• 組織文化とOD⑰:組織文化の変革① ~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-215~

組織文化とOD⑰:組織文化の変革① ~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-215~

ODメディア、組織文化とODシリーズでは、E.シャインの「組織文化とリーダーシップ:ダイヤモンド社」を土台に、組織文化とは何か、組織文化はどのように成り立つのかについて学んできました。今回から組織文化の変革について学んでいきます。しかしながら組織文化の変革は、中々に難しいことなのです。最初に、組織文化変革に対するシャインの考えを見ていくことにしましょう。文章は筆者の主観で短くまとめています。原本の文章を確認する場合は「組織文化とリーダーシップ:11章 組織変革という視点から文化変革を理解する」を参照してください。

シャインは次のような書き出しから、組織文化変革を描写しようと努めています。

「組織文化の概念は(ここまで学んできたように)、構造的に複雑である。それは、当然視されている黙示的仮定の大きな組み合わせから成り立っている。集団の共有の歴史があるなら、これらの仮定はうまく配列されるようになり、一つのパターン(文化)を生み出す。文化がこのような意味で生成してきたものであれば、それは組織活動のほとんどすべての面~戦略、機構、報奨、統制、日常業務、人々の関係性など~に影響を与える。組織(の経営幹部)が、変化の必要性を感じる何らかの危機を感じたなら、通常、戦略や組織機構および業務手続き面での変革が始まる。ならば、文化はそのような変革の仮定にどう影響を及ぼすのだろうか。またその過程で文化自体が変革するのだろうか。そして文化の変革とは実際に何を意味するのか。例えばそれは、行動の変化か、価値観の変化か、それとももっと奥底にある仮定の変化か、全パラダイムの変化か、あるいは単に一組の仮定の変化を意味するだけか、つまり文化の変革といえるのは、どれだけ多くのことが、どの程度まで変化しなければならないのだろうか。また、文化変革が可能であるためにはどのような条件が必要なのだろうか」。つまり、「組織文化が変わった」という定義は中々に難しいということです。

そして、組織文化の変革について、次の出だしのタイトルは「組織(文化?)の変革の事例」となっています。なおかつ、この章の組み立てはシャイン自身が関わった事例の紹介になっています。事例は、アクション社とマルチ社の2社を取り上げています。この2社は組織文化が全く異なります。シャインも言っていますが、2社からはそれぞれ異なる課題の依頼によってコンサルタントとしての関わりが始まるのです。実務としては、「クライアントから何らかの問題解決の課題(content)の依頼」から始まるというのはとても重要です。すなわち、クライアント自身が「わが社の組織文化の変革をお願いしたい」という依頼ではないということです。どのような依頼も、抽象的か具体的かは別にして経営あるいは事業で困っている課題を解決したいという依頼から始まるのです。これは、もちろんOD全般の実施にも言えることです。そして、その課題を解決していこうとしてリサーチとアクションを実践していく中で、これはどうも組織文化を変える必要があるという認識が明確になるのです。シャインの事例では、依頼を受けた会社の文化的特徴が分かってきたのは、最初のセミナーを実施するにあたっての両社の対応の違いとか、セミナーでのシャインの役割に対する両社の期待の違いなどからです。要するに、関わりを持って初めて、その会社の文化を理解することができるのです。コンサルティングの流れとしては、どちらもアクション・リサーチというプロセスに則っているといえますが、その時々の対応は大いに異なるものがあり、それは計画的な日和見主義と言われるようなものです。かつ、すでに述べたように最初から組織文化を変革するというような計画ではなく、アクション社は経営幹部間のコミュニケーションと対人関係の問題解決、マルチ社は創造性を高めるというような課題であり、その具体的な課題についてどのようにすれば問題解決するのかということから付き合いが始まっています。

 

【参考:アクション・リサーチのステップ概略】

シャインが取り上げている事例を見ても、先にコンテントとしての具体的課題や問題があり、その問題解決の支援をしていく過程で文化の影響を理解し、文化変革という課題に切り込んでいく取り組みになっています。繰り返しますが、現実には依頼する企業側が意図的に「わが社の組織文化を変えたい」というような依頼はしないわけです。以前のODメディアでも書きましたが、依頼する側が、正しいかどうかは別として、言葉にするのは困っている課題や問題な訳です。それを何とかしたいのです。ですから、シャインも「組織(文化?)変革」と言っているわけです。では、組織文化の変革に対する基本的なガイドラインはないのだろうかという疑問が湧きます。それについては、シャインの研究などの後から、実践を踏まえて提案されているナドラー&タッシュマンの実践モデルを参考にすることができます。次回のODメディアから、組織変革の実践の中で、組織文化の変革がどのように扱われているのかをいていくことにします。

参考文献 「組織文化とリーダーシップ;E.H.シャイン」

 

この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。