話しです。

ハーバード大学のロナルド・A・ハイフェッツは、リーダーシップを論じる時に、人々の態度や価値観/信念レベルでの変化を要する課題や問題を「適応を要する課題」と名付けています。組織の問題解決でよく間違うのは、「適応を要する課題」に対して「技術的な問題解決」をしてしまう事だといっています。例えば、グローバルで多様性を取り入れなければならない組織で、管理者にコミュニケーションスキルをトレーニングして「ちゃんとやってね」としているようなケースです。これでは、時間とお金の無駄遣いです。考え方そのものを変えていく必要があるのです。そして、適応を要する課題に対して、本当に適応していこうとするのは「覚悟がいるぞ」と言っているらしいです。

ところで、サンフランシスコでの2週間のセミナー体験では、いろいろな体験をしたのですが、その中の一つをご紹介します。それは、「除夜の鐘」です。

「除夜の鐘をつく理由は、人の心にある108の煩悩を追い払うためで、追い払ったら翌年からはまた新しい心で年を過ごす。」と説明したら、みんな唖然としていたのです。それで、改心できるのかって。

いや、本当の改心は「できないかも?」。でも、それで一度チャラにする。という感覚が「分からない」と言われました。欧米では、「分からない」のが当たり前かもしれませんけど。

キリスト教の世界では、贖罪というものがありキリスト教においては特に重要な意味をもつと云われます。広い意味では神の救済、償い、和解、ゆるしと同義で、キリストの生と死と復活を通じての、神の恩恵として実現される人間の罪からの解放と、これによってもたらされる神との交わりの回復をいうのだそうです。ですからすごく重い(少なくとも私にとっては)。

セミナーで、イギリスから参加していた女性が「自分の男性関係」について吐露した時には、彼女は取り乱していましたから。

価値を前提とする変化と実利を前提とする変化

で、何を言いたいかというと、日本は2000年の昔から、海外から様々な宗教・文化を取り入れて、それを日本に都合がよいように変容させてきたのです。そして、現在の私たちもそれを平気で受け入れています。例えば家に仏壇と神棚があり、クリスマスもお祝い(何のお祝いか別にして)する、なんてことをしている。要するに、ある意味「適応の天才」な分けですよ。

じゃこれだから、日本の組織において変革がたやすいかというと、そうとも言えません。「私の人生は、私の行動の選択の結果である」と言いながら、反面「私の選択に、あなた共感できる?」って気にするんですから。

共同体志向文化の日本人にとって美徳とされるのは周囲に馴染むことです。「他人が見ているよ」、「恥ずかしくないの」と育てられ、「どんなことをしても良いが、人様の迷惑になることだけはするな」と、訓戒されて成長するのです。

以前にも書きましたが、多くの日本人にとって、選択するという事は「何が正しく、何が悪なのか」という価値観による絶対的な判断ではなく、何が我が社/私にとって益になるか、ということなのではないか。要するに実利主義な訳です。価値を大切にする組織マネジメントより、我が社に役に立つ手法に関心が行くのは、こんなところにあるのではないかと思うのです。

あ~~~~~、愚痴ってしまいました。

※この記事の書き手はJoybizコンサルティング(株)波多江嘉之です。