• 組織開発(OD)の実践って、どうするの?⑨~「後は自分で・・・」の落とし穴:続編~

組織開発(OD)の実践って、どうするの?⑨~「後は自分で・・・」の落とし穴:続編~

組織開発(OD)の実践って、どうするの?⑧「後は自分で・・・」の落とし穴:前編で、「新しい戦略の実行は、①→②→③、①のスタート時点から組織開発アプローチを採用してみてはどうかと思うのです」と書きましたが、今回はそのことをもう少し深堀したいと思います。

組織の揺さぶり方を学習していない管理者

戦略と言っても、これまでの延長線上での経営戦略や事業戦略であれば、それを実行する強固な組織が出来上がっていますので、実行にあたっては「調整」程度の変更で済むし、人事で人が変わっても「引継ぎ」は割とスムースにいきます。

ところが、従来とは異なる方向性を出してそれを実行しようとすると、マネジメントは全く異なることに挑戦していくことになります。以前事例で書きました「JR九州」の事例はその典型です。

「安全に人とモノを移動させる」ことに全精力を費やし、コストが収入を上回れば運賃値上げを繰り返してきた組織で、「サービスを新しい競争力の源」とし「稼がないと赤字になるよ。企業会計に則ってマネジメントしてね」になったわけです。

これはほんと、パラダイムチェンジです。

こんな時に経営陣が担当部署やラインに対して、「後はちゃんとやれよ」だけではうまくいかない。なので、JR九州は「組織の人々の意識・態度・価値観を変えていく」ということにとても努力したのです。

マネジメントは、以前は、現在行っていることを安定的に遂行させることに重点が置かれていました。「秩序と効率」が重視され、組織は画一化された行動様式を持つようになります。

ところが、現代の経営戦略は「変化への対応」がとても大切ですから、新しい何かを打ち出して「組織を揺さぶる」訳です。ところが、「秩序と効率」の中で育ってきた管理者は「揺さぶり方」を学習していないのです。

下手すると揺さぶったはいいが着地しないとか、揺さぶってみたらうまくいかなかったということで元に戻した、ということもある。元に戻ると、次に揺さぶるのはすごく難しい。「どう~~せ、うまくいかんぞ!」というトラウマが根付いちゃってますから。

安全に自己探求ができる対話の場をつくる

新しい戦略を提示され、組織行動もそれに合わせて変えていかなくてはならない場合、具体的には「人の意識・態度・価値観」を変えていく「コミュニケーションの仕方」を、マネジメントは学習していくことが求められます。ところが、この教育やトレーニングはあまりやられていない。

大の大人だからこそ、「人の意識・態度・価値観」にインパクトを与えるコミュニケーションは、どんなもんなの?ということを学習する必要があります。それも、小出しの研修ではなく、一気にです。

「赤信号、みんなで渡れば怖くない」は、あながち馬鹿にできないのですよ。

※因みに、「人の意識・態度・価値観」にインパクトを与えるコミュニケーションは、成功してきた組織が変わっていこうとする時にこそ必要です。まだ成功していない組織は、成功方程式を学習するということが先です。

つまり、人が意識・態度・価値観を変えるということは、とてもリスキーなことです。特に同調圧力が強いといわれる日本では、自分だけ他の人たちと「意識・態度・価値観」が異なるというのは、よほど鈍感な奴ならともかく、普通の人にとってはリスクです。「お前だけ違うよ」と言われるのは避けたい。だから、逆説的ですが「やっぱりお前変わるの?」という状態にしないと変化が起こらないのです。

  • 本当の変化は「人々が心理的に安心したと感じるまで起こらない」
  • そのような安心感が与えられる条件は、
  1. どこに行こうとするのかということに対する共通の感覚が生まれること
  2. 危険な側面(罵倒されるとか、爪弾きにされるとか)はないと実感すること

このような場が形成されて初めて、人々は自分が持っている「偏見(バイアス)や信念体系」を探求し、見直すことができるのです。

このように、自己探求ができる能力が開発されたチームや組織は強くなります。それも、個人のみが自己探求するのではなく、チームでチームの「偏見(バイアス)や信念体系」を探求できるようになると、変化に柔軟に対応できる能力(レジリエンス)が身についてくるのです。

こんなアプローチや進め方を戦略の実践に取り入れたいですね。

 

※この記事の書き手はJoyBizコンサルティング波多江嘉之です。