自社の理想の組織を考える

変化の激しい時代である昨今、以前と比べて将来の見通しが明瞭ではなくなってきました。そのような状況の中で働き方改革や、ダイバーシティ、サスティナビリティ、など新しい用語とともに、現在の企業経営の在り方が問い直されています。
今日はVUCAの時代(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)と言われています。数年前に出てきたコンテンツが今は見向きもされたない、今開発している技術はまたすぐに次の技術で淘汰されていく。そのような時代をVUCAと称され、予測不可能性が高まっています。
そのような中、求められるのは柔軟性や機敏性と言われるような、組織を機動的に動かすことが求められています。予測不可能だからこそ、しっかりとした効果測定が希求されますが、市場の変化も激しくより効果想定のサイクルの短縮化が求められています。今回自社の理想の組織を考えるにあたって、経営幹部が必要な能力についてご案内してまいります。

今日の理想組織

組織が機動的に動けるようにしていくことが我々組織開発コンサルタントの役割の一つではありますが、実際に変革のハンドルを握って組織のアジリティを高めていくのは、あくまでも組織内部の方々となります。つまり、組織を変革していくステップや変革の画を描くことを内部の方々ができるのが、いわゆるしなやかな組織であり、柔軟に、機敏に動ける組織と言うことができるでしょう。
そのような背景もあってか、ホラクラシーという概念も台頭してきました。ホラクラシーとは、元々の語源は1967年にジャーナリストのアーサー・ケストラー氏が著書の中で用いた言葉ホラーキー(holarchy)から来ており、ギリシャ語でいう全体(holos)が由来です。独立していながらも全体の一部であり、全体を司る一部でありながら独立した一部という両面の機能を保持していることを意味しています。一般的な組織にあり上意下達のようなヒエラルキー的な組織形態ではなく、権限を組織全体に分散させ個々の役割によって意思決定がなされることで、自立的な組織マネジメント方法を実践していくことがホラクラシーの概念です。
ブライアン・J・ロバートン著『ホラクラシー』によると、組織を管理運用するための新しいソーシャルテクノロジーとしてホラクラシーを紹介しています。権限が個人ではなく役割に委譲されること、サークルと言われる目的に沿った集団で組織が構成されること等が特徴として挙げられています。要は、組織を構成する基本的なオペレーションシステム(権力構造や組織構造、意思決定プロセスやミーティングなどの業務プロセス)が、組織の目的を実現するために、クリエイティブな能力を解き放つことができるシステムになることとして位置づけられています。今日においては創造性を最大化するための理想の組織マネジメントとして見直されているのです。

経営幹部が組織を描く

言うまでもないかもしれませんが、今の組織でこのホラクラシーのシステムが適応できるかどうかは、業種や現状の組織状況にもよりますので一概に断定することはできません。実際にホラクラシー型組織の問題点も指摘されています。ここではホラクラシー型組織の良し悪しではなく、このような“組織の在り方”を経営幹部としてデザインできるかどうかが、重要なことだと考えています。
例えば現状としてトップダウンのヒエラルキー型組織において、すぐにホラクラシー型組織に移行はできませんし、自社にとって必ずしも理想の組織がホラクラシー型組織ではありません。経営幹部にとって大切なのは、自分たちの組織はこのような組織であるべき、そして今はこのような組織の現状である、と描く力と現状を見極める力をつけることなのです。
例えばバブル崩壊後、リーマンショック後、その他多くの事業運営の存続に重きを置かなければならなかった機会を通じて、今の延長線上ではない新しいイノベーションを起こしていいかなければならないことは、ほとんどの企業において重要な課題となっているのは自明の事です。従って今日の経営リーダーシップ啓発においては、その創造性の啓発が重要なテーマの一つになっています。その創造性の源となるのが“こうあるべきだ”と描く力であり、これは”意”の啓発が必須となるのです。
※JoyBizでは描く力(=意)を啓発するための講座をご用意しています。

現状の組織を見極める

そしてより複雑性を増している今日、組織を変革していくには環境と組織の現状を正しく見極めることも必要です。今の実態を押さえていなければ適切な変革プランは実行しても意味の無いものになってしまいます。
現状の組織を把握するには適切なフレームが重要です。ここでは組織という複雑な形態を把握するためのレンズとなる一つの観点をご紹介します。組織に対してどのような指向性があるのかを把握するものです。

■権力指向(例:力と権威・権力を意識する 同族会社、地場有名企業の大半 ワンパン会社、創業期の会社、巨大複合企業)…スピード感があるが、下部組織がトップに依存しやすい。情実による評価がなされやすい。

■役割指向(例:地位の上下と担当を意識する 官公庁、公共事業、規制業種、巨大メーカー)…責任権限が分化し、変化に時間がかかる。目的よりも手段が優先されやすい。

■課題指向(例:専門知識と能力を意識する サービスタイプ企業、研究チーム、ベンジャービジネス、急成長企業の大半、投機的企業)…課題に対して貢献できない人は排除される傾向が強い。長期的目標が忘れられやすい。

■人間指向(例:人の欲求と価値観を意識する 小規模の研究開発期間、小型ファッション業、少人数の専門家集団)…権限の所在が不明確で、統一した意思決定をしにくい。人の感情を気にしすぎて生産性が疎かになる。

上記は一つの手がかりなので、適応しない組織も存在します。しかしながら、今自社組織はどのような現状で、あなた自身はどのような指向がありますでしょうか。これらを考えることが変革リーダーに求められるプロセスなのです。ちなみに、ホラクラシー型組織は「課題指向」が上記の中では最も当てはまるかと思います。

最後に

さて、自社の理想の組織を考えることは、今後の経営を担っていく方々の必須の事柄の一つであることは明確かと思います。その上で今日求められるリーダーはかくあるべきと描く力と、現状を見極める力が必要です。しかしながら事業にしても組織にしても正解はありません。だからこそ、その正解を作り上げていくための場と機会の提供がJoyBizの役割でもあります。
組織の正解を創っていくことはご承知の通り、何もなしに組織の今後を考えられる程簡単にできることでもありません。しっかりとしたモデルや考え方のインプットと適切なファシリテートによって、その効果を高めることができます。さらにそれらを異業種の方々と創発的に生み出していくことがより創造性の向上につながるとも考えていますので、JoyBizではそれらのお役立ちできるよう機会の提供も計画しております。