• 最善のリーダーシップは状況次第②~ 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-153~

最善のリーダーシップは状況次第②~ 組織開発(OD)の実践って、どうするの?-153~

最善のリーダーシップは状況次第の重要な要素である、能力向上への意欲について見ていきます。日本には「勝てば官軍」という諺がありますが、業績と能力向上および業務特性と組織環境の3つの因果関係は、かなり複雑なものです。

 

 

勝てば官軍に倣えば、業績が高ければ能力向上への意欲が高まるということになるのでしょうが、事はそう簡単ではありません。もちろん、業績が良ければ業務特性と組織環境が良くなるわけでもありません。そこで、今回は能力向上への意欲と業務特性と組織環境のフィットに関する関係性に焦点を絞って、業務特性と組織環境のフィットが能力向上への意欲にどのように影響するのかを見ていきます。ローシュとモースは、この関係性を確認するために面白いテストをしています。それはTAT(投影法テスト)です。研究対象となる業績が高い研究開発所と工場、および業績が低い研究開発所と工場の参加者に、6枚の絵を見せて、第一部では回答者に独創的な話を創作してもらい、第二部では自分の業務について、明日は何をし、何を考え、何を感じているだろうかを物語として捜索してもらいます。その結果を見ると、業務特性と組織環境のフィットが高く、業績が高い研究開発所と工場の方が能力向上への意欲が高いという結果が示されました。ただし、明確な因果関係まで判明したわけではありません。この3つには相関があるということです。このことは、最近のマネジメントへの提言でよく言われる参画や民主的関わりが、必ずしもすべての状況において優れた成果を導き出すものではないということを示しています。

高い業績の向上は、明確なルールの下に厳密な仕事の管理が為されており、従業員は意思決定に影響を及ぼせるとは考えていなかったのです。逆に、業績が低い工場はどちらかといえば参画的な雰囲気を持っており、ルールの柔軟なものだったのです。このような、結論をどのように考えればよいのでしょうか。ローシュとモースは、以下のような仮説を提示しています。

  • 能力向上への意欲を欲する動機は、業務と組織のフィットが高い場合、最も満たされる可能性が高い。
  • 能力向上への意欲を欲する動機は、どのような人にも存在する。しかし、このニーズがどのように満たされるかは、権力へのニーズ、依存へのニーズ、組織構造へのニーズ、達成へのニーズ、連携へのニーズなどの度合いにより、各人各様である。
  • 能力向上への意欲は、一度満たされても、これで満足することはない。つまり、ある目標を達成すると、次の一段と高い目標を設定しようとするからである。

 

いずれにせよ、業務特性と組織環境のフィット、能力向上への意欲、業績の3つには相関があります。小生も自分のキャリアを振り返り、それは言えます。私や長く一緒に仕事をしてきた仲間が良いと思っていた環境は、他の人には必ずしも良い環境ではありませんでした。しかしながら、組織と業務のフィットと、それに対する個々人の認識が整合している場合、ここの人々の能力向上への意欲は高まるし、いわゆるモチベーションも高いものがあります。そしてそれが、高業績に繋がれば、当然自分たちがやっていることと、自分達が過ごしている組織と業務環境に対しては肯定的な気持ちが芽生え、それを継続しさらに良くしていこうと考えます。そうではない場合、人々の能力向上への意欲は低下するし、組織と業務環境には否定的な感情が芽生えます。当然、業績はよろしくなく、その組織を去っていく人も出てきます。だからといって、去っていく人はその人個人の問題ではなく、フィットしなかったというだけかもしれません。状況次第であると言ってしまえばそれまでですが、業務と人材は多様であり、複雑なのです。経営管理者は学んでいくことが沢山ありますね。

 

この記事の書き手はJoyBizコンサルティング(株)波多江嘉之です。