~[組織開発]教科書から学ぶ㉔~ODの社会的技法 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-277
ODメディアでは、今回からODの社会的技法、つまりODを実践する際に使える技法や方法について紹介していきます。もちろん、社会的技法の中には、いわゆる対話型ODといわれるものもありますが、まずは[組織開発]教科書に則り紹介していきます。
社会的技法とは、「ODをやるとすれば、何をすればいいのか」という問いに対する答えです。この基本中の基本がアクション・リサーチと呼ばれる進め方です。ODメディアでは何度も言及していますが、「対話型組織開発:ブッシュ、マーシャック」の中では、アクション・リサーチは診断型ODの実践方法であるという分類をしていますが、それはアメリカ的な専門家が第三者としてクライアントに関わる場合の一方法論であり、アクション・リサーチは診断型ODではなく、ODの基本的な進め方です。ですから、もちろん対話型ODもアクション・リサーチのステップを踏みます。では、改めてアクション・リサーチの基本的流れを確認しましょう。
- クライアントの所在をつきとめる:エントリー
- コンサルタントとクライアントが今後行うことについて同意する:契約
- クライアント組織から、クライアントの状態についての情報を収集する:診断
- 収集した情報をまとめ、どのように理解したらよいかを依頼者および情報提供者に報告する:フィードバック
- クライアントと協働して、収集した情報のまとめと解釈から問題・課題を明確にし、その対応策としての活動計画を立てる:変革の計画化
- クライアントを援助し、計画した活動を実行・実施するように支援する:介入
- クライアントと共にこれらの活動の成功度を評価する:評価
以上の7段階がアクション・リサーチといわれるステップの基本ですが、ステップ③~⑥が、いわゆる診断型ODと対話型ODでは異なります。もちろん、それは根底にある変革に対するマインドセットの違いにあると言えます。診断型と対話型のマインドセットが異なるにもかかわらず、実際の変革活動では両方を活用すすることが大半です。その理由は以下の2点にあります。第1に、多くの共通する価値観があります。どちらもODの基本的価値観である「クライアント中心主義、プロセス指向、協働的、人間尊重、民主的」を重視しています。第2に、促進的かつ非指示的な方法で組織、コミュニティ、ならびに人々の生活をより良くしたいと願っています。また、どちらの方法であっても以下のことを重視します。
- ODの実践は人々をエンパワーする、また協働的な特徴を持つ
- ヒューマン・システムを変えるため、システムの現状と起こっていることについての気づきを深めること
- コンサルタント(外部の第三者)は、実践を促進し支援する役割を負うこと
- 組織ならびにより広い社会システムを発達させ改善するという目的を持つこと
最も異なるのは「診断:探求とデータ収集」ということに対する捉え方です。ケネス・ガーゲン(1978)によれば、それは以下のように説明されます。
- 診断型の基本的考え方
- 理解することは、水面下で起こっていること(原因)を観察すること。
- そして、どのような人が観察しても変わらずそこに存在する。
- 真実はそこにあって発見されるもの。
- 診断的な探求は変革の前に生じ、変革の方法に決定的影響を及ぼす。
- 主として厳密な質問と観察、ドキュメント調査によって行われる。
- 対話型の基本的考え方
- 理解することは、意味付けすること、他の経験との統一性または統合性をもたらすような人々の経験を列挙する、または表現する方法を提供すること。
- 真実は当事者が共同で創り出すもの。
- 探求と変革は、同時に、そして継続的に起こるもの。
- 主として当事者によって対話の中で行われる。
どちらにしても、現状に対して深い理解をするという作業は欠かせないのです。この現状に対して深い理解がなければ、効果的なODプランとアクションに繋がりません。
今回紹介したアクション・リサーチ・モデルは外部のOD支援者とクライアントとの間で実施されるODの進め方について説明していますが、内部のチェンジ・エージェントがODを進めようとする場合も基本的な流れは、この7段階になります。また、現実には7段階は、段階(step)というよりは局面(phase)といった方が適切です。それは、この7つの局面は並行していることもあるし、循環することもあります。したがって、ODの介入ストーリーを事前に考えるうえでは役に立ちますが、しかし厳格に守るべきステップでもないし、またOD実践の唯一の局面でもありません。例えば、介入はエントリーや診断の局面ですでに始まっていることもあります。チェンジ・エージェントはクライアント組織の現状をよく理解しODを実践していく必要があります。
参考文献:[組織開発]教科書、対話型組織開発
この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。