• 鬼上司のリーダーシップ②~ 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-167~

鬼上司のリーダーシップ②~ 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-167~

鬼上司が部下たちに高業績を上げさせる戦術はいかなるものでしょうか。これは効果的でもありますが、行き過ぎるとちょっとヤバイ戦術です。では、それを見ていきましょう。

①極度のプレッシャー

鬼上司の多くは、部下と対峙する機会を逃しませんし、場合によっては自ら支配したい部下の領域にすすんで侵入してきます。要するに、威圧してくるのです。そして、そのために演技を多用することがあります。第二次大戦時の戦車部隊で有名なパットン将軍もそのタイプです。彼は、しかめ面の表情を鏡に映して繰り返し練習したそうです。もちろん見た目だけではなく、他者への屈辱や中傷という言葉の武器を使うこともあります。他者から見ると、恥ずかしげもなくというのを平気でやるということです。

②怒り

鬼上司の大半は、怒り、激高して、物事を思い通りに運ぼうとするようです。それも計算づくのかんしゃくを使い、反論者が反論できない状況をつくります。アメリカにおける政治の世界ではナイス・ガイといわれるようでは何の足しにもならないようです。日本では、このような人に対して「触らぬ神に祟りなし」とでもいうのでしょうか。

③じらし

通常リーダーシップでは、透明性を重視し、リーダーの意図と動機がはっきり見えてこそ、人はリーダーを信頼するといわれます。しかし、鬼上司はこの考え方を歯牙にもかけないようです。むしろ、理解できない存在の方が良いと考えており、そうすれば部下たちが気を抜くことがなく、周囲からの信頼を損ねることもないと考えています。また、あえて距離を置くことで自分の神秘性を保とうとする鬼上司もいます。

④わけ知り顔

イギリスの元首相マーガレット・サッチャーは、議題がなんであろうと、その博識を駆使して論争相手を黙らせたり、詰まらせたりする能力に秀でていることで有名だったそうです。サッチャーはそれを単なるはったりでするのではなく、情報・調査・数字を徹底して吸収し、しかもそれを記憶しているのです。勉強や下準備という点で彼女に並ぶものは誰もいないと言われていたようです。

 

どうでしょうか。4つの戦術を使われる部下の方は堪ったものじゃないですよね。しかし、鬼上司と一緒に仕事をした人たちの中には、この経験が私を成長させてくれたと考える人たちも多いのです。そして、気難しいリーダーに魅了される人が少なくないのは、実は自分自身の中に「小さな鬼上司」なるものを宿していた意図望んでいるからかもしれません。R.クラマーが、スタンフォード大学の経営幹部研修プログラムで「リーダーシップの資質の内、自分に一番欠けているものは何か。また身に付けたい資質はどれか」と質問したところ、マネジャーの大多数が挙げたのは「厳しさ」や「強引さ」といった資質でした。経営幹部研修プログラムは、企業で既に成功している人たちが送りこまれてくるのですが、そのような人たちでも、自分のことをまだまだお人好しで、部下の評価を気にしすぎていると感じていたのです。この参加者たちは、全員自分の対人関係能力については秀でていると自負しているのですが、組織の業績をもう一段レベルアップさせるためには、SQ的資質が邪魔をすると感じてもいたのです。

鬼上司は人から好かれないが、偉大な鬼上司は間違いなく尊敬されます。そういえば、前職で鍛えてもらった経営トップは、経営リーダーシップについて「経営者は嫌われてもいいが、舐められてはいけない」「ふり幅が大切だ。大きな成功を収める人は、大きな失敗をしている。失敗しないようにしている人は、大きな成功を収めることはできない」と言っていました。しかし大切な点は、鬼上司は崇高な目的を達成するためにその力を使うということです。ディズニーのM.アイズナーは、傲慢で、貪欲で、無神経だと言われていましたが、1984年当時、アニメと遊園地の株式時価総額18億ドルの会社を、2000年当時には世界有数のエンタテインメント企業に育て、株式時価総額は571億ドルにしています。Appleのスティーブ・ジョブスの業績は言うまでもないでしょう。鬼上司の価値というものを多様に捉えていく必要がありそうですね。次回は、鬼上司といかに付き合うかです。(続く)

 

この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。