• 組織開発(OD)の実践って、どうするの?③ ~抵抗問題への対処~

組織開発(OD)の実践って、どうするの?③ ~抵抗問題への対処~

米国での先行研究によると、75%の組織変革は失敗しているといいます。特に、「リーダー(トップマネジメント)が何を変えるかを決め」、「スタッフが変革のプロセスを管理する」場合、ほぼすべてが失敗しているのだそうです。

 出典:歴史的視点から、ODの将来をイメージする

     ジャービス・ブッシュ(サイモン・フレイザー大学:カナダ)

     永石 信(中京大学:日本)

 

とはいえ、「今のままじゃ将来がない。何とかしていかなくては」と、戦略を考えるのが社長の仕事だとすれば、「トップマネジメントが何を変えるのかを決める」というように考える社長は、至極あたり前のことをやっていると言って良いですよね。
でもって、優秀なスタッフに「しっかり変革をマネジメントしてくれ」という。
これが、まずい。では、何がまずいのでしょうか?

どの様な変革にも抵抗は付きものです。論理的に考えて、その方法が最善であると考えられる場合にもそれはあります。なぜでしょう?
それは、急速な社会変化に脳の構造と機能が適応していないからです。

脳の事実

200万年前から、人が生存・繁栄した理由は、広範囲に食料確保能力が高く、高度な社会関係を作り上げたからだといわれています。

生存が脳の目的であり「こっちの水は甘いぞ」という報酬よりも、「あそこは危ない」という脅威を避ける刺激に強く反応するのです。
だって、今にどっぷりつかっていれば、その人にとって未来は“マヤカシ”ですからね。

つまり急激な組織変革は外界予想意味生成(外はどうなっている? あ、そうかそういうことね)」という能力を脳から取り去り、人々をして「私たち、どうしたらいい」という脅威状況に追い込むのです。

脳科学の知見によれば、脳は脅威に直面すると前頭葉の血流が止まり、感情抑制と理性的判断が失われ、「戦うか逃避するか」の判断に走るのだそうです。
つまり、脅威に直面すると、思考が衰えて感情抑制できなくなるため、外界を現実以上に敵対的に理解して成果が落ちるのだそうです。

 

ところで、私たちの過去の体験から出来上がった認知の枠組みは、今の状況理解の方法に影響を与え、期待が外界を見る方法に「彩:いろどり」を与えます。
言い換えれば、見たいと思っている事(期待)しか見ないということです。

 

要するに、私たちは外界を勝手に自己解釈(期待)するということです。
~これ、認知するというプロセスの大前提です。

 

※ 認知の枠組みは、メンタルモデルとか、バイアスといわれたりもします。集団レベルではパラダイムという言葉が使われたりもします。

 

じゃ、どうするのということですが、
人の社会性(帰属意識や関係性)をもっと大切にしましょうというのが答えです。

哺乳類は他者の助けがなければ成長・生存できないので、常にケアしてくれる人を探すように脳が形成されており、それは現在の職場でも同じです。

加えて、脳は社会的痛みと生理的痛みを同じシステムで扱うので、社会的拒否(無視されること)は生理的な痛みであり、これは何とかしなくてはイカン問題なのです。
要するに、変革においては人々の感情を深く理解する事がとても重要になります。

変革が失敗する典型パターンである「リーダー(トップマネジメント)が何を変えるかを決め、スタッフが変革のプロセスを管理する」というのは、変化の渦の中に巻き込まれる当事者たちにとっては「感情を無視されたという気持ちになる」「やらされ感が強く働く」ということです。

トップマネジメントは大きな方向性を決めますが、具体的に何をやるかは社員が参画的に意見を出し、トップマネジメントが変革のプロセスを管理する(つまり、お墨付きを与え後ろ盾になる、現場と語る)といった場合に変革が成功しています。

具体的には、ラインのマネジャーが職場メンバーと共に、共同して明確な目標をつくり、それを共有し、人々に対して帰属意識を喚起させることが、変化を受け入れる当事者たちにとって大きな動機付けとなっています。

リーダーやマネジャーは、人々の「自己存在感(私も集団や組織の重要な一員であるという実感)」や「自己肯定感(私もみんなに認められているという実感)」に影響を与えることによって変化はマネジメントできることを学ぶ必要があります。

次回も引き続き、成功するアプローチとはどのようなものなのかについて考えてみたいと思います。

 

この記事の書き手:JoyBizコンサルティング 波多江嘉之