• 組織文化とOD⑮:植え付けのメカニズム③~ 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-213~

組織文化とOD⑮:植え付けのメカニズム③~ 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-213~

今回のODメディアは、組織文化の「植え付けのメカニズム」3番目から5番目を見ていきます。

3番目:リーダーによる役割モデリング・教育・指導

リーダーによる役割モデリング・教育・指導は、シャインの説明を待つまでもなく、それは部下に大きな影響を与えます。それはポジティブな場合もありますが、反面教師である場合もあるでしょう。リーダーがどのように振る舞うかは、人々にある種の認知を生みだし、それはその組織に居る限り「常識」「不文律」になります。リーダーによる役割モデリング・教育・指導は、リーダーが関心を持っていることに対しては、特に強力なメッセージとして部下・従業員に伝わります。リーダーが人をどのように扱うか、リーダーがどのような服装をしているか、仕事以外でどのような店に行き、どのように遊んでいるかも影響を与えます。SW航空のハーブケレハーの、会社の周年記念パーティで「女装をする」とか、機内で実際にサービスをお客に提供するとかという行為は、ある意味、破天荒な訳です。そんなこんなで、従業員からハーレーダビッドソンをプレゼントされ、それに乗って周年記念パーティ会場に乗り込むということもするわけです。従業員も負けじと、客室の座席の上にある荷物置き場に隠れて、客が扉を開けると「hello」と挨拶するという破天荒な顧客サービス?をするわけです。皆さんの会社や組織では如何でしょうか。

 

4番目:報奨や地位を与える基準

皆さんの会社では、何に対して報奨や地位を与えているでしょうか。筆者がキャリアをスタートした会社では、個々人の営業成績がもっとも強い基準でした。それはなぜかというと、会社として大事なことは、持っているプロダクトを市場開拓してクライアントに届けることができる能力、すなわち営業力を重視していたからです。当時の経営者は、コンサルタント会社といえども、偉そうに顧客からの相談を待つのではなく、進んで市場開拓をすることが大事だと考えていました。そういった信念があり、コンサルタント会社で営業部門を持った初めての会社でもありました。そんなこんなで、報奨や地位を与える基準は営業力だったのです。コンサルタントも「売れないコンサルタントはいらない」といって、営業担当が持ってくる案件をこなすだけでなく、自ら市場開拓することを重視していました。代替わりした後は、そのような理念が薄れて、営業数字のみに焦点が当たり、それがどんどん強くなり、ちょっとウンザリしたこともありました。要するに、リーダーが、自分の報奨や地位を与える基準はその組織の重要なメッセージとなり、文化を創っていくということです。

 

5番目:募集、採用、選抜、昇進、退職、免職に関する基準

文化の植え付けに対して、募集、採用、選抜、昇進、退職、免職に関する基準として、なるほどと感じさせたのはサウスウエスト航空(以下SW航空)です。SW航空は、低価格で有名な航空会社ですが、それは非常に考えられたオペレーションシステムに支えられています。例えば、10ミニッツリターンなどは、その中でもよく知られたオペレーションです。これは。A空港からB空港の2点間往復が基本の運行システムにおいて、コストパフォーマンスを高める重要なオペレーションです。つまり、空港に駐機している時間が短いほど、お客を多く運んでいるということです(3.11以降は連邦航空局の規制に従って、25分かかっている)。この10ミニッツリターンを始めとするオペレーティングシステムの運用にはチームワークが欠かせません。従って、採用に際しても仕事の技術や経験年数ではなく、チームワークや他者への関心を高く持っている人を採用するようにしています。

 

いずれにしても、従業員教育や評価・報酬制度および採用から昇進・退職という一連のキャリアに関する制度やメッセージは、その会社の信念・価値観、また方針や理念と整合性を持った設計と運用が大切なのです。これが、つぎはぎだらけで整合性が取れていない場合、その会社のトップメッセージや方針は、正しく理解されないことになり、もっとも悪い場合は、従業員からのサボタージュを招くことになります。事業成果は低調であることは言うまでもないでしょう。(続く)

参考文献 「組織文化とリーダーシップ;E.H.シャイン」

 

この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。