健全なチームは仲良し型?いがみ合い型?

日々の仕事は個人でやるのではなくチームでやることがほとんどです。そしてどんなチームも必ずその色が出てくるものです。リーダーの人柄、メンバーの能力差、取り組む仕事の特徴などによってチームのカラーは千差万別ですが、マネジャーの方から共通して出てくる悩みが2つあります。それが、「仲良しチーム=うちのチームの仲は良く、みんな頑張ってはいるが、ぬるま湯だ」という悩みと「いがみ合い型=うちのチームはメンバー同士が協力せず、いがみ合っている」という悩みです。どちらの悩みも良くお伺いするのですが、健全なチームはどういったものなのか、今回はそれをテーマにお届けしたいと思います。

チームの成長過程

まず、私たちはチームという言葉を良く使用しますが、実は厳密に言うとそれには定義があります。それは、

・2人以上の集まりであること

・共有された目標があること

・共通の使命・責任があること

・相互依存的な関わりであること

の4つです。最初の3つはある程度イメージしやすいと思いますが、4つ目の「相互依存的な関わりであること」は少し説明をします。私は、新入社員になりたての時に、初めて相互依存という言葉を聞いた時には、依存という言葉が入っているため、相互に依存しあっているようなニュアンスで理解をしていたのですが、これは大きな間違いでした。相互依存とは相互が自立した上で状況に合わせて他人を頼ることができる、という意味であり、依存的な態度ではなく、自立を前提とした協働関係のあり方のことを意味しています。

つまり相互依存とは、チームの中で相互に協働関係が成立することであり、チームビルディングをする際にはそうしたことをゴールとしてターゲット設定する必要があることを意味しています。

それでは、チームは協働すべきだ、と言って皆がそれを理解すれば、協働するチームになるでしょうか?それは、そうはならないのがチームビルディングの難しいところです。実はチームは協働関係に向かう過程において下図のようなフェーズを経ていくことになります。

<チームの成長過程>

各段階でのプロセスと「仲良し型・いがみ合い型」

Phase1 無関心

この段階では、目の前の仕事は遂行しているが、チーム活動に対しては無関心な状態であると言えます。したがってチームメンバーはチーム全体として何かやる必要がある事柄が生じた時に、多くの場合に賛成でも反対でもない態度を取ってしまいます。明確に「どちらなの?」と聞かれればAかBかどちらか選ぶことはできるかもしれませんが、なぜそちらの方が良いのかという視点はあまり持っていないことも多いです。このプロセスは、チームとしての目標がない、またはそれに取り組む意味合いがわかっていない場合によく起こります。こうした状態でも通常の人間関係は生じており、通常の活動自体は継続しています。この時に、そのチームプロセスを見ると「お互いが仲良くいろんなことを話してはいるが、ぬるま湯だ」という感想を抱くことが多いと感じます。つまり仲良し型に見えるのです。

Phase2 競争

この段階では、無関心だったメンバーが目標を認識し、現状ではダメだ、という問題意識は持ち始めている段階です。この辺りから役職者以外でもリーダーシップを取る人が出てきたり、メンバーへの働きかけを行う場面が増えたりするのが目に見えるようになります。しかし一方で、人間誰しも自分が考えた事、やった事には愛着が出るものです。そこで、「自分のやり方が正しい」「自分の考えが一番だ」と自分自身に無自覚に固執をし始めます。そこで同じチームのメンバーなのにそれぞれが責任をなすりつけ合うような行動に出始めることがあります。まさに競争状態ですが、この状態の時にチームのプロセスを見ると「このチームは一人一人が相互に認め合っておらず、いがみ合っている」ように見えます。つまりいがみ合い型に見えるのです。

Phase3 葛藤

この段階では、競争していた関係から一歩進み、意見の相違や対立を恐れずに本音を伝えるという場面が生まれ始めます。具体的には、チームメンバー同士の関係について「みんなはこの関係でいいと思うか」という問いかけが出てきたり「自分はこういうチームになりたい」という率直な思いが発露したりし始めます。そうした本音を受けて他のメンバーも徐々に気持ちを表現するようになり、意見の対立は生じるが、その対立を埋めようと努力するメンバーの言葉や行動が顕著に現れ始めます。この状態でも意見の対立や葛藤に負けそうな時には、いがみ合うような表情や行動は生まれますが、葛藤の解決を目指している姿勢という点で明確な違いがあります。

Phase4 協働

ここまでくれば、それぞれの違いを認めつつ、共通目標に向かう点では信頼関係が生まれてきます。そこで初めて相互依存的な関係が生まれ、チームとして健全な姿に成長していきます。この段階では、再度仲良し型に見えることもあります。

冒頭の「仲良し型orいがみ合い型」の悩みは、チームの成長過程を考えるとPhaseによって見え方は異なりますが、仲良し型はPhase1と4のどちらなのかの見極めが大切になりますし、いがみ合い型はPhase2と3のどちらなのかによって、アプローチも変わってくると思います。(私見ですが、仲良し型・いがみ合い型は、一概にはどちらがいいとは言えませんが、Phase1の仲良し型と比較すれば、いがみ合っている方が責任感とアクションが生まれている分チームとしての成熟度は高いかもしれませんが。)

どうすれば「協働型チーム」になるのか?

最後に、どのようにすれば自分たちのチームが協働に近づいていけるのか、健全なチームになれるのか、について考察します。

実はこれまで述べてきたようなチームの成長過程はすべて、紙に書いたり、会議でかしこまって話しをすることでは感じ取ることができません。それゆえにチームを変革していくことは難しいのですが、チームメンバーが現状のチーム状況やチームプロセスの変化を感じ取ることができればチームは劇的に成長するといっても良いでしょう。こうした瞬間は日々の仕事の中でも訪れることはあると思います。会社やチームに対するリーダーの本音がポロリと出て、リーダーの負担を考えさせられる瞬間や部下が感じた違和感によりチームの在り方を考えさせられる瞬間もあるかと思います。

大切なのは、現在のチームがどういう状態なのかを感じ取る力でそれがなければ変化のきっかけを見落としてしまうこともあります。仕事の場でそういう機会が来るのを待つ以外にも、ラボラトリートレーニングと呼ばれる体験型学習を実施してみることもチームの成長を感じる力を養う有効な手段となります。(ラボラトリー=実験室の名前の通り、チーム活動でリーダーシップや協働関係がどのように変化していくのか、競争関係がどのように生まれ、どのように葛藤処理に向かっていくのかを体験していくことができます。詳細にご関心がありましたらお気軽にお問い合わせください)

いずれにしても、チームの成長過程やリーダーシップの在り方、メンバー同士の関係など目に見えない領域を捉え、適切に手立てを考えられることがチームビルディングの入り口であることはまちがいないでしょう。