• リーダーは状況を操作しろ④ ~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-157~

リーダーは状況を操作しろ④ ~組織開発(OD)の実践って、どうするの?-157~

今回は、リーダー・マッチ理論でいうリーダーシップ状況について詳しく見ていきます。どのような状況で自分は効果リーダーなのか、また状況をどのようにエンジニアリングしていくことが望ましいかを考えていきます。極めて大切なことは、自分がリーダーとして最も効果的でありうるのはどのような状況か、そして自分に向いていないのはどのような状況かを認識することです。リーダーシップ状況については、リーダー・マッチ理論の最初に紹介していますが、改めて確認します。状況におけるリーダーの統制力と影響力は以下の3つの構成要素で決定されます。

  1. メンバーがリーダーを支持する度合い(Leader-Member Relation)。つまり、リーダーとメンバーの関係が良好か、そうではないのかです。
    • この要素は3つの要素の中で最も重要です。メンバーからの忠誠心、信頼、支持の量などが高ければ、リーダーの統制力は非常に高いと言えます。
    • 集団からの支持があれば、課題の構造やリーダーの地位力を気にする必要がありません。逆に、集団からの支持がなければ地位力や課題構造度に頼って仕事をする必要があります。
    • 上司からの支持も重要です。上司があなたを受け入れ支持すれば、メンバーはあなたを高く評価するでしょう。
  2. 課題達成の構造化の度合い(Task Structure)。つまり、集団が与えられた課題を達成するために、目標、手続き、および具体的な実行ガイドラインが明確になっているかどうかです。
    • 課題の構造度は3つの要素の中では、リーガーの統制力を左右するもっとも複雑な要素といえます。それは、仕事や課題の目的や内容によって構造度は多様に変化するからです。モノをつくる場合でも、すでに確立された方法がある場合もあるし、新しくチャレンジしなくてはならない場合もあります。後者では、構造度はそれほど高くなく、試行錯誤が続く場合もあります。
    • 課題構造度が低い場合は、リーダーはメンバーかの支持を高めるように働きかけなければ集団としてのパフォーマンスは低下するでしょう。
  3. リーダーの地位力(Position Power)。つまり、部下の賞罰に対して、リーダーがどれほどの権限を有しているかです。
    • 地位力は、メンバーを指揮する目的のもとに、組織がリーダーに与える公的な力です。高い地位力は、軍隊や企業組織のラインに見られます。要するに、目的的組織体の場合は、地位力という要素は、リーダーの統制力に強く関係します。逆に、大学の学部や諮問委員会、研究チームのリーダーなどはそれほど強い地位力を持ちません。
    • 強い地位力には、上司からの支持が欠かせません。上司からの支持があり、あなたが上司に対して何らかの影響力を持っている場合は、メンバーはあなたの力をとても大きなものに感じます。メンバーが、あなたを無視して上司に直接何かを訴えるようであれば、あなたの力も少なくなります。
    • 地位力は、リーダーシップの状況統制力を考える場合、真っ先に念頭に浮かんでくるものですが、実際には他の2つの要素に比較するとリーダーの影響力に寄与する度合いが低い要素です。

 

あなたは、この3つの要素からみて、高い状況等制力を有しているでしょうか。それとも低い状況統制力に留まっているでしょうか。あるいは、中間程度でしょうか。ここでは、それぞれの要素を測定する質問は割愛しますが、3つの要素の中でも特に重要なリーダーとメンバーの関係について、幾つか注意すべきことを見ておきましょう。

  • メンバーがリーダーを支持する度合いを知ることはとても難しい。通常リーダーは、この要素を過信していることが多い。例えばあなたは、以下の項目にどのように答えるでしょうか。
  1. メンバーはあなたに迷惑をかけないように努力しているか。
  2. メンバーは起きる可能性のある問題について、事前にあなたに注意を促すか。
  3. メンバーはあなたがやって欲しいと思っていることを、率先してやっているか。
  4. 世間話にあなたを加えるか。
  5. メンバーの親密さは心からのものか。
  6. どのように仕事をするかについて、メンバーは主体的か。
  • 集団の歴史は、あなたの統制力に影響を与える。リーダーと伝統的に良い関係を持っている場合もあれば、逆に争いが絶えない集団もある。また、前任者がどのような関係をメンバーと持っていたかは、あなたの統制力に影響する。
  • あなたと上司との関係は、あなたの統制力に影響する。

 

3つの要素の内容や、注意すべきことを見ていくとリーダー・マッチ理論は、複雑ですが、中々に実践的なリーダーシップ理論であることが分かります。人によっては、リーダーシップがうまくいく5つのポイントのようなものがすっきりして良いな、と思う人もいるかもしれませんが、リーダーシップの効果性はそもそも複雑な要素から成り立つものです。自分の好みの視点だけでなく、リーダー・マッチ理論が示すような多様な視点を認識することであなたのリーダーシップの効果性がより良いものになるでしょう。(続く)

この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。